以下の文章は、電子フロンティア財団(EFF)の「Podcast Episode: Fighting Enshittification」という記事を翻訳したものである。本稿はEFFのポッドキャストシリーズ「How to Fix the Internet」のエピソードの書き起こし記事である。

Electronic Frontier Foundation

初期のインターネットには「技術的自己決定」が数多く存在していた。つまり、必要なものだけを選択したり、プライバシーを保護したり、自分の体験をコントロールできた。問題は、その自己決定を行使するには相応の技術的スキルを必要としたことだった。しかし、もしそのスキルが必要なくなったらどうだろう? オンラインのプライバシー、セキュリティ、相互運用性、言論の自由がもたらす恩恵が、すべてのインターネットユーザに平等に分配されるとしたら?

これが、受賞歴のある作家で、EFFの特別顧問でもあるコリイ・ドクトロウが私たちに戦ってほしいと願う未来だ。彼が提唱する「メタクソ化(enshittification)」という言葉――オンラインプラットフォームがユーザと企業顧客の双方を罠にはめ、それぞれに提供する価値を次第に減らしながら、彼らをますます製品のように扱う悪循環――は、米国方言協会の2023年の言葉に選ばれた。しかし、彼がEFFのシンディ・コーンとジェイソン・ケリーに語ったように、メタクソ化の分析はまた、かつて企業に私たちを丁重に扱わせていた要因を特定し、このサイクルを断ち切り、より良い未来へと前進する道筋を見つけるのに役立つだろう。

このエピソードで学べること:

  • なぜ「知的所有権」という名称は誤りであるのか、社会に必要な保護を排除するためにいかにして法律が濫用されてきたか
  • テクノロジー業界のロビー活動における団結が、いかにして規制を骨抜きにしていったのか
  • 最近の反トラスト法に基づく措置によって、巨大企業にユーザのための行動を迫るかすかな希望のをもたらす理由
  • なぜテックワーカーの労働者の権利が良きインターネットのための戦いに重要なのか
  • 立法・法的な敗北が、未来の変化のためのきっかけになる可能性について

コリイ・ドクトロウは、受賞歴のあるSF作家、活動家、ジャーナリスト、ブロガーで、EFFの特別顧問である。彼はPluralisticの編集者であり、「The Bezzle」(2024年)、「The Lost Cause」(2023年)、「Attack Surface」(2020年)、「Walkaway」(2017年)などの小説の著者である。「Homeland」(2013年)や「Little Brother」(2008年)などのヤングアダルト小説、「The Internet Con: How to Seize the Means of Computation」(2023年)や「How to Destroy Surveillance Capitalism」(2021年)などのノンフィクション作品も執筆している。彼はかつてEFFの欧州ディレクターで、英国のOpen Rights Groupの共同創設者である。カナダ・トロント生まれで、現在はロサンゼルス在住。

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Transcript

コリイ・ドクトロウ:
つまり、相互運用性というのは、洗濯機を売った人から服を買う必要がないということなんだよ。洗濯機はどんな洗剤でも使える。食器洗い機だってどんな食器でも入れられる。誰のガソリンや電気だろうと車に入れられるし、どの航空会社にも荷物を持ち込める。

一般的な前提として、物事は互いに機能する。たまたま運良くそうなることもあれば、成り行きでそうなることもある。例えば、航空会社がどこも「72センチより大きい荷物には追加料金を請求します」と言えば、スーツケースメーカーは72センチより小さい製品にする。機内持ち込み手荷物とかの制限もそうだよね。あるいは、もっとフォーマルな場合もある。標準化団体が「これが標準的な電球のスレッドゲージとサイズである」と言ってるようにね。そのおかげで、購入する電球はどれもすべての電球ソケットにフィットする。

電球だったら、パッケージの細かい説明を読んで互換性があるかどうか確認する必要はない。でも、時には敵対的なこともある。メーカーが嫌がるような場合だね。例えば、HPはプリンタインクに1ガロンあたり1万ドルも払わせようとしているが、1万ドルもするインクなんて買いたいわけがないよね。そこで、HPのプリンタがカートリッジに「ねえ、君はHP製のカートリッジかい?」と尋ねる仕組みを組み込むと、今度はそれを逆手に取る連中が出てくる。

HP製ではないカートリッジに「うん、そうだよ」と言わせる方法を見つけ出すんだ。そのカートリッジが売りに出されて、それを買う人は騙されたわけじゃない。彼らは検索エンジンで「HPに1ガロンあたり1万ドル払わずに済む方法」と調べた上で買うんだ。

***

シンディ・コーン:
彼はコリイ・ドクトロウ。相互運用性が私たちの生活のあらゆる場面に恩恵をもたらしてくれていることを語っています。

私はシンディ・コーン、電子フロンティア財団(EFF)の事務局長です。

ジェイソン・ケリー:
私はジェイソン・ケリー、EFFのアクティビズム・ディレクターです。この番組は私たちのポッドキャストシリーズ「How to Fix the Internet(インターネットをなおすには)」。

シンディ・コーン:
私たちEFFは、オンラインで起こりうる問題を警告し、そして実際に問題が起きればその解決に全力を尽くしています。ですが、この番組では、物事が正しく進み始めたらどんな世界になるかを想像しようとしています。

