ソニー・ピクチャーズは、2017年8月にアニメ映画『The Emoji Movie』の公開を予定している。「emoji」といえば、日本の「絵文字」から派生した文字通りの和製英語で、スマートフォンに搭載されたことから、ここ数年英語圏で爆発的な人気を得ている。ソニーはそのemoji人気にあやかった映画を作ろうとしているわけだが、どうもその「emoji」という言葉をめぐってトラブルに見舞われているようだ。
◆ Frowny Face: Sony Pictures Faces Legal Spat Over ‘The Emoji Movie’(Hollywood Reporter)
実はこの「emoji」という言葉、既に米国では商標が取られており、映画の公開のみならず、グッズ販売などにも影響をおよぼす可能性があるという。
「emoji」の商標を取得しているのは、ドイツ人の元ゲーム会社経営者マルコ・ヒューズ氏。彼は、2013年の休暇中に「突然『emoji』という言葉が頭に浮かんだ」として商標を出願し、受理された。ソニーは去年10月に映画に関連する商標を申請しているが、いずれも却下されている。
ヒューズ氏はソニーが公開を予定している映画『The Emoji Movie』が、自身の持つ商標を侵害していると主張する。「我々のブランドが既に世界中のライセンス・パートナーや小売とともに成功を収めているという事実を前に、ソニーはどうやってこのタイトルの映画を制作し、グッズ販売をしようとしているのか実に興味深い」とヒューズ氏。
さらにヒューズ氏は、彼自身も、映画監督のロイ・リー(The Lego Movie)やエイドリアン・アスカーリ(Hitman)らとともに、emojiの映像化を進めていると話す。ヒューズ氏は「emojiは世界中で非常に強力な象徴的ブランドであり、我々はそれを後押しする素晴らしいストーリーを発展させている。ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズやミニオンズ、もちろんレゴのようになる可能性を十分に持っていると考えている」。
一方のソニーは映画の制作を続けるとのことで、ライセンシング会社を雇うなど状況の打開に向けて動いてはいるようだ。個人的には、がっつりと争って欲しいと思う。
日本の絵文字文化で育った人にとっては、「絵文字」から派生した「emoji」が特定の企業の資産として、商標登録されていることに違和感を持つかもしれない。もちろん、それに限らず、世界中で一般的に認識されている「emoji」という言葉が、特定の商業的な分野に限るとはいえ、一企業に独占されるということには違和感を抱かざるをえない。
日本においても、商標トロールとも思える会社(と個人)による大量の商標登録出願について、特許庁が注意喚起が行われたばかりである。知的財産権の保護といえば聞こえは良いが、突き詰めれば情報の独占であり、それに係る行為の独占を許すことである。既に特許においてはパテント・トロールが跋扈し、社会に混乱と閉塞とをもたらしている。商標権や著作権など、他の知的財産権においても同様のことが起こりつつあるように思える。
権利の強化を強化すれば、権利者は利益を享受することができる。しかし、それにともなって生じる不利益は、社会全体が尻拭いをしなくてはならない。