以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「The Post-American Internet」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

12月28日、私はドイツ・ハンブルクで開催された39C3(第39回カオス・コミュニケーション・コングレス)にて、「ポスト・アメリカの、メタクソ化に抗うインターネット」と題した講演を行った。以下はその書き起こしである。


ご存じの方も多いだろうが、私は電子フロンティア財団(EFF)で活動家をしている。今年でちょうど25年目を迎える。偏った見方だと言われるかもしれないが、デジタルライツの擁護において、地球上でEFFに勝る団体はないと私は確信している。

EFFの活動家として、この四半世紀にわたり、私は「汎用コンピューティング戦争」と呼ぶ闘いに身を投じてきた。

14年前の28C3に参加された方は、まさにそのタイトルの講演を聞いたかもしれない。EFFに入った初日から、私はずっとこの塹壕の中にいる。最初の仕事は、ロサンゼルスに飛んで「ブロードキャスト・プロテクション・ディスカッション・グループ」なるものの設立会合に乗り込むことだった。テック企業、メディア企業、放送局、ケーブル事業者が結んだ邪悪な同盟だ。

彼らが集まったのは、途方もなく腐敗した米国議員、ビリー・タウジンが新たな規制を約束したからだ。この団体が定めた仕様に基づくバックドアを組み込んだものでなければ、デジタルコンピュータの製造・販売を禁じるというルールだった。企業の株主にとって好ましくない動作をコンピュータに実行できなくする技術的措置の仕様である。

このルールは「ブロードキャスト・フラグ」と呼ばれ、実際に米国の通信規制当局である連邦通信委員会(FCC)を通過した。そこで我々はFCCを連邦裁判所に提訴し、このルールを覆した。

確かに小競り合いには勝った。だが諸君、悪い知らせがある。驚きはしないだろうが。あの勝利にもかかわらず、我々はこの25年間、汎用コンピュータをめぐる戦争で負け続けてきたのだ。

だからこそ、今日ハンブルクに来た。何十年も施錠されたドアに体当たりし続けてきた末に、ようやくそのドアが開いたからだ。新しき、良きインターネットへと通じるドア。かつての良きインターネットが持っていた技術的自己決定権と、一般の友人たちも参加できるようにしたWeb 2.0の使いやすさの両方を実現するインターネット。そのドアの鍵が開いたのだ。

今日、そのドアはわずかに開いている。わずかにだが開いているのだ!

そして最も奇妙なことに、その鍵を開けたのはドナルド・トランプその人だ。

もちろん、あえてそうしたのではない! だがトランプの節操のない好戦性のおかげで、我々は「ポスト・アメリカのインターネット」の入り口に立つことができた。21世紀の新たなデジタル神経系。米国の要求や優先事項を気にすることなく構築できるインターネットだ。

誤解のないように言っておくが、私はトランプやその政策を喜んでいるわけではない。だが、友人のジョーイ・ダヴィラが好んで言うように、「人生がSARSをくれたなら、サルサパリラを作ればいい」。トランプが米国と世界に解き放った恐怖を味わった上に、その残骸から何も拾い上げないのだけは、何としても避けたい。

今日話したいのは、まさにそれだ。トランプの混沌からもぎ取ることができる、ポスト・アメリカのインターネットについて。

ポスト・アメリカのインターネットが可能になったのは、トランプが新たな連携相手を刺激し、我々の側に引き入れたからだ。政治において、連携こそがすべてである。ある集団が長年達成できなかった目標をいきなり実現し始めたら、新たな連携相手を見つけたと考えてまず間違いない。元からの勢力とすべて同じことを望んでいるわけではないが、十分に同じことを望む新たな味方だ。

トランプ自身もそうやって生まれた。億万長者、白人至上主義者、キリスト教的偏見の持ち主、権威主義者、陰謀論者、帝国主義者、そして自称「リバタリアン」の連合体だ。この最後のグループは減税への執着があまりにひどく、5セント減税を約束してくれるならムッソリーニにだって投票するような連中である。

そして私が興奮しているのは、我々にも汎用コンピュータをめぐる戦争の新たな連合が生まれたことだ。何十年も最前線で闘い続けてきたデジタルライツ活動家に加え、米国のビッグテックが独占する数兆ドルを自国の経済のための数十億ドルに転換したい人々、そしてデジタル主権について至極もっともな懸念を抱く国家安全保障タカ派までもが参加する連合だ。

私の主張はこうだ。この連合は止められない。これは朗報だ! 数十年ぶりに、勝利が手の届くところにある。

説明しよう。14年前、私はこの場に立ち、「汎用コンピューティング戦争」について語った。それは私がつけたキャッチーな名前で、議会で使われる退屈な名前は「迂回禁止」(アンチ・サーカムヴェンション)という。