ジェイソン・ケリー:
今日のゲストはコリイ・ドクトロウ。彼はデジタル世界に関する世界屈指の公共思想家で、作家、アクティビストでもあります。彼はフィクション、ノンフィクションを執筆し、1ページあたりに詰め込まれるアイデアの量は誰にも負けないほど。

シンディ・コーン:
幸運なことに、コリイは20年以上にわたってEFFの一員であり、私の最も親しい友人の一人です。このポッドキャストの第1シーズンにも出演してくれました。たしか最初のゲストだったと思うけど、また話を聞きたくなって。彼と話すのがとても楽しいというのもありますが、彼がプラットフォームの独占問題に対処するために提唱してきた中心的なアイデア、つまり相互運用性(あるいは競争的互換性と呼ぶアイデア)が、米国・欧州の政策分野で実際に推し進められるようになってきているからです。

私はこの番組でコリイの言葉をよく引用します。例えば、「古き良き時代に戻りたいわけではない。私たちは新しき良き時代を作ろうとしている」というアイデアは彼の言葉。だから、そこを出発点にするのがいいんでしょうね。コリイバースでは、新しき良き時代はどのようなものなのでしょう?

***

コリイ・ドクトロウ:
古き良きインターネットは、高度な技術的自己決定に特徴づけられる。つまり、使用するデジタルツールがどのように機能するかを自分で決定する権利だ。

問題は、高度な技術スキルが必要だったことでね。もちろん例外はあって、たとえば広告ブロッカーは、技術的自己決定の要素の中でも、スキルがなくても大きなインパクトを生み出せる典型的な例だと思う。いまやウェブユーザの半数以上が広告ブロッカーを使用しているよね。ドク・サールズはこれを人類史上最大の消費者ボイコット運動と呼んだ。

広告ブロッカーをインストールするのに脳外科医やハッカーである必要はない。数回クリックするだけでいい。新しき良きインターネットは、技術的自己決定の恩恵を誰でも受けられるインターネットのことだと思う。広告ブロッカー以外には、例えば、いま私が話している我が家の環境では、Pi-hole(パイホール:広告ブロックDNSサーバ)を実行しているんだけど、これは、スマートTVやアプリでも広告をブロックできる特殊なデータ機器なんだ。

自宅ネットワークで個人用VPNを実行しているから、ローミング中でもアクセスできる。ドイツから戻ってきたばかりなんだけど、メールサーバのポートがブロックされててね。でも自宅にVPN接続したら、いつもと同じようにメールを受信できた。こういう恩恵は、広告ブロッカーと同じように手軽に手に入れられるはずなんだ。市場やいじり屋、協同組合、自分のためだけにツールを作る人たちばかりでなく、技術に疎い人々もそうしたツールを使えるように奮闘してる人たちがいる。それが新しき良きインターネットだね。

シンディ・コーン:
素晴らしい。つまりは「未来はもうここに来ている、ただ、その未来はまだ公平に分配されていない」。その未来を公平に分配したいし、誰もがもっと簡単に使えるようにしたい、と。

コリイ・ドクトロウ:
そう。古き良きインターネットの問題は、熟練した技術実践者が企業の理不尽に耐えなければならなかったことじゃなかった。

問題は、すべての人がその恩恵を得られなかったことなんだ。インターネットの明るい未来というのは、その恩恵をもっと公平に分配できる未来だ。翻って、いま我々が直面しているインターネットの暗い未来というのは、熟練した技術者でさえ、その恩恵をますます享受できなくなっていく未来。

シンディ・コーン:
そして、技術に疎い私たちにはもっと手の届かないものになる、ということですね。エンドユーザの側は、世界がもっと多くの選択肢、自分を守るためにできることや助けを求められるより良い選択肢に溢れることを求めている。そして、ハッカーやイノベーターの側は、良いアイデアを簡単に実現し、実際に機能させ、それをたくさんのひとに見つけてほしいと願っている。

コリイ・ドクトロウ:
それ以上だと思う。そこには、インセンティブ効果も働くから。市場にまかせておけば社会の資源がうまく分配されて、すべての問題が解決されるとまでは思っていない。でも、市場の力を心底信じている人が言うように、とにかくインセンティブはうまく機能する。

製品計画会議では、「もし製品を劣化させたら、ユーザは検索エンジンに『このゲームの抜け道を教えて』と入力するのでは?」という疑心暗鬼に包まれている。一度そうされてしまえば、すべてが水の泡と化す。広告ブロッカーについてもう一度考えてみよう。取締役会で「試算の結果、広告を20%ほど押しつけがましくすれば、ユーザあたりの収益は2%増加することが見込まれます」と誰かが言ったとする。

別段ユーザのことを気にかけていなくても、こんなことを言うヤツが出てくるだろう。「ええ、でも、そうなれば、ユーザの20%が検索エンジンで『広告をブロックする方法』を検索するんじゃないですか? その結果、ユーザから得られる予想収益は2%増どころか、相殺されてしまうのでは」。そして、そのユーザから得られたかもしれない収益は、永遠にゼロになる。

一度「広告をブロックする方法」を検索エンジンに入力してしまえば、そのユーザから二度と広告収入を得ることはできない。したがって、ツールがユーザを守る可能性があるという事実が、均衡を変え、インセンティブを変え、企業の行動を変える。それがうまくいかないなら、ユーザには救済が必要になる。

つまり、ベルトとサスペンダー。プランAとプランBだね。

ジェイソン・ケリー:
現在のデジタル世界の状況について、キミが去年生み出した造語「メタクソ化」に向かって議論が進んでるようですね。キミのマクルーハンの講演でも、今の話と類似した論点がたくさん出てきた。この言葉について聞いてもいいですか。端的に、どういう意味なのか、そして、なぜ米国方言協会が今年の言葉に選んだのでしょう?

