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MPAA会長兼CEOのクリス・ドッドは、欧州が計画するジオ・ブロッキング(地域制限)規制は、映画産業を「著しく害することになる」と懸念を表明した。ドッドはCineEuropeの基調講演のなかで、映画やテレビ番組に広くアクセスできるようになると、作品数が減少し、高額になってしまうと警告している。

インターネットで映画やテレビ番組を視聴したい消費者は、自国でのみ許諾されたコンテンツに制限されている。

つまり、ある国のNetflixライブラリが、その隣国では完全に異なったものでありうるということである。

これは映画産業が地域を制限したライセンス契約を構築したためである。しかし、人々がインターネットに接続した現在、そうした制限は不満を募らせる原因ともなっている。

そうした消費者に不便をもたらす制限に対して、欧州委員会は、デジタル単一市場改革の一環として、特定のジオ・ブロッキング禁止することを提案している。

他の産業に関する変更については、今年初めに詳細が明かされているが、オーディオ・ビジュアル部門の正確なプランは、今秋まで待たされている。この状況は、複数の映画産業インサイダーに、欧州委員会の考えを変えさせるための時間を提供するだろう。

今週行われたCineEuropeコンベンションの基調講演で、MPAA会長兼CEOのクリス・ドッドは、ジオ・ブロッキングの制限は映画産業の脅威であると発言した。ドッドは、この懸念を「本当の、本当のもの」と表現し、参加者に向けて、議員にアプローチすることを勧めた。

「こうした提案が目指す目標そのもの――欧州の消費者に幅広い選択肢を提供し、文化的多様性を強化すること――は賞賛に値するが、現実には、こうしたアイデアは実際に、欧州の映画産業と消費者を著しく害する原因となるでしょう」とドッドは言う。

「とくに私が懸念しているのは、地域ライセンシングと契約の自由の慣例を脅かす提案です。こうした慣例は、長らく欧州映画産業の経済的基盤を支えてきたものです」と彼は付け加える。

ドッドは、地域ライセンシングなどの排他的契約がなければ、投資家は手を引くだろうと危惧する。これが予算の低下、映画の製作本数の減少を招くという。

さらに、映画製作者がいつ、どこで作品を公開するかを決める権利が奪われてしまうという。それはしばしば、特定の地域での成功の確率を最大化するものであった。

「欧州連合は、異なる文化、異なる言語、異なる好みを持った28の地域から構成されています。すべての映画が、同じ方法で、あらゆる地域で、同時に市場に出すことを強要する――その先には失敗しかありません」

「映画製作者や配給会社が最良と考える地域、タイミング、方法で映画を市場に出せるからこそ、成功の可能性を最大化できるののです」

ドッドによると、ジオ・ブロッキングは最終的には消費者の利益にもかなっているのだという。彼はOxeraが公表した調査を引用し、ジオ・ブロッキングの規制は、多様性を損ない、コンテンツを減らし、価格の上昇を招くと主張する。

ドッドはコンベンションに参加する映画産業関係者に、自国の議員にこうしたメッセージを伝えるよう求めた。

「この夏は正念場です。私たちはプレッシャーをかけ続けなければならないのです」とドッドはいう。「議員はあなたの言葉を聞かなければならないのです」

これから数ヶ月、映画産業は現状を維持するために圧力をかけ続けるのだろう。果たして、地域による視聴・利用制限を目にする機会は減ることになるのだろうか。

“MPAA Boss: Europe’s Geo Unblocking Plans Threaten Movie Industry – TorrentFreak”

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 23, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Denelson83 / CC BY-SA 3.0