迂回禁止法のもとでは、メーカーが承認していない限り、デジタル製品やサービスの機能を改変することは犯罪である。決定的に重要なのは、その改変が他のいかなる法律にも違反していなくても犯罪になるという点だ。

迂回禁止法は米国に端を発する。1998年デジタルミレニアム著作権法(DMCA)第1201条は、著作物の「アクセスコントロール」を回避した場合、初犯で5年の懲役刑と50万ドルの罰金を科す重罪と定めている。

つまり実際には、アプリケーションコードやファームウェアの改変を防ぐ仕組みがどれほど脆弱なものであっても、それをデバイスやサービスに組み込みさえすれば、そのコードやファームウェアの改変を投獄される可能性のある重罪とすることができる。また、そのアクセスコントロールの回避方法に関する情報の開示も重罪であり、デバイスやシステムへのアクセス方法を説明しただけでも、ペネトレーションテスターは刑事責任を問われかねない。

迂回禁止法のもとでは、あらゆるメーカーがたやすく自社製品を立入禁止区域に変えられる。その欠陥を調査する行為が犯罪になり、欠陥を報告する行為が犯罪になり、欠陥を修正する行為が犯罪になるのだ。

ジェイ・フリーマンがこの法律を「ビジネスモデル重侮辱罪」と呼んだのは的確だ。迂回禁止法は1998年、ビル・クリントンがDMCAに署名して法制化された。だが、あの愚かな米国人めと笑う前に知ってほしい。世界のあらゆる国が、その後の数年間でまったく同じような法律を成立させているのだ。EUでは、2001年EU著作権指令の第6条として導入された。

米国がこうした法律を制定するのは、歪んだ意味では理解できる。何しろ世界のテック大国であり、世界最大かつ最強のテック企業の本拠地なのだから。メーカーの許可なくデジタル製品を改変することを違法にすれば、米国の株式市場で最も価値のある企業のレント(利権収入)抽出力が高まる。

だが、なぜ欧州がこんな法律を成立しなきゃならなかったのか? 欧州はテックの大量輸入国だ。ユーザのデータとカネを盗みたいテック企業に法的保護を与えれば、欧州から米国へ一方的に価値が移転することになる。なぜEUがそんなことをするのか?

では、他の国々がどのような状況で迂回禁止法を制定するに至ったかを話そう。パターンが見えてくるかもしれない。

オーストラリアは、米豪自由貿易協定を通じて迂回禁止法を導入した。この協定は、オーストラリアに迂回禁止法の制定を義務づけている。

カナダとメキシコは、米国・メキシコ・カナダ自由貿易協定を通じて導入した。この協定は両国に迂回禁止法の制定を義務づけている。

チリなどのアンデス諸国は、米国との二国間自由貿易協定を通じて迂回禁止法を導入した。これらの協定は迂回禁止法の制定を義務づけている。

そして中米諸国は、CAFTA(中米自由貿易協定)を通じて迂回禁止法を導入した。この米国との協定もまた、迂回禁止法の制定を義務づけている。

もうパターンはお分かりだろう。米国通商代表部は、すべての貿易相手国に迂回禁止法の採用を強制し、自国民のデータとカネを米国企業が吸い上げるのを容易にしてきた。だが当然、次の疑問が浮かぶ。なぜ世界の他の国々は、自国民のカネとデータを米国に盗ませ、この窃取を防ぐ相互運用可能な製品を国内テックセクターが作ることを阻止するのに同意したのか?

この謎を解くエピソードがある。ヴィクトル・オルバンが台頭する以前の何年も前、私はブダペストの中央欧州大学で、政治学の夏期博士課程にゲスト講師として参加していた。ある夏、迂回禁止法について講義した後、1人の学生が近づいてきた。

その人物は、CAFTA交渉当時、中米のある国の情報大臣を務めていた。ある日、CAFTA交渉のテーブルから貿易交渉官が電話をかけてきた。交渉官はこう言った。「どんなことがあっても米国に迂回禁止法を渡すなとおっしゃいましたね。ですが先方は、迂回禁止を認めなければコーヒーを買わないと言っています。申し訳ありませんが、米国のコーヒー市場を失うわけにはいきません。経済が崩壊してしまいます。ですから迂回禁止を認めます。本当に申し訳ありません」

それだけだ。世界中の政府が米国のビッグテック企業に自国民のプライベートデータと虎の子のカネを好き放題にさせた理由は、これなのだ。

そうして、関税を回避した。さて、ご存じかもしれないが、今やその関税がかけられている!

つまり、言うことを聞かなければ家を燃やすと脅されて、それでも家を燃やされたのなら、もう言うことを聞く必要はない。というわけで……解放の日、おめでとう?

