米連邦通信委員会(FCC)はネット中立性原則の廃止を決定した。本日の採決の結果、インターネットプロバイダは、特定のウェブサイトやサービスへのアクセスに課金したり、制限したりできるようになる。これにより、10年前のように、 BitTorrentへの帯域制御や遮断が広く行われるようになるかもしれない。

この数ヶ月、数百万の人びとが、オバマ政権時代に定められたネット中立性原則の廃止を阻止すべく、FCCの計画に反対の声をあげてきた。

市民の怒りの抗議、大手テクノロジー企業からの批判、インターネットのパイオニアたちからの警告にもかかわらず 、それを止めることはできなかった。

今日、FCCは旧来の規則を廃止し、ネット中立性の事実上の終了を決定した。

ネット中立性の原則があったからこそ、ISPは「適法な」トラフィックの遮断や制限、有料の優先順位付けが禁じられてきたし、インターネットプロバイダはタイトルIIキャリアとして監督されてきた。

しかし、こうした原則が廃止されることで、インターネットプロバイダは、トラフィックの優先順位に課金するためのさまざまなテストを実施することができるようになる。新たなガイドラインにもとづいて、一部オンラインサービスへのアクセスに加入者に追加料金を請求したり、特定のタイプのトラフィックを制限することが可能となる。

廃止に反対する多くの専門家が、従来のネット中立性の原則が破棄されることにより、一部のサービスには「ファスト・レーン」が開かれ、その他のサービスは制限されるという状態が、米国で一般化するのではないかと危惧している。

また廃止によって、BitTorrentトラフィックが再び制限される可能性もある。元を正せば、ネット中立性の議論は、いまから10年前のコムキャストの「密かな」BitTorrent帯域制限によりはじまったものだ。

Photo by Backbone Campaign (CC BY 2.0)

コムキャストの帯域制限の歴史はセンシティブな問題である。それは同社にとっても同じことだ。

オバマ時代のネット中立性以前、コムキャストは特定のトラフィックを差別的に扱わないことを宣言していた。FCCの投票に先立つ昨日、同社はその約束を改めて強調した。

コムキャストのチーフ・ダイバーシティ・オフィサーのデヴィッド・コーエンは「批判者は曲解や偏見に満ちた情報、誤解を招く不正確な非難を繰り返しているが、我々インターネットサービスが変わることはない」という

「これまでも、適法なコンテンツを遮断したり、制限したり、差別的に扱うことはないと繰り返し訴えてきた。それは今日に至っても変わらない」

この『適法な』という言葉は注目に値する。つまり、海賊版サイトがブロックされないという保証はないということだ。

我々がこれまでお伝えしてきたように、海賊版サイトのブロックは、ネット中立性の原則が有効であった時代にも可能であった。著作権の抜け道がそれを可能にしているのだ。理論的には、あらゆるBitTorerntトラフィックをターゲットにすることができる。

さらに、本日のFCCの採決により、ISPがネットワーク全体でBitTorrentトラフィックをブロックしたり、制限することが容易になる。しかし今のところ、具体的な計画を示しているISPはない。

また、ISPがBitTorrentトラフィックの制限を行えば、すぐさま広く知るところとなる。FCCの新たな計画のもとでは、ISPに透明性を求めている。ISPがネットワーク管理の実施、遮断、商業的優先順位付け、その他を行った場合には、その情報を開示しなければならない。現在、ネット中立性に高い関心が向けられていることを考えれば、ISPはより慎重な姿勢を取らざるを得ないだろう。そうしなければ、顧客離れを招くことにも繋がりかねない。

最後に、本日の採決ですべてが終わったわけではない。

ネット中立性の支持者たちは、議会に対して廃止を撤回するよう動き出している。また、この問題での提訴も検討されているし、複数の州司法長官がこの廃止を差し止めるための訴訟を計画している
FCC Repeals U.S. Net Neutrality Rules – TorrentFreak

Author:Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 15, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Free Press/ Free Press Action Fund / CC BY-NC-SA 2.0