コリイ・ドクトロウ:
そうだね。最上位の定義としては、テクノロジーにはユニークかつ特徴的な技術特性があり、デジタルがもつ柔軟性と流動性によって、他セクターの企業とは一線を画した方法で、企業がステークホルダーに損害を与えることを可能にする、ということ。

そして、テクノロジーの規制、テクノロジーの競争、そしてテクノロジーの悪用への抑止力としての労働者による抑止力がすべて働かなくなった今、我々が使用するすべてのプラットフォームが同じように劣化しているというダイナミズムが働いている。まずユーザに価値をシフトしてユーザを囲い込み、次にそのユーザから価値を転嫁するという約束で企業顧客を引き込んで、企業顧客を囲い込む。そして誰もが人質に取られたところで、デジタルツールの柔軟性を利用してユーザを閉じ込めつつ、その価値を奪う。

したがって、サービスが次第に劣化し、価値が失われているのがわかっていても、ユーザは離れられないと感じる。そして企業がサービスをますます劣化させていくにつれて、ユーザはますます害を被ることになる。

いずれは限界に達する。最終的には状況が耐え難いほど悪くなって、ユーザたちは去っていく。だが問題は、その終わりが破滅的なことだ。LiveJournalを愛していたすべてのユーザたちがその破滅を経験した。彼らはLiveJournalを愛し、コミュニティは本当に必要としていたのに。

最終的に彼らは全員去っていったが、全員が同じ場所に集まることはできず、コミュニティはバラバラになった。彼らはただ断片化して終わった。いまでもLiveJournalを本当に必要としていた人たちから、「取り戻せなかった。大切なものを失った」という声を耳にする。私にとって、メタクソ化の分析は、単に「企業が悪さをしないためにどうすればよいか」だけでなく、「悪しき企業に囚われた人々が、現在のように多くを諦めることなく離脱するにはどうすればよいか」ということでもあるんだ。

シンディ・コーン:
そう、それがまさに敵対的相互運用性ということですね。この言葉はEFFの初期のスタッフ・テクノロジストだったセス・シェーンの造語だったと思うんですが、冒頭に話していたHPプリンタの例のように、あなたが深く掘り下げ、発展させてきたアイデアでもありますね。

コリイ・ドクトロウ:
敵対的相互運用性は、デジタルツールが登場してからというもの、我々の技術的なストーリーの中に存在し続けてきた。これまで話してきたように、デジタルツールには柔軟性があるからね。我々が作れる唯一のデジタルコンピュータは、チューリング完全フォン・ノイマン型マシンで、つまり有効なすべてのプログラムを実行できる。つまり、メーカーがユーザが不利になる機能を追加したり、顧客に対して権限の濫用をしようものなら、誰かがその機能をアンロックできる。

IBMがメインフレームを安価にばらまいて、高額なプリンタやキーボードを売りつけていた時代に、互換周辺機器(plug compatible peripherals)というものが登場した。いわゆる「七人の小人(Seven Dwarfs)」とか富士通とか、いまや大企業となった企業が、IBM周辺機器のクローンを販売した。あるいは、AppleはユーザにMicrosoft Officeを快適に使えるようにしたかったんだけどMicrosoftに頑なに拒否され、Mac版Officeというあり得ないほどひどいソフトウェアが生まれた。まともには機能しないし、互換性も問題だらけだった。そこでスティーブ・ジョブズは技術者にOfficeをリバースエンジニアリングさせて、iWorkのPages、Numbers、Keynoteを開発した。そのiWorkは、Excel、PowerPoint、Wordのすべてのファイルを読み込み・書き出しできる。

こうしたことは常に我々のストーリーとして綴られ、常にテック企業の悪しき衝動に対するヘッジとして機能してきた。

だが、それがヘッジとして機能しなければ、悪しき衝動に囚われた人々に抜け道を作り出すことになってしまう。テクノロジーが集中化するにつれて、それ自体が反トラスト法を適用しないという政策選択の結果なんだけれど、ますます企業が互いに買収・合併を繰り返し、高度に集中化することを許してしまった。

その結果、立法の場で口裏を合わせた主張をするのがとても簡単になった。セスが敵対的相互運用性という言葉を作ったのは、巨大エンターテイメント企業間の陰謀について語るためだった。彼らはブロードキャスト・フラグという、未承認のコンピュータの構築を違法化する陰謀を企てていたんだ。

エンターテイメント業界が、当時でさえ1桁、2桁も巨大なテクノロジー業界にこのような陰謀を押し付けることができたのは、エンターテイメント企業が7社しかなく、一つの声で話したからだ。一方、テクノロジー業界に何百もの企業があって、ようするに烏合の衆だったんだ。放送保護のディスカッショングループでも、何百もの企業が互いに牽制し合い、意見を統一できずにいた。しかし今日、テクノロジーは一つの声で話すようになり、かつて彼らの悪しき衝動を抑制してきた敵対的相互運用性を排除できるようになった。