これまでのところ、世界のすべての国がトランプ関税に対して2つの反応のどちらかを示している。1つ目は「トランプの要求をすべて呑み(グリーンランドは除く)、怒りが収まることを祈る」。まったくうまくいくはずがない。トランプに1インチ与えれば、1マイル奪われる。グリーンランドだって奪おうとする。屈服は失敗に終わる。

だがもう1つの戦術、報復関税も同様だ。カナダはまさにそれをやった(最良の米国人がそうであるように、私もカナダ人だ)。我々がやった最善の手は、米国からの輸入品に関税をかけ、自分たちが買うモノをもっと高くすることだった。米国を罰す方法としては見当違いもいいところだ! 自分の顔を全力で殴り、階下の住人が「痛い!」と言ってくれることを祈るようなものなのだから。

しかも無差別にだ。母音で始まり母音で終わる州のかわいそうな農家の大豆に関税をかけて、何になるのか。あの農家がカナダに何か悪いことをしたというのか。

だが、関税に対する第3の反応がある。まだ誰も試していないが、試してくれと言わんばかりにそこにある。迂回禁止法を廃止するのはどうだろう?

迂回禁止法を廃止した国に拠点を置く技術者や投資家であれば、米国の欠陥テック製品に接続して「脱メタクソ化」を実現する製品を事業化できる。それらの製品を所有・使用する人々が、たとえ企業の株主が怒ろうとも、自分にとって有益な使い方をできるようにする製品だ。

ジョンディアのトラクターを考えてみよう。農家のジョンディア製トラクターが故障すると、故障箇所の部品やアセンブリを交換して自分で修理することになる。だがトラクターは新しい部品を認識せず、再び動き出すことを拒否する。農家が200ドル程度を払ってジョンディアの公認修理業者を出張させ、その業者がトラクターのコンソールにアンロックコードを入力して部品を初期化し、トラクターの中央コンピューティングユニットとペアリングするまで、トラクターは動かないのだ。

このアクティベーション手順を回避するようトラクターを改造すれば、迂回禁止法に違反する。つまり世界中の農家がこのぼったくりのガラクタに縛りつけられている。自国の政府が、この米国製品の部品ペアリングチェックを無効化するトラクター改造ツールを作った者を投獄するからだ。

では、もしカナダが迂回禁止法であるBill C-11(2012年著作権近代化法)を廃止したらどうなるか? たとえばHoneybeeのような、トラクターのフロントエンドやアタッチメントを製造する企業が、ウォータールー大学の優秀なコンピュータサイエンスの卒業生を雇い、ジョンディアトラクターのファームウェアのジェイルブレイクに取り組ませ、それを世界中に提供したら? インターネット接続と支払い手段を持つ誰にでも販売できる。あの大豆に関税をかけられているかわいそうな米国の農家にさえ。

ここにどれほどの金額が眠っているか、伝えきれないほどだ。1つだけ例を挙げよう。AppleのApp Storeだ。Appleはすべてのアプリベンダーに自社の決済プロセッサの使用を強制し、アプリ内で使われる1ユーロごとに30パーセントの手数料を徴収している。

30パーセントだ! これはあまりにも儲かるビジネスなので、Appleはここから年間1,000億ドルを稼いでいる。EUが著作権指令の第6条を廃止すれば、フィンランドの優秀なギーク達がAppleのブートローダーをリバースエンジニアリングし、iPhoneをジェイルブレイクして代替アプリストアを使えるようにするハードウェアドングルを作り、そのドングルと、アプリストアを運営するためのインフラを、Appleとの競争に参入したい世界中の誰にでも販売できる。

こうした競合他社は、Etsyのすべてのクラフト作家、Patreonのすべてのパフォーマー、すべてのオンラインニュースメディア、すべてのゲーム開発者、すべてのメディアストアに90%の割引を提示できる。決済手数料90%オフを提示し、それでも年間100億ドルの利益を上げられるのだ。

フィンランドから第二のNokiaが生まれることはないだろう。Nokiaのビジネスは大変だ。ハードウェアを作らなければならず、コストもリスクも高い。だがEUがジェイルブレイクを合法化すれば、ハードウェアの製造と展開にかかるすべてのコストとリスクをAppleが引き受けなければならない一方で、フィンランドのギーク達はAppleが世界経済から吸い上げる1,000億ドルの上前をはねることができる。それも嫌悪すべきぼったくりのレント・シーキングに対する行為としてだ。

ジェフ・ベゾスが出版社に言ったように、「あなたのマージンは私のチャンスだ」。こういう連中の決まり文句は「ディスラプション[破壊的創造]は汝に、されど我には及ばず」だ。彼らが我々にやれば、それは進歩。我々が彼らにやれば、それは海賊行為。海賊は誰もが提督になりたがるものだ。

そんなもん知ったことか。素早く動いてティム・クックの帝国を壊せ。速く動いて王様を壊せ!

