以下の文章は、電子フロンティア財団の「Fighting For Progress On Patents: 2024 in Review」という記事を翻訳したものである。
オフラインの世界で私たちが持つ権利――自分の意見を述べること、文化を創造すること、ゲームを楽しむこと、新しいものを生み出すこと、そして経済活動を行うこと――これらの権利は、オンラインの世界でも等しく保障されなければならない。この信念こそが、特許制度の悪用と闘うEFFの活動の原動力となっている。
この10年で大きな前進を遂げてきたとはいえ、特許、とりわけ曖昧な表現で記された多くのソフトウェア特許は、私たちのオンラインの権利を脅かし続けている。特許訴訟の実態を見ると、その多くは「発明者」と呼ぶにふさわしい存在ではなく、実体のない匿名の有限責任会社によって提起されている。彼らは何の製品もサービスも提供せず、ただ特許侵害を口実に他者を脅かす存在、すなわちパテントトロールでしかない。テックセクターにおける特許訴訟の85%以上が、こうした「非実施主体」によって引き起こされている。
EFFが支援を続けているのは、CAPTCHAを使用する、ピクチャメニューを表示する、荷物や車両を追跡する、語学教育を行う、オンラインでコンテストを開催する、シンプルなオンラインゲームで遊ぶといった、誰もが日常的に行っている活動に関連して特許の脅威にさらされている個人や組織だ。
2025年を迎えるにあたり、この闘いの現状を紹介しよう。
不当な特許に異議を申し立てる市民の権利を守る
2012年、特許庁が毎年大量の疑わしい特許を発行し続けるという根深い問題に直面した議会は、「当事者系レビュー(IPR)」と呼ばれる制度を創設した。これは特許の審査と異議申し立てを可能にする仕組みだ。完璧とは言えないものの、この制度によって、本来なら認められるべきではなかった数千件もの特許が無効となった。
大手特許保有者とパテントトロールが、このIPR制度の解体を画策してきたのは当然の成り行きだった。連邦裁判所での解体工作に失敗すると、彼らは過去18ヶ月の間に戦術を変更し、米国特許商標庁(USPTO)に対して、IPR制度を利用できる者の範囲を制限することで制度そのものを骨抜きにしようと試みた。
EFFは、この提案に真っ向から反対し、支持者たちにパブリックコメントの提出を呼びかけた。その結果は大きな成功を収めることとなった。EFFの呼びかけに応じた1,000件近くを含む数千件のコメントを検討した結果、USPTOは提案を撤回するに至った。
有害な特許の復活を企てる議会との闘い
特許制度は、とりわけソフトウェアの分野で深刻な機能不全に陥っている。米国特許庁は20年以上にわたって、ありふれた文化的実践やビジネス慣行に、コンピュータ用語や些末な技術的要素を付け加えただけの特許を次々と認めてきた。
10年前、最高裁判所はAlice v. CLS Bank事件で画期的な判決を下し、一般的な特許にコンピュータ用語を付け加えただけでは有効な特許とは認められないと判断した。とはいえ、この判決だけではパテントトロールの脅威から完全に身を守ることはできていない。特許に異議を申し立てるには今でも数十万ドルもの費用がかかり、パテントトロールは10万ドル以下の「示談金」を要求して嫌がらせを続けている。それでもAliceの判決は、パテントトロールの主張の影響力と頻度を抑制し、より多くの企業が必要に応じて反撃できる環境を整えた。
今年、一部の大手特許保有者がAliceの判決を覆そうと再び動き出したのも、そのためだ。特許適格性回復法(PERA)の導入は、最悪の特許を制度に呼び戻すことになりかねない。さらにこの法案は、人間の遺伝子の特許化を防いできた最高裁判所の判決さえも覆そうとしていた。EFFはPERAにあらゆる場面で反対の声を上げ、年末には支持者たちも第118議会での法案成立を断念するに至った。彼らは来年も必ずや再挑戦してくるだろう――私たちも対抗するための準備を進めている。
特許訴訟の密室を開く
米国の訴訟は本来、公開を原則とする。特に何百万人ものインターネットユーザの日常生活に影響を与えうる技術に関する特許訴訟においては、なおさらだ。しかし、現実はそうはなっていない。テキサス州東部地区連邦地方裁判所で審理されたEntropic Communications LLC v. Charter Communications事件では、過度な文書の封印により、事案の全容が公衆の目から覆い隠されてしまった。Entropicの主張は、インターネット接続にケーブルモデムを使用する誰もが影響を受けかねない内容を含んでいたため、EFFは連邦裁判所の記録への市民のアクセス権を守るべく訴訟に介入することを決めた。
特許紛争の透明性を確保するための私たちの取り組みは今も続いている。2016年にはテキサス州東部地区で過度に封印された別の特許訴訟に介入し、2022年にはカリフォルニアでも同様の介入を行って透明性確保に向けた重要な判決を勝ち取った。同年には、デラウェア州の裁判官による特許保有者への調査を支持し、最終的にその調査は刑事事件としての捜査へと発展した。裁判官の判断は今年、控訴審でも支持されている。
今なお、パテントトロールはソフトウェアの開発や利用を理由に、個人や企業から容易に金を巻き上げることができる。2025年、EFFは開かれた、公正で透明性のある特許制度の実現に向けて、闘いを続けていく。
本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら。
Fighting For Progress On Patents: 2024 in Review | Electronic Frontier Foundation
Author: Joe Mullin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 25, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: EFF (CC BY 3.0 US)