以下の文章は、Walled Cultureの「NFTs are mostly useless or worse, but here’s one important way they could help creators」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

お気づきのように、インターネットは非代替性トークン(NFT)のハイプ(誇大広告)であふれかえっています。その議論の量、飛び交う数字から、何かとてつもないことが起こっているに違いないと考えるのは簡単です。ですが、そうではありません。NFTは、その価格を釣り上げるために、カモとなる買い手を常に必要とする投機バブルでしかないことがほとんど。NFTの熱心な支持者たちの話す言葉は、ほとんど意味がないのです。NFTとは何かを知りたいなら、丹念に誤解を紐解くWiredの記事(訳注:邦訳版)を読まれるとよいでしょう。もっと深く知りたい人向けに詳細な資料へのリンクもたくさんあります。ですがここでは、Walled Cultureにとりわけ関係の深い、“NFTは豊かなインターネットに希少性をもたらす”という考え方に焦点を当て、そうではないということを説明しようと思います。

NFTが所有<ownership>(あるいは所有権<possession>というべきだが、これについてはまたあとで説明する)を主張できるのは、トークンそのものに対してだけだ。ソフトウェアエンジニアのモリー・ホワイトが『WIRED』に説明してくれたところによると、「NFTを購入しても、そのNFTにひもづけられたアイテム(画像やゲームのアイテムなど)を所有することにはならない場合がほとんどです。そこが実物のアート作品やデジタルアートを購入した場合と違うところです」。

その代わり、NFTにはたいてい、どこかほかの場所に保管されているアイテムにつながるリンクが含まれている。NFTにはそのアイテム自体の著作権や保管、使用権に関わる所有権はまったく付与されていない。ホワイトの説明にもあったように、NFTを購入するということは「自分のウォレットのアドレスを、データベースの何かにつながるポインターの隣に書き込んでもらうためにお金を払った、ということです。NFTを購入した人は、実際に何かを『所有している』わけではまったくないのです」。

ほとんどの場合、NFTは原資産であるデジタルアセットの所有権を伝えるものではありません。単に、デジタルアセットを参照するハイテクなバーコードとしてのNFTそのものを所有できるだけです。つまり、NFTがもたらす唯一の希少性は、そのバーコードの希少性です。一方で、デジタルアセットそのもの(通常は画像で、音声、動画、テキストファイルの場合もある)は無限にコピーできます。デジタル世界に内在する豊かさが損なわれることはありません。

NFTは、ブロックチェーン上に記録された、誰か(NFTの購入者)と何か(原資産)との曖昧なつながりの表明に過ぎません。そのつながりこそが所有なのだと誤解されていますが、ほとんどはそうではありません。特定のデジタルアイテムとのつながりを表明するために誰かが支払ったことを証明する領収書のようなものです。

多くの人にとって、それは意味のあるものではないでしょう。確かにデジタルアイテムとのつながりを証明することはできるのかもしれませんが、そのデジタルアイテムの所有を伝えるものではないのです。ただ、ある特定のグループにとっては、そのつながり自体が価値を持つこともありえます。以前に、このWalled Cultureで紹介した「真のファン」たちです。彼らにとっては、大好きな作品のクリエイターとつながることは重要な意味を持つのです。

真のファンである彼らは、好きなアーティストの全作品を購入するにとどまらず、喜んで金銭的な支援まで申し出ています。クラウドファンディングサイトやPatreonなどで高額な支援をして、気持ちを表明しているのです。その見返りとして、アーティストから個人的な記念品(サイン入りの本など)をもらうこともあります。

そこで、NFTの出番となるわけです。真のファンは本の代わりに、特定のレベル(ブロンズ、シルバー、ゴールドなど)でアーティストを支援したことを確認できるNFTを受け取ることができます。これらのNFTはパブリックブロックチェーン上にあり、支援を証明するデジタルバッジの役割を果たします。そのNFT自体には何の価値もなくても、それを所有する人に称賛が与えられます。外の世界ではほとんど関心を持たれることはなくても、そのアーティストのファンにとって、そのNFTは真の名誉の証――本当の意味での非代替性のトークンになるのです。

NFTs are mostly useless or worse, but here’s one important way they could help creators – Walled Culture

Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: April 6, 2022
Translation: heatwave_p2p
Header image: CHRISTOPHER DOMBRES

カテゴリー: Crypto