おかしな話だ。25年間、米国通商代表部にコテンパンにされてきた(弁護するなら、公平な戦いではなかった)。米国通商代表部が全世界を、米国とそのテック企業に偏った利益をもたらす貿易体制に縛りつけ、世界のデータと経済を自由に略奪させてきた、その手腕には渋々ながら感嘆していた。だからこそ、トランプがこのグローバルな貿易体制を迅速かつ断固として解体し、世界が米国の資本家階級の利益を守るために自国の事情を調整し続ける根拠を破壊するのを見るのは、実に見物だった。

もちろん、私が選んだ道ではない。こんな突破口よりも、トランプがいない方がずっとよかった。だがトランプ本人が主張するのなら、このとてつもないオウンゴールを受け入れよう。加速主義者になったとは言わないが、今この時点で、加速主義者でないとも正確には言えない。

さて、世界各国の政府がAppleにApp Storeを開放させようとして、完全に失敗してきたことはご存じかもしれない。EUがデジタル市場法に基づく執行命令をAppleに突きつけた際、Appleはサードパーティのアプリストアを許可すると回答したが、それらのストアが販売できるのはAppleが承認したアプリだけとした。

そしてそれらのストアは自前の決済プロセッサを使うこともできるが、Appleが法外なジャンク手数料を課すため、自前のシステムで決済処理する方がかえって割高になる。さらに、ユーザのiPhoneが21日間EU域外にあったとAppleが判断した場合、そのユーザの全データとアプリをリモートで削除するという。

これでは規制を満たさないとEUが説明したところ、AppleはEUから撤退すると脅した。全員が笑い終わった後、Appleは10件以上のでたらめな異議申し立てを提出し、GoogleやMetaがGDPRに対してやったように、10年間法廷で争って引き延ばそうとしている。

EUがAppleにiOSプラットフォームを代替アプリストアや決済手段に開放させられるかは不透明だ。だがEUが100%確実に、いつでもできることが1つある。欧州の企業が欧州の商人、パフォーマー、製造者、ニュースメディア、ゲーム開発者、クリエイティブワーカーをAppleのぼったくりから守るべくiPhoneをジェイルブレイクしたとしても、Appleが欧州の裁判所を使って彼らを潰すのを許さないと決めることだ。

EUがすべきことは、著作権指令の第6条を廃止し、Appleが世界のデジタル経済に課す年間1,000億ドルのApple税を守るために欧州の司法制度を動員する特権を剥奪することだ。iPhoneを確実にジェイルブレイクする方法を見つけたEU企業には、世界中に顧客が生まれる。米国を含めてだ。米国では、Appleがスマートフォンで実行できるアプリに拒否権を行使して支出の30%を吸い上げるだけでなく、プラットフォームの支配力を利用して、Appleの顧客をトランプのファシスト的支配から守るアプリまで排除している。

昨年10月、AppleはApp Storeから「ICE Block」アプリを削除した。これは、覆面をしたICE(移民関税執行局)の拉致部隊が近隣で人々を路上からさらい、海外の強制収容所に送り込もうとしている場合にユーザに警告するアプリだ。Appleは社内でICEの拉致犯を「保護対象クラス」に分類し、ICE Blockがこの哀れで虐げられたICEの手先の権利を侵害していると宣言した。

ICEの手先と言えば、今年、ICEの急襲部隊に追われて自分や子供が収容所に入れられる寸前で米国を脱出した、腕のいい技術者が大勢いる。こうした腕利きのハッカーたちは今や世界中で暮らしており、$TRUMPコインをどれだけ買ったかではなく、製品がどれだけ優れているかで成否が決まるビジネスに出資したい投資家たちに支えられている。

Appleのマージンは彼らにとってのチャンスになり得るのだ。

ジェイルブレイクの合法化、米国で最も収益性の高い企業群の最高利益率ビジネスへの襲撃は、報復関税よりもはるかに優れたトランプ関税への対抗策だ。

まず、これは標的を絞った対応である。ビッグテックのマージンを狙えば、それはトランプの就任演説の壇上で背後の席に座るために100万ドルずつ支払ったCEOたちのビジネスへの正面攻撃となる。

ビッグテックのマージンへの襲撃は、米国民に対する攻撃ではないし、ビッグテックにぼったくられている米国の中小企業に対する攻撃でもない。日常的に米国人世界中のすべての人もカモにしている企業への襲撃だ。ぼったくり企業を犠牲にして、世界中の人々をより豊かにする方法である。