ジェイ・フリーマンが「ビジネスモデル侮辱罪」と呼んだものが現実になってしまった。プリンタカートリッジやオフィススイート、モバイルオペレーティングシステムのリバースエンジニアリングが、民事および刑事罰の対象になった。誰も投資してはくれなくなり、個人でやろうとすればとんでもないリスクを抱えることになる。サポートも整っていない。

「このボタンをクリックするだけで、あなたの体験を良くするこのものをインストールできます」なんてサポートは絶対に得られない。たとえ何かしら手に入るとしても、「インターネットからこの謎のソフトウェアをダウンロードしてください。場合によっては自分でコンパイルし、デバイスにインストールする方法を見つけてください」と言われる。

ウォルマートのレジ前で、ジェイルブレイク(脱獄)用ドングルが99セントで買えるなんてこともない。いまやジェイルブレイクの方法を発見するのは、フリーメイソンに入会するより難しいんじゃないかな。

シンディ・コーン:
そうですね。DMCAの例外規定を通じてジェイルブレイクそのものを解放することはできたけど、そのことが多くの人々の助けになることはなかった。私たちは法律の一部に例外規定を設けさせることはできたけど、それ以外の条文がジェイルブレイクを妨げたままで、事実上ほとんどの人が例外規定の恩恵を受けられずにいます。

コリイ・ドクトロウ:
釈迦に説法だと思うけど、まさに例外処理の欠陥というやつでね。ちょうどフィナンシャル・タイムズのファクトチェッカーと、そのやり取りをしたばかりだよ。彼は私のメタクソ化のスピーチを記事にしてるんだけど、「スマートフォンのジェイルブレイクは違法化されていると言ってますけど、ジェイルブレイクは見直しプロセスで合法化されたんじゃないんですか」と言ってきた。そう、確かにそのプロセスで自分の電話のジェイルブレイクは合法化された。でも、ジェイルブレイクのツールを提供したり、ツールの使い方を教えたり、ツールについて誰かと議論することが合法化されたわけじゃない。ようは、丸太からジェイルブレイクツールをこっそり作り出せるならいいですよ、と言ってるわけ。

自分でiOSの欠陥を発見して、自分でそれをエクスプロイトする方法を見つけて、自分でiOSの代替バージョンを作成して、自宅のプライバシーが守られた環境で自分のスマートホンにインストールする。そして自分が何をしたのか、どのようにやったのかを誰にも言わなければ、法律はこれを許可し、刑務所送りにはしない。

もちろん、あなたが何をしたかを誰かに教えてはいけない。特に商業的な文脈――たとえばウォルマートのレジ前で99セントでドングルを売る――であれば刑務所行きだ。DMCA1201条を商業的に違反した場合、初犯で50万ドルの罰金と5年の懲役刑だ。だから、確かに例外規定はあっても、ほとんどお飾りでしかない。

シンディ・コーン:
本当におかしなことですよね。自分でやるのはいいけど、それを手助けしたら違法になるというのは。どう考えてもおかしい。もちろん、デジタルミレニアム著作権法が1998年に可決されて以降、あるいはその議論が始まった1995年からと言ってもいいかもしれないけど、EFFは一貫してDMCAと戦い続けてきました。そうして、少しずつ法律を変え、あなたはそのことをたくさん書いてきた。この戦いは長期戦で、長く戦い続けるには、わずかな勝利でもその勝利を広く知らしめなければならない。その意味では、私たちが小さな勝利を誇張したことで、全体的なストーリーを誤解させてしまっているのかもしれないですね。ストーリー全体としては、私たちにはまだやるべきことが山ほどある。

コリイ・ドクトロウ:
そうだね。これを理解するには、DMCAだけじゃなく、いわゆるIP法(知的財産法)全般を考えるべきだよね。そのIP法がジェイの言う「ビジネスモデル侮辱罪」を構成しているわけだから。我々は、昔からIP(知的財産権)という言葉は使うべきではないという議論をしてきた。実際には財産ではないし、一連の政策を明確に表現するものでもない。商標、特許、著作権の話なのか、それとも放送権やデータベース権などを含めた話なのかが曖昧なんだ。でもビジネスの文脈では、IPは非常に具体的な意味を持っている。

投資家が創業者に「どんなIPを持っているのかね」と尋ねたなら、彼らが本当に聞きたいのは「競合他社、批判者、顧客の行動をコントロールできる法律はあるのか」ということだ。DMCAの3年おきの適用除外のように、たいていはそれぞれのIP法に抜け道がある。だが、あるIP法で開けられた穴に、別のIP法を被せることで、すべての例外を塞ぐことができてしまう。

つまり著作権には例外規定があるけれど、それを商標で無効化できる、というわけだ。Appleはスマートフォンの内部部品に目視できないほど小さいAppleのロゴを刻印している。そうすれば、極東でリファービッシュされて、独立系修理の部品として輸入されても、米国の税関に押収させられるからだ。Appleのロゴが刻印されている部品の品質が不明であり、Apple製品の信頼性を毀損するという理由で商標の毀損を主張する。著作権と特許では輸入を阻止できないが、IPには別のレイヤーがあり、そのレイヤーを正しいパターンで重ね合わせれば、公益のためにユーザや社会を保護するはずの例外を窒息させることができるんだ。まさに、そのパターンを知り尽くした小賢しい企業弁護士がそうしているようにね。

