以下の文章は、電子フロンティア財団の「Patient Rights and Consumer Groups Join EFF In Opposing Two Extreme Patent Bills」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

米国上院が、パテント・トロールに大きな力を与えかねない2つの法案について、今週木曜日に採決を行う。一つは特許適格性回復法(PERA)で、これまで10年間最高裁の判例によって制限されてきた抽象的なコンピュータ特許の多くを復活させるものである。もう一つはPREVAIL法で、特許庁が誤って付与した特許に対する一般市民の異議申し立てを大幅に制限するものだ。

これらの法案に反対するため、EFFは上院司法委員会に書簡を送った。書簡には、市民社会団体、シンクタンク、スタートアップ企業、ビジネス団体など、幅広い組織が連名で署名している。PERAに関する書簡では、次のように警鐘を鳴らしている。

PERAが成立すれば、コンピュータや電子通信を使用するものであれば、ビジネス手法、医療行為、法的合意、メディアコンテンツ、果てはゲームや娯楽に至るまで、あらゆるものが特許の対象になりかねない。この変更がもたらす影響の大きさは、言葉では言い表せない。

PERAが施行されれば、パテント・トロールが悪用してきた問題のある特許の復活も考えられる。例えば次のようなものだ。

  • Alice Corp. の特許:コンピュータを介して第三者による金融取引を清算するという、ごく一般的なアイデアを特許化したもの。
  • Ameranthの特許:モバイルデバイスでレストランの注文をするという、当たり前の仕組みを主張する特許。この特許を盾に、既製の技術を使っただけの100以上のレストラン、ホテル、ファストフード店が訴えられた。
  • Hawk Technology Systems LLCの特許:監視カメラの映像を見るという、ごく一般的なビデオ技術を主張する特許。これを根拠に200以上の病院、学校、慈善団体、食料品店などが訴えられた。

知的財産法の専門家17名も、別の書簡で警告を発している。10年前のAlice v. CLS Bank判決で最高裁が明確にした特許適格性の基準が、PERAによって再び曖昧になるという。彼らは「PERAは、科学、自然、抽象的アイデアという、社会全体の利益となるパブリックドメインを特許法が制限することを防いできた何世紀もの判例法を覆すことになる」と指摘している。

米国パブリック・インタレスト・リサーチ・グループもPERAとPREVAILの両方に反対の立場を取っている。彼らの反対書簡によれば、特許申請の悪用により、元の特許が失効してから何年も経った後でさえ、ジェネリック医薬品の市場参入が不当に阻まれてきたという。次のように警告している。

「PERAで提案されている変更は、誰も発明していない自然界の化合物にまで特許を与える道を開くものだ。この劇的な変更は、特許を取得できる項目の範囲を拡大し、医薬品の価格設定に壊滅的な影響を与えかねない。製薬会社が競合他社を市場から締め出すための特許の藪の構築がこれまで以上に容易になるためである。」

患者の権利擁護団体からも反対の声が上がっている。彼ら、PREVAILが「市民が特許に異議を申し立て、競争を促進する権利を著しく損なう」ものであり、PERAは「個人や企業が自然の一部や人体に関する情報まで独占できる道を開く」と主張している

ジェネリック医薬品メーカーも同様の懸念を抱いている。ある業界団体は今月初め、「PREVAILはジェネリックやバイオシミラーのメーカーが高価なブランド薬の特許の藪に意義を申し立て、安価な医薬品を患者に届けることを難しくしてしまう。一方、PERAはブランド薬メーカーがより大きな特許の藪を築き、さらに高額な価格設定を可能にするだろう」との見解を示した

我々は上院に対し、これらの法案に反対する市民社会や企業の幅広い声に耳を傾けるよう求める。これらの法案が可決されれば、特許制度はより不公平で悪用されやすいものになってしまう。パテント・トロールや一部の強力な特許保有者の声に惑わされず、公共の利益を最優先に考えるべきだ。

Documents:

Patient Rights and Consumer Groups Join EFF In Opposing Two Extreme Patent Bills | Electronic Frontier Foundation

Author: Joe Mullin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: September 25, 2024
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: Patent