以下の文章は、TorrentFreakの「Kiwi Farms: The Slippery Slope of Curating the Web」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

世論の強い抗議があったにも関わらず、Cloudflareは当初、Kiwi Farmsとの関係を断ち切ることを否定した。だがその直後、命に関わる脅威があったとして、同社はその立場を翻した。Kiwi Farmsを排除したことで、ウェブの自主的なキュレーションを求める声が高まっている。その標的はCloudflareの枠を越え、ドメインレジストラ、レジストリ、ISPにまで及ぶのかもしれない。それはどのような問題を引き起こすのだろうか?

10年前、問題のあるドメインを裁判所がオフラインにできるようにする米国の法律に、世界中の無数の人々が反対の声を上げた。

SOPA法が否決されたとき、多くのインターネットユーザが表現の自由の勝利を祝った。

それから10年、インターネット・キュレーションはいまだにホットな話題だ。だが、かつてSOPAに反対した多くのインターネットユーザたちは、いまや企業、個人、ウェブサイトをオンラインから「キャンセル」するよう求めるようになった。どうやら、考え方がずいぶんと変わってしまったようだ。

ウェブ上には、オフラインにされるべき卑劣なコンテンツが溢れていることは否定し得ない。だが、誰が、どのような根拠で、という問題は未解決のままだ。

CloudflareとKiwi Farms

先週、Cloudflareが立ち上がった。同社は、検閲にまで至りかねないサイトの削除要請に対し、今後は裁判所の命令なしに顧客アカウントを凍結することはない、と発表したのだ。もちろん、これはもともと同社のポリシーであって、既に2度にわたって――Daily Stormerと8Chanの追放によって――このポリシーを逸脱している。

Cloudflareのコメントは、Kiwi Farmsのアカウント凍結を求める声の高まりに応えたものであった。だが皮肉なことに、わずか数日後、命に関わる脅威があったとしてこの厄介なフォーラムを凍結したことで、Cloudflareの確固たる姿勢は打ち砕かれることになる。

他の企業の対応もこれに倣っている。たとえば、DDoS-Guardは、Kiwi FarmsがCloudflareから移転してくると、即座にCloudflareの対応を踏襲した。また、Googleも何らかの介入をしているようで、Kiwi Farmドメインを検索結果の上位に表示しなくなっている。Internet Archiveも、物議を醸したこのサイトのアーカイブを削除した。

ミッション完了!?

パイレート・ベイはOK

Kiwi Farmsの追放を求め、Cloudflareを非難していた人たちは喜んでいるだろう。彼らは、裁判所を介入させることなく望む結果を得たのだ。だが、これはハリウッドの大企業やレコード会社がパイレート・ベイ潰しで失敗してきた戦略でもある。パイレート・ベイは、創設者がスウェーデンで有罪判決を受けたにも関わらず、今日もCloudflareを使い続けている。

Kiwi Farmsには不穏なコンテンツが多数ホストされていたが、これはこのサイトだけに限った話ではない。現在、Cloudflareにはさまざまなサイトを追放するよう求める声が多数寄せられているし、裁判でもDaily Stormerの追放が引用されている。同社がコンテンツの内容に中立の姿勢を貫くことはますます難しくなっているのだろう。

ドメインレジストラ、レジストリ、ISP

この問題はCloudflareだけにとどまらない。上述したように、公式には確認されていないものの、GoogleはKiwi Farmsドメイン(の検索結果)をランクダウンしたようである。では、BingとDuckDcukGoはどうするのだろうか? 彼らには何が期待されているのだろうか? 問題のあるサイトに対して、自主的に対応すべきなのだろうか?

部屋の中の象にも触れなければならないだろう。ドメインレジストラやレジストリだ。こうした企業がドメイン凍結を決定したとしたら、Cloudflareや検索エンジンの対応の是非など無意味だ。自分たちの評価に基づいてサイトを停止させようとするなら、こうした(インフラ)企業をターゲットにするのが最善手なのかもしれない。

あるいは、インターネットプロバイダも同様に責任を負わされるようになるかもしれない。プロバイダは、多数の卑劣なサイト、サービス、意見を伝達する手助けをしているのだから。それは憎悪や犯罪から利益を得ているということなのだろうか? だとすると、彼らは裁判所の命令もなしに、ドメインとIPアドレスの双方を遮断しようとするだろうか?

転落への道?

興味深いことに、著作権者たちはすでに何年も前からこのような提案を繰り返しており、多くの場合、望む結果は得られていない。だが、現在の潮流は、彼らに有利に変化しているようにみえる。彼らがこの波に乗り遅れることはないだろう。

ウェブの自主的なキュレーションは今に始まったことではなく、しばしば有用でもあった。たとえばマルウェアを排除するために、多くのサービスが自主的なキュレーションを採用している。これをさらに拡大することが良いのかどうかは、その坂道の滑りやすさによるのだろう。他の多くの事柄と同様に、それは視点の問題である。

この視点がどうあるべきかは、人によって異なるし、個々人の中でも必ずしも明確ではない。非常に繊細な問題ではあるのだろう。TorrentFreakは、SOPA反対運動を主導していた複数の活動家グループに連絡をとった。だが返答はなく、返答があっても現時点ではコメントを拒否された。

Kiwi Farms: The Slippery Slope of Curating the Web * TorrentFreak

Author: Ernesto Van der Sar / TorrentFreak (CC BY-NC 3.0)
Publication Date: September 12, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Denis Blzz