欠陥だらけのチャットボットを出荷して1兆ドル近い損失を出しているセクターが、いつかGPUの使い道を――プラグを差し込んだ瞬間から赤字を垂れ流し始めない使い道を――見つけるだろうと期待して、AIデータセンターの建設に何千億ドルもつぎ込むのとは比べものにならない。

というわけで、汎用コンピューティング戦争における我々の新たな味方を紹介しよう。ビッグテックのマージンを襲撃して何十億ドルも稼ぎたい企業や技術者。そして自国を「脱メタクソ化国家」にしたい政策立案者たち。他国からジェイルブレイクツールを買って自国民のカネとプライバシーを守るだけでなく、そのプライバシーと懐を守るテクノロジーを世界に売って何十億ドルも稼ぐ国。

強力な同盟だが、トランプが我々の陣営に押しやった味方はこれだけではない。もう1つの強力な味方が控えている。

昨年6月のことを覚えているだろうか。ハーグの国際刑事裁判所(ICC)がジェノサイドの実行者ベンヤミン・ネタニヤフに対する逮捕状を発行し、トランプがICCを非難した。するとICCはOutlookへのアクセス、メールアーカイブ、作業ファイル、アドレス帳、カレンダーを失った。

Microsoftは、ICCを文鎮化したわけではない、偶然だと言っている。だが、ICCの裁判官と反トラスト法で有罪判決を受けたMicrosoftとの間の「言った言わない(he-said/Clippy-said1訳注:「彼が言った/イルカのカイル(米版はクリッピー)が言った」ならどっちを信じる?というジョーク。)」論争で、私がどちらを信じるかは明白だ。

これはまさに、Huaweiのような中国企業に重要な通信機器を提供させた場合に警告されていた、インフラリスクそのものだ。世界のほぼすべての政府省庁、すべての大企業、すべての中小企業、すべての家庭が、米国拠点のクラウドベースサービスに自らを縛りつけてしまった。

世界の管理ツールを提供するひと握りの米国ビッグテック企業は、すべてトランプ政権からの圧力に脆弱であり、それはつまりトランプが国家まるごと文鎮化できるということだ。

ICCへの攻撃はサイバー戦争行為だった。ウクライナの発電施設を停止させたロシアのハッカーと同じだが、MicrosoftはOutlookをハッキングする必要がない。彼らはOutlookを所有しているのだ。

2018年の米国CLOUD法のもとでは、米国政府は米国に拠点を置くあらゆる企業に対し、外国政府のものを含むあらゆるユーザデータの開示を強制できる。そしてそのデータがどこに保管されていようとこれは適用される。昨年7月、Microsoft Franceの公共政策担当ディレクター、アントン・カルノーは、フランス政府の調査において、たとえそのデータが欧州のデータセンターに保管されていても、Microsoftがフランスの機密データを米国政府に引き渡さないとは「保証できない」と述べた。

しかもCLOUD法のもとでは、米国政府はデータの引き渡しを強制した企業に箝口令を敷くことができるため、このようなことが起きたかどうか、あるいはすでに起きているかどうかすら知ることができない。

管理ツールに限った話ではない。2022年、プーチンの手先がウクライナから数百万ドル相当のジョンディア製トラクターを略奪し、それらのトラクターがチェチェンに現れた時のことを覚えているだろうか。ジョンディア社はそれらのトラクターに無線キルシグナルを送信し、文鎮化した。

ジョンディアは、トランプ政権に対してMicrosoftと同じくらい政治的に脆弱であり、世界のトラクターの大部分を文鎮化することができる。ジョンディアが文鎮化できないトラクターは、おそらく農業テックカルテルの2番手であるマッセイ・ファーガソンが製造してものだが、同社も米国企業であり、米国政府からの政治的攻撃に対して同様に脆弱だ。

こうしたことは、世界の指導者にとって目新しい話ではない。トランプとMicrosoftがICCを文鎮化する以前から、「デジタル主権」への道を模索していた。だが、トランプ政権のこの11か月の常軌を逸した言動により、「デジタル主権」は「あれば望ましい」ものから「なくてはならない」ものへと変わった。

ようやく動きが出てきた。「Eurostack」がその一例で、米国ビッグテックのサイロの機能をフリー/オープンソースソフトウェアで複製し、そのコードを実行できるEU拠点のデータセンターを構築するプロジェクトだ。

だがEurostackは危機に直面しつつある。ビッグテックの有用な機能を複製する、オープンでローカルにホストされ、監査可能で信頼できるサービスを構築するのはすばらしい。だが同時に、何百万もの文書、センシティブなデータ構造や編集履歴を大量エクスポートするための敵対的相互運用ツールも構築しなければならない。