シンディ・コーン:
インターネットを修正する上で、一番のフラストレーションがまさにそれですね。一つの問題に取り組んで、なんとかその障害を乗り越えたと思ったら、また次の障害が立ちはだかる。ここで言及されていないものとしては、契約法がありますよね。利用規約やクリックラップライセンス契約がイノベーションや相互運用性を妨げている。なんだかゲームみたい。勇敢なプログラマーがあらゆる法的障害を乗り越えて、最後に勝利を収め、デバイスやツールのコントロール権を私たちに取り戻せるのか?みたいな。

コリイ・ドクトロウ:
そうだね。現在の反トラスト法訴訟がエキサイティングなのは、多くの企業がこれまで正当性を認めず、無視しようとしてきた義務を直視せざるを得なくなるからだ。監督当局が反トラスト法を正しく執行してくれればという前提ではあるけど、「ねぇ、君たちは自分たちのこれからの行動を制約するような和解を結ばなきゃならなくなってるんだよ? ある部門を切り離すなり、ある種の相互運用性を認めなきゃならないんだ」と交渉する余地が生まれている。

こうした一連の交渉はゲーム的でもあって。ターン制のね。我々にターンが来て、敵にもターンが来る。領地をただ広げるだけじゃダメで、優位に立てる拠点を獲得しなきゃならない。だから、我々はくじかれにくいさまざまな行動方針を駆使して、優位に立つ必要がある。メタクソ化の分析が役に立つのは、企業が我々を厚遇させた要因を特定するからなんだ。

時に、企業が我々を良く扱ってくれたのは経営者が誠実だったからじゃないか、なんて思ってしまうこともある。でも、その誠実な経営者が、企業自身にではなく、ユーザに価値をシフトさせるという方針について、どうやって株主を納得させたかも問われなければならない。その戦いで経営者の勝利を可能にした力は何だったのか。古き良きインターネットで企業にテクノロジーユーザを厚遇させた力を特定できれば、新しき良きインターネットのためにその力を構築できるはずだよね。

例えば、古き良きインターネットを支えたのは、テックワーカーの労働力のパラドックスだった。テックワーカーは給料が高く、気に食わない仕事を辞めたってすぐにもっといい条件の仕事が見けられた。テックワーカーはその優位性を持っていたがために、労働組合を必要としなかった。歴史的に見ても、テック業界の組合密度は非常に低かった。彼らはフォーマルな力を持っていなかったけど、個人として力を持っていたんだ。それによって、常に高い賃金と極めて快適な労働条件を享受できたわけだよね。

テック・キャンパスにはグルメシェフから遊び場、ジム、スポーツ施設、自転車まで、さまざまな設備が整っている。同時に、テックワーカーに使命感を抱かせるアピールもあった。つまり、労働力に対する非商業的で倫理的、規範的な要求もあったんだ。このアピールは、労働者に長時間労働を納得させるのに役立った。机の下で寝るよう要求する「極度にハードコア」なイーロン・マスクの要求もまさにそれだね。

ここに、もう1つのパラドックスがあった。使命感で労働者を動機づければ、彼らは使命感を感じるようになる。ボスから「お前たちが必死になって作ったこの製品、胆嚢の手術も受けず、母親の葬式に行かず、子どもの少年野球の決勝戦もキャンセルして作り上げたこの製品を、広告まみれにして改悪してくれるよな?」と言われても、労働者は「いや、私には使命がある。そのような要求をするのなら、この仕事をきっぱり辞めて別のもっといい仕事に就く」と言い返せた。

でも、メタクソ化を縛ってきた労働力の制約は失われていった。Googleが自社株を買い戻し、それから数ヶ月と経たずに12,000人の労働者を解雇した。自社株買いに費やした額は、解雇した労働者の27年分の賃金に相当する。残された労働者が「いや、この製品を劣化させろというのなら断固拒否します」と言おうものなら、「わかりました。それではバッジを返却して、とっとと出ていってください」というメッセージが返ってくるようになった。

EFFはこれまで、ユーザのことを本当に気にかけるテックワーカーたちと関わり続けてきた。その人たちこそ、我々のメンバーシップの中核だった。時折現れる内部告発者たち。時に彼らは我々のクライアントでもあった。そして我々がずっと言ってきたのは、「企業がユーザの味方をするなら、私たちは企業の味方になる」だった。もっと掘り下げて言うなら、企業がユーザの味方になったのは、本当にユーザの味方に立つ重要な従業員を多数抱えていたからでもあったんだ。その彼らが、企業内部の力学をユーザの側に傾けてきた。

そしていま、かつてないほどに労働組合が結成されている。組合の密度で言えばまだまだだけど、キミや私、シンディが書いたように、テクノロジーの権利は労働者の権利となりうる。ボスウェア(訳注:職場監視ツール)は、労働者の権利を損なうおそれがある。だから、ボスウェアを打ち負かす相互運用可能なツールは、労働者の職場での自主性を取り戻す助けになるだろう。これは彼らにとっても良いことだが、彼らが気にかけてきたインターネットユーザにとっても望ましいことだ。

