以下の文章は、電子フロンティア財団(EFF)の「EFF Calls For Release of Alexey Soldatov, “Father of the Russian Internet”」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

「ロシアのインターネットの父」として知られるアレクセイ・ソルダトフが、IPアドレスの「不正使用」の容疑で2年の実刑判決を受けたことを知り、我々は深く憂慮している。この判決は7月、モスクワの裁判所で下された。

ソルダトフは1990年、ソ連と世界のインターネットを初めて結ぶRelcomコンピューターネットワークの立ち上げを主導した。また、2008年~2010年には、ロシアの通信副大臣も務めた。

今回の有罪判決は、外国組織へのIPアドレス譲渡に絡む容疑によるものだが、ソルダトフ本人と弁護団は一貫して無実を主張している。家族や多くの支持者、そしてNetzpolitikの分析によれば、この告発の背景には政治的思惑があるいう。ソルダトフの元ビジネスパートナー、エフゲニー・アンチポフにも18か月の実刑が言い渡されている。

元々核科学者だったソルダトフは、ソ連時代にクルチャトフ原子力研究所で研鑽を積んだ後、1990年代初頭から、ロシアのIPアドレスの管理と割り当てを担うRussian Institute for Public Networks(RIPN)を設立した。RIPNが構築したRelcom(RELiable COMmunication)ネットワークは、1991年のKGB主導のクーデター時にも、従来メディアとは異なり、検閲を受けることはなかった。息子でジャーナリストのアンドレイ・ソルダトフは、父についてこう回想している。「父は、どんな状況下でも通信回線を開放し続けることを主張した」。

ソ連崩壊後、ソルダトフはロシア初のISPとしてRelcomを運営し、その後もロシアのインターネットの技術基盤を支える組織の立ち上げに尽力した功績から「RuNet(ロシア語圏インターネットの通称)の父」と呼ばれるようになった。ロシアの通信副大臣在任中には、ICANNにドメイン名でのキリル文字使用を認めさせる立役者となり、さらにロシアのインターネットを世界から隔離しようとする動きにも断固として反対の姿勢を貫いた。

EFFは、今回の起訴は政治的動機に基づくものであることを危惧している。実際、複数の報道がその可能性を指摘している。前立腺がんと心臓病を抱えるソルダトフにとって、この判決は文字通り命にかかわるものだ。

息子のアンドレイ・ソルダトフはこう嘆いている。「国の近代化とグローバル化に貢献した人物の自由を奪うとは、報復的で日に日に暴力性を増すロシア国家の本質を如実に物語っている」。

こうした懸念を踏まえ、EFFはソルダトフの即時釈放を強く要求する。

EFF Calls For Release of Alexey Soldatov, “Father of the Russian Internet” | Electronic Frontier Foundation

Author: Electronic Frontier Foundation (CC BY 3.0 US)
Publication Date: September 4, 2024
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: Digital Rights