我々には、スクレイパーやヘッドレスブラウザが必要だ。まだ米国のクラウドベースサービス上にある機関との接続を維持するための敵対的相互運用を実現するために。米国企業は、国際的な顧客がプラットフォームから大量に流出するのを手助けする気など毛頭ないからだ。

iOSのApp Storeを開放するという比較的ささやかな要求に対するAppleの対応を思い出せば、今度は5億人の富裕な消費者を擁する27カ国ブロックの企業や政府の多くが離脱するとなった時に、Appleがどれほどの核弾頭級のサボタージュ、癇癪、悪意ある形式的遵守を繰り出してくるか想像に難くない。

デジタル主権へのいかなる本格的な取り組みにも、ビッグテック企業の協力なしに機能する移行ツールが不可欠だ。さもなければ、東ドイツ人のための住宅を西ベルリンに建てることになる。住宅がどれほど素晴らしくても、壁を壊さない限り、入居予定者は引っ越しに大変な苦労をする。

壁を壊す第一歩は、迂回禁止法の廃止だ。そうすれば、スクリプトで操作できる仮想デバイスを実行し、ブートローダーを破ってファームウェアを入れ替え、一般的に言えば計算手段を掌握できるようになる。

これが脱メタクソ化軍の第3のブロックだ。私のようなデジタルライツ・ヒッピーだけでなく、米国の数兆ドルを欧州の数十億ドルに転換することに手ぐすね引いている起業家や経済開発の専門家、そして自国が全く信頼できないことが証明された米国プラットフォームに依存していることへの極度の懸念が100%正当な国家安全保障タカ派も含まれる。

こうしてポスト・アメリカのインターネットが実現する。活動家、起業家、そして国家安全保障タカ派の止められない連合によって。

これは長い道のりだった。戦後の秩序以来、世界は米国を中立的なプラットフォーム、グローバルな交流のための重要システムの信頼でき安定した管理者として扱ってきた。政治学者のヘンリー・ファレルとエイブラハム・ニューマンが「アンダーグラウンド・エンパイア」(地下帝国)と呼ぶものだ。だが過去15年間で、米国は自国の制度に対するグローバルな信頼を組織的に打ち砕いてきた。トランプ政権下でそのプロセスは加速するばかりだ。

大洋横断光ファイバーケーブルを例に取ろう。大洋横断光ファイバーのルートが設計された際、これらのケーブルの大半は米国の沿岸に陸揚げされ、そこで相互接続が処理されるようになった。このハブ・アンド・スポーク型のネットワークトポロジーには、すべての国間に直接リンクを張る場合と比較して、正当な根拠がある。それはO(N^2)問題だ。地球上の205カ国すべてを他のすべての国に直接リンクするには、20,910本の光ファイバーリンクが必要になる。

だが世界の通信の卵をすべて米国のバスケットに入れるのは、米国がその中心的地位を悪用しないと信頼できる場合にのみ成り立つ。世界の光ファイバーインフラのヘッドエンドで米国が何をし得るかについては多くの人が懸念していたが、マーク・クラインが2006年にAT&Tのネットワーク内でNSAが国家規模の光ファイバー盗聴をしていることを暴露し、エドワード・スノーデンが2013年にこの盗聴のグローバルな規模を示す文書を公開して初めて、世界は否定しようのない現実に直面せざるを得なくなった。米国は世界の光ファイバーハブとして信頼できないという現実だ。

光ファイバーだけの話ではない。世界はドル建で商取引を行っている。ほとんどの国が、外貨準備の主要な源泉として、ニューヨークの連邦準備銀行にドル口座を維持している。だが2005年、米国のハゲタカ投資家たちが、主権国家アルゼンチンが破産宣告した後に、数十億ドル相当のアルゼンチン国債を買い集めた。

彼らはニューヨークの裁判官を説得し、アルゼンチン政府の米国資産を自分たちに引き渡させた。1ドルに対して数セントで買い叩いた債権を回収するために、自分たちが融資してもいない債務を弁済させたのだ。この瞬間、世界中のすべての政府が、米国連邦準備銀行に外貨準備を預けることは信頼に値しないという現実に直面せざるを得なくなった。だが、他に手段はあるのか?