シンディ・コーン:
そうそう。EFFに参加して間もない頃、AdobeがFBIにディミトリ・スクリャロフをDEFCONで逮捕させましたよね。Adobeの電子書籍を他のフォーマットやプラットフォームにコピー、ムーブできるソフトウェアを開発したためでした。EFFの幹部数人がAdobeのオフィスに向かい、Adobe幹部に取り下げるよう求めました(訳注:参考記事)。

そのときの光景は忘れられません。Adobeの建物の外には抗議するハッカーたちが大勢集まっていて、それをAdobeの従業員が建物の窓から見ている。私たちはその瞬間、勝利を確信しました。アドビは引き下がらざるを得ない。内部の従業員たちは「どうして俺たちがFBIにハッカーを引き渡す側なんだ?」とささやきあっていたのですから。

最近、Appleがクライアントサイドスキャンの導入を発表したときにも、Apple社内で同じようなことが起こっていました。Appleで働くのテックワーカーたちと話していると、ほとんどの従業員がエンドツーエンド暗号化の破壊には賛成していない。そのうえで、私たちはApple本社のOne Infinite Loopの上空に(訳注:抗議のメッセージを掲げた)飛行機を飛ばし、この問題への注目を集めました。飛行機のおかげかどうかはわかりませんが、Appleは社内外からの圧力に屈して、程なく方針を撤回しました。

いま、テックワーカーたちは無力感を抱いていると思います。だからこそ、こうした話を伝え続け、彼らには力があることを思い出させなければならない。テックワーカーたちをコントロールしたいボスは、まずはじめにテックワーカーが一人ぼっちで無力だと思い込ませようとするのですから。テクノロジーが正しく使われる世界を目指すうえで、私たちはユーザやユーザが得るものだけでなく、労働者やクリエイター、ハッカー、イノベーターが得るものについても語っています。つまり、企業が選んだものに「ノー」と言える、それより優れたものに「イエス」という力。だからこそ、このようなストーリーを伝え、対話を続けていこうと思っているんです。

ジェイソン・ケリー:
ここで少し休憩を挟んで、スポンサーに感謝を伝えましょう。「How to Fix the Internet」は、アルフレッド・P・スローン財団の科学技術の一般理解促進プログラムの支援を受けています。ますます技術化する世界への理解を深めることで、生活を豊かにし、科学者、エンジニア、数学者の複雑な人間性を描き出しています。

さて、それではコリイ・ドクトロウとの会話に戻りましょう。コリイは執筆や講演でよく知られていますが、彼が筋金入りのアクティビストだということをご存じない方もいらっしゃるかもしれない。彼とはEFFのアクティビズムチームで密接に仕事してますが、時折、彼が目を真っ赤にして、持てる全ての力を戦いに投入するのを目の当たりにしてきました。そこで、彼のアクティビズムの側面について、何がそれを駆り立てているのかについて、もう少し話してもらいましょう。

***

コリイ・ドクトロウ:
ある時期、EFFから逃げ出そうとしたことがある。「もうダメだ、執筆とアクティビズムは両立できない。一つに絞らなきゃな」と思った。それで数年間は執筆だけに専念したんだけど、世界はどんどん間違った方に進んでいって、自分はそれを解決しようとすることから距離を置いてしまっていることに耐えられなくなった。それで思ったんだ。無力さと絶望を感じながら傍観するくらいなら、知的にも感情的にも、過労のほうが遥かにマシだ、と。

シンディが言うように、社会運動は長期戦だ。我々は、自分たちには決して収穫できない作物の種を蒔いている。私が取り組んでいることも、私が現場を退いてしばらく経ってようやく勝利をもぎ取れるものなのかもしれない。そのことを理解し、そうなることを信じ、受け入れなきゃいけない。その勝利は、今はまだ高校も卒業してない人たち、EFFや我々のアライで働くにはまだ早い人たちのためのものなんだ。

だから、例えばブラウザDRMの標準化を進めるW3Cや、著作権フィルターの義務化を進めようとする欧州連合なんかへの怒りに震えるとき、こんなふうに考えている。「これは勝てない戦いかもしれない。でも、戦わなければならない戦いだ。負けるわけにはいかないほどの問題だ。たとえ今回負けたとしても、未来の勝利に向けた基盤を築けるはずだ。このポリシーがこのように決まったことで、怒れる人たちが生み出されたはずだ。将来、再び戦いの機会が訪れたとき、その彼らが立ち上がるだろう」と。

我々は、良いもの、安定したもの、有益なものを生み出す側に立って戦っている。そして我々が戦っている相手は、著作権フィルターの義務化であれ、クライアントサイドスキャンであれ、エンドツーエンド暗号化の破壊であれ、下流に甚大な害をもたらすものであることを理解してもらう。エンドツーエンド暗号化をめぐる戦いに敗れれば、その規則が制定された国の無数の人々の安全が失われることになる。まったく嘆かわしいことで、こうしたポリシーの立案者が恥を知るべきだ。将来、誰かがとてつもなく恐ろしい危害を被ることになるのだから。

我々がなすべきことは、戦いに敗れ、危害が現実のものとなったときに、「私たちが警告したとおりになった」と言うだけでなく、「こうすれば解決できる。危機を好機に変え、変化を加速させるために私たちにできること、それがこれだ」という提案を準備し続けることなんだ。