明確な答えがないまま、ドルの優位性は続いた。だがバイデン政権下で、プーチン寄りのオリガルヒやロシア企業はドル決済のためのSWIFTシステムへのアクセスを失った。石油のような商品がドル建てで取引されるのは、買い手が自国通貨をドルに交換してくれる相手を見つければよく、そのドルで世界のあらゆる商品を購入できるからだ。

ここでも、ドル決済には正当な根拠がある。世界の約200通貨すべてについて、深く流動的なペアワイズ取引市場を確立するのは現実的ではなく、これもO(N^2)問題だ。

だがそれが成り立つのは、ドルが中立的なプラットフォームである場合に限られる。ドルが米国の外交政策の道具になった時点で――その政策に賛成するかどうかにかかわらず――もはや中立的なプラットフォームではなくなり、世界は代替手段を探し始める。

その代替手段が何になるかはまだ誰にもわからない。世界の光ファイバーリンクが最終的にどのような構成になるかもわからないのと同じだ。何キロメートルもの光ファイバーが海底に敷設されており、各国はかなり無理筋のドル代替策を試みている。エチオピアが自国の国債を中国の人民元建てに変更するように。米国のメタクソ化されたプラットフォームに代わる明確な選択肢がなければ、ポスト・アメリカの世紀は波乱含みの幕開けとなる。

だが、容易に想像できるポスト・アメリカのシステムが1つある。我々の制度、医療用インプラント、車両、トラクターを動かしている、クラウド接続された、バックドアの仕込まれた、信頼できないブラックボックスをすべて引きはがし、共同で維持管理される、オープンで、フリーで、信頼でき、監査可能なコードに置き換えるプロジェクトだ。

このプロジェクトこそが、規模の経済の恩恵を受ける唯一のものであり、指数関数的な規模の危機に麻痺させられることがない。なぜなら、Eurostackサービスのような公的機関が採用したあらゆるオープンでフリーなツールは、他のあらゆる国の機関によって監査、ローカライズ、ペネトレーションテスト、デバッグ、改善が可能だからだ。

それはコモンズであり、テクノロジーというよりも科学に近い。普遍的で、国際的で、協働的だ。西側と中国で別々の構造工学の原理が競い合っているわけではない。建物が倒壊しないようにするための普遍的な原理があり、それが地域の状況に応じて適応されているのだ。

建物を支えるための計算に秘密が許されないのと同様に、我々のトラクター、補聴器、人工呼吸器、ペースメーカー、電車、ゲーム機、スマートフォン、監視カメラ、ドアロック、政府省庁を動かしているソフトウェアに不透明さが許されるべきではない。

肝心なのは、ソフトウェアは資産ではなく負債だということだ。ソフトウェアを実行することで得られる能力――自動化、生産、分析、管理――これらは資産だ。だがソフトウェアそのもの? それは負債である。脆く、もろく、上流、下流、隣接するソフトウェアが更新されたり入れ替わったりするたびに壊れ続ける。何年もうまく動いていたシステムの欠陥や不備を露呈させるのだ。

ソフトウェアをコモンズベースの生産に移行することは、ソフトウェアがその制作者やユーザに課す負債を軽減する方法であり、その負債を多くのプレーヤーの間で分散させることだ。

当然ながら、テック企業のトップはこのことについて完全に無知だ。彼らは本気でソフトウェアが資産だと思っている。だからこそ、チャットボットに超人的な速度でソフトウェアを吐き出させることに夢中なのだ。「人間のプログラマーの1,000倍のコードを生成する」チャットボットを持つことを良いことだと考えている。

可読性や保守性のために設計されたのではなく、生産速度に最適化されたコードを生み出すことは、技術的負債を大規模に積み上げることに他ならない。

AIの物語全体を簡潔に要約しよう――チャットボットはあなたの仕事をこなせないが、AIのセールスマンはあなたのボスを説得して、あなたの仕事をこなせないチャットボットを導入し、あなたをクビにできる。

ボスがそのチャットボットの売り込み屋にカモにされやすいのは、ボスがあなたを嫌っているからだ。ボスは心の奥底では、自分が出勤しなくなっても会社は何の問題もなく回るが、労働者が来なくなれば会社は機能停止することを理解している。

ボスは自分が運転席に座っていると言い聞かせているが、実際には後部座席に座っておもちゃのハンドルを回しているのではないかと恐れている。彼らにとってAIは、そのおもちゃのハンドルを会社の駆動系に直結させる方法だ。労働者のいない会社という空想が実現すると思っている。

ハリウッドの脚本家ストライキ中にピケラインを歩いていた時、ある脚本家が教えてくれた。AIにプロンプトを出すのは、スタジオの上層部が脚本家チームにひどいダメ出しをするのと同じだと。「ETみたいなのを作ってくれ、でも犬の話にして、ラブストーリーも入れて、第3幕にカーチェイスを入れて」

脚本家チームにそう言えば、とんだスーツ野郎だと言われ、「自分のオフィスに戻ってスプレッドシートでも作ってろよ、このマヌケ。ここの大人たちは映画を書いてるんだぞ」と言い返される。

一方、そのプロンプトをチャットボットに与えれば、仕様どおりの脚本を嬉々として吐き出してくれる。その脚本がひどくて使い物にならないことより、「とんだスーツ野郎だ」と言われない仕事人生の方が重要なのだ。