ジェイソン・ケリー:
うん、そのとおりだ。このポッドキャストのゲストの多くがブルーリボンキャンペーンについて語ってくれることを、とても嬉しく思っています。この戦いは私たちの勝利に終わったけど、それは何年も前から、おそらく意図せずに、今日まで続く連帯を築き上げてきたからこその勝利だったんだと思う。勝利と敗北を繰り返しながら基盤を築いていけば、いつかもっと大きな成果に到達できると信じられるのは、とても素晴らしいことだ。

シンディ・コーン:
より良い世界を構築しようとすること、つまり良き人間であろうとすることにも楽しさがあるんでしょうね。力強い何かがそこにはあると思う。戦いは長く、厳しい。私は常々「良き人間たちはより良いパーティを開く」と言ってきた。ある面では、怒りをたぎらせ、目を真っ赤にして、悪いことを食い止めるために戦わなければならない。でも別の面では、共に戦う仲間は一緒にいて楽しい人たちなんですよね。だから、アクティビストにはその両方の面があると伝えていきたい。両方とも大切なんですよね。楽しさ――勝ったときの喜び、時に負けたときのブラックユーモア――は、怒りと同じくらい重要。怒りだけで長期戦を戦い抜くことはできませんから。

コリイ・ドクトロウ:
Frameworkという会社のラップトップを持っているんだけど、これは本当に素晴らしいんだ。ユーザが自分で修理できるラップトップで、ドライバーも付いてきて、私のような不器用でも自分で修理できるんだ。それと、このラップトップをしょっちゅう落としちゃうもんだから、底のネジが緩んできた。それで連絡したら、「これは設計時に想定されていなかった問題ですね。無料で新しい交換部品を送付しますので、不良品を返送してください。分析して今後の製品に活かしたいと思います」と言ってきた。

そんなわけで先週末、ラップトップの底面カバーを交換した。何が言いたいかというと、新しいステッカーを貼れる面ができたってことだ。ちょうどsave.orgの「非売品(売り物ではないものもある)」ステッカーを見つけてね。あれは亡くなった大切な仲間、エリオットと一緒にやった素晴らしいキャンペーンだった。そのステッカーを貼るのはとても気分が良かった。私にとっての勝利の証みたいなものだからね。

シンディ・コーン:
キャンペーンをご存じない方のために説明すると、実はコロナ禍の初期に、プライベートエクイティが.orgドメインの管理団体を買収する動きがあったんです。もちろんEFF.orgにも影響しますが、他のあらゆる非営利団体にも影響を及ぼす大問題でした。私たちは非営利団体をはじめとする大規模な連合を結成し、この取引を阻止した。それがsave.orgでした。コリイが言ったように、私たちの親愛なる友人エリオットは当時アクティビズムディレクターで、save.orgが彼の最後のキャンペーンでした。そして、私たちは勝利し、.orgを救った。その戦いは今も続いています。.orgの世界はすべて完璧とは言えないけれど、私たちはそれを食い止めた。ICANN会合の前には、とてもファンキーで、ナードな抗議活動にたくさんの人たちが集まりましたね。

コリイ・ドクトロウ:
トップレベルドメインは相変わらずヒドい有り様だね。ようするに、状況は何も変わっちゃいない。そのキャンペーンの素晴らしかったのは、勝利への道筋がなかったことだった。法的な根拠がなかった。その組織は少なくとも表面的には世論や利害関係者の意見から完全に切り離された、独立したバブルの中で運営されていて、やりたい放題だったんだ。だから我々はできることは何だって試してみた。あらゆる戦略を試みた結果、累積的に効果を発揮しだして、ついには奇妙なことが起こりだした。例えば、当時カリフォルニア州司法長官だったハビエル・ベセラが「まあ、キミたちはカリフォルニアの非営利団体だ。これについて調べてみよう」と言い出した。

突然、みんなが「ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ」と言い出した。もちろん、ベセラが救ってくれたわけじゃない。我々が政治的圧力を高めたことで、お忙しいはずのカリフォルニア州司法長官がギョッとして「ちょっと待って、何が起こっているんだ?」と言い出すまでになったんだ。

このような戦いはこれまでに何度もあった。例えば国連の放送条約(放送機関の保護に関する条約)もそうだった。当時同僚だったフレッド・フォン・ローマンが「米国でなら憲法上の権利があるから訴訟の仕方は分かる。だが国連はNGOにアジェンダを設定させてはくれないし、訴訟を起こすこともできない。彼らに時間を割かせることはできない」と言っていたのを覚えている。つまり、手札にはろくなカードが配られてはいなかったんだ。だが、我々は世界中のアクティビストとデジタルで繋がり、ブロードキャスト・フラグを阻止できた。デジタルツールの柔軟性を存分に活用し、あらゆる局面で臨機応変に即興で対応できるスタイルを確立したんだ。用意していた資料が盗まれ、なぜかトイレに隠されていたなんてシュールなこともあった(訳注:当時の記事)。本当に型破りな戦いだった。

完全に不利な状況下で、世界で最も強力な企業を打ち負かした。これもアクティビストの喜びだ。不利な状況で戦いに挑む。勝てるかどうか分からない。だが、どこかに敵がまったく想定していない斬新な戦術が潜んでいて、予想外の大勝利を収められるかもしれない。このことは、楽観主義と悲観主義について尋ねられたときに、私がよく話す変化の理論と関連しているかもしれない。

私は楽観主義も悲観主義も好きではない。どちらも一種の宿命論に過ぎない。楽観主義であろうと悲観主義であろうと、その立場にたてば、出来事の結果は人間の行動と無関係だということになる。物事が悪くなるのか良くなるのかはわからないが、それをただ座って傍観している。いずれにせよやってくる。未来は線路を走る電車のように、どこに行くかは最初から決まっている、という考え方だ。

しかし、どこかに行こうとしているが、そこにたどり着く術が分からないとき、より良い未来に向かって勾配を登っていこうとするアイデア、それが希望なんだと思う。今いる場所から見える範囲であろうと、その高みを目指して登っていけば、今いる場所からは見えなかった新しい可能性が見えるようになるかもしれない。何かをすることで、状況が変わり、自分の置かれた位置が変わり、他にできることが見えてくるかもしれない。

シンディ・コーン:
素晴らしい言葉で締めくくることができました。コリイ、時間を割いて私たちと話してくれてありがとう。私たちはこれからもその道を歩み続け、より良いインターネットを推進していくための小さな可能性や突破口を探し続けていきます。私たちはみんな、それだけの価値があるのだから。

ジェイソン・ケリー:
ありがとう、コリイ。キミと話せて本当に楽しかった。

コリイ・ドクトロウ:
どういたしまして。

ジェイソン・ケリー:
私は他の人よりもコリイと話す機会が多いんだけど、それでも彼と話せるといつも嬉しく思う。シンディ、今日の感想を聞かせてもらえますか?

シンディ・コーン:
専門的になりがちな敵対的相互運用性や競争的互換性のような概念を、過去に起こった様々な出来事を具体的に挙げて説明してくれたのが良かったですね。しかも遠い過去の話ではなく、最近の出来事を挙げて。つまり、より良い未来を構築することは、すでに別の状況で使われてきたツールを、プラットフォームのメタクソ化の世界に適用すること。抽象的で曖昧な何かではなくて、具体的で実現可能なものとしてすでに存在している。「私たちが火星に行けるようになったら、問題はすべて解決する」なんてフワッとしたものじゃない。

ジェイソン・ケリー:
彼は過去の成功から学べることを伝えるのが本当にうまいですよね。この分野は、失敗したことから学ぼうとしがちだから、本当に珍しいタイプですよね。私は彼がどうしてアクティビストとして戻ってきたのかを聞けたのが良かった。執筆とアクティビズムの両立は大変すぎるから、どちらかに絞らないといけないと彼は考えていた。でも実際には、起こっていることが気になりすぎて、どちらかだけに絞ることなんてできなかった。彼が「目が赤くなる」と表現していたのを聞いて、ゲイ・ゴードン=バーンと修理する権利について話していた時のことを思い出しました。彼女は引退していましたが、何度も引き戻されて、ついに修理する権利のために全力を尽くすことを決意した。映画『ゴッドファーザー』に「引き戻される」という有名なセリフがありますが、コリイのような人たちはまさにそうなんでしょうね。

シンディ・コーン:
そうですね、私もゲイの話を思い出しました。もちろん、私はその反対側にいました。コリイを何度も呼び戻す側の一人だったんです。

ジェイソン・ケリー:
つまり、あなたが彼を引き戻した。

シンディ・コーン:
いえ、彼自身が戻ってきたんだと思います。私はただそこにいただけで。でも、誰かの情熱が高まっていくのを見て、その人が戦いに戻らざるを得なくなるのを見るのは面白いですね。ゲイも同じような軌跡を語っていました。時には、何かがあまりにも気になって、「よし、この戦いに加わって、物事を良くしなければ」と決心するんです。

ジェイソン・ケリー:
これを聴いている人たちも同じような気持ちになってくれることを願っています。私たちのサポーターの多くはすでにそうなってると思いますけど。

このエピソードの「How to Fix the Internet」にご参加いただき、ありがとうございました。フィードバックや提案があれば、ぜひ聞かせてください。EFF.org/podcastにアクセスして、「リスナーフィードバック」をクリックしてください。アクセスしてくれたのなら、せっかくですから、EFFのメンバーになることを検討してみてはいかがでしょうか。グッズもゲットできます。ナイスなTシャツもあります。あるいは、今週、そして毎週のデジタルライツの動向を知るだけでもいいですよ。

このポッドキャストはクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンスの下でライセンスされており、クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植ライセンスの下でライセンスされた音楽を含んでいます。このエピソードでは、M. Wickの「Xena’s Kiss / Madea’s Kiss」、J. Lang featuring Mr. Yesterdayの「Probably Shouldn’t」、Zepp Herm featuring Snowflakeの「Come Inside」、J. Lang featuring Airtoneの「Drops of H2O (The Filtered Water Treatment)」をお聴きいただきました。テーマ音楽はBeatmowerのNat KeefeとReed Mathisによるものです。「How to Fix the Internet」はアルフレッド・P・スローン財団の科学技術の一般理解促進プログラムにサポートされています。また参加してくださることを願っています。ジェイソン・ケリーでした。

シンディ・コーン:
そして、シンディ・コーンでした。

Podcast Episode: Fighting Enshittification | Electronic Frontier Foundation

Author: Josh Richman / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: July 2, 2024
Translation: heatwave_p2p