AIは、脚本家のいない脚本家チーム、俳優のいない映画、看護師のいない病院、コーダーのいないコーディング工場という夢をちらつかせる。

マーク・ザッカーバーグがポッドキャストに出演し、平均的な米国人は友人が3人いるが15人は欲しいと思っていて、チャットボットで友人を補えば解決できると話した時、我々はみな、ザックを友情の本質を理解していない世間知らずの億万長者火星人だと嘲笑した。

だが現実には、ザックにとってあなたの友人は面倒な問題なのだ。友人とのやり取りが、あなたがザックのプラットフォームにどれだけ時間を費やすかを決定し、それが収益を生む広告の表示回数を左右する。

あなたの友人は頑なに、ザックの株主のリターンを最大化するような形であなたとの関係を組み立てることを拒む。だからザックはメンロパークで、あなたの友人をチャットボットに置き換える空想に必死なのだ。そうすれば、ソーシャルなやり取りのないソーシャルメディアサービスという夢をついに実現できるのだから。

富と権力を握る者は、根本的に独我論者だ。10億ドルを蓄積する唯一の方法は、多くの人々に悲惨さと困窮をもたらすことだ。その後に鏡に映る自分を直視し続けるには、自分が追い落とした連中なんて重要ではない、ある重要な意味において彼らはリアルではないと自分に言い聞かせなければならない。

思い出してほしい。自分に異を唱える者をすべて「NPC」と呼ぶイーロン・マスクを。あるいは、1万年後に誕生する53兆人の架空の人工知能人類を心配することで道徳的優位を主張し、今生きている人間への道義的配慮を犠牲にしようという「効果的利他主義者」たちを。

あるいは、米国政府の科学者を全員解雇した後に「Genesis」プログラムを発表し、チャットボットを使って毎年「ムーンショット」級のブレークスルーを生み出すと宣言したトランプを。科学者なき科学だ。

チャットボットに科学は本当にはできない。だがトランプの視点からすれば、チャットボットの方が科学者よりマシだ。チャットボットは日食を見つめるなとも、漂白剤を注射するなとも言わない。トランスジェンダーの人々が存在するとも、気候危機現実だとも言わないのだ。

権力者がAIに騙されやすいのは、AIが人間のいない世界の空想を掻き立てるからだ。物事のやり方を知っている人間から「ノー」と言われ、自我を打ち砕かれる対決がない、ボスとコンピュータだけがいる世界だ。

AIは技術的負債を大規模に生み出し、熟練した脚本家を欠陥だらけのスパイシーなオートコンプリートシステムに置き換え、生きている人間の記憶にないほどの速度でカネを溶かす手段である。

それに比べて、ポスト・アメリカのインターネットを構築するプロジェクトはどうか。技術的負債を減らし、米国の独占的数兆ドルのロックを解除して世界の起業家たち(彼らにとっては莫大な利益を意味する)と世界のテクノロジーユーザ(彼らにとっては莫大な節約を意味する)に分配する。しなやかさと主権を築きながら。

今、かなり冷めた気持ちの人もいるだろう。確かに、各国の政治指導者は何十年にもわたって、米国に無力で無能な追従を見せてきたし、事態が切迫している時でさえ行動できないでいた。気候危機に対して断固とした行動を取れなかったのに、この機会を真剣に受け止めてくれる望みなどあるのかと。

だが危機は変化を促す。もう1人の狂気の皇帝――ウラジーミル・プーチンがウクライナに侵攻し、欧州が深刻なエネルギー不足に陥った時のことを覚えているだろうか。わずか3年で、大陸の太陽光発電導入量は急増した。EUはエネルギー転換において15年遅れの状態から、計画より10年先行するまでに至った。

暗闘の中で凍えるようになると、勝ち目がないと思っていた戦いも、突如として負けるわけにはいかない存続をかけた戦いになる。確かに、隣人のバルコニーにソーラーパネルがぶら下がることを想像しただけで美的感覚の癇癪を起こすような、うんざりするご近所さんと喧嘩したい人はいない。

だが冬が来て、ロシアのガスがなく、暗闘の中で凍えている時には、その人物にはバルコニーのソーラーパネルに対する美的異議を紙飛行機に折って、自分のケツの穴にでもねじ込んでもらえばいい。

さらに、ポスト・アメリカのインターネットに向けて迂回禁止法の廃止を先導するのは、欧州である必要はない。どの国でもできる! そして最初にたどり着いた国が、世界にジェイルブレイクツールを供給することで利益を手にし、「脱メタクソ化国家」となる。世界の他のすべての国は、そのツールを買って、米国テック企業の金銭的・プライバシー的略奪から身を守ることができるのだ。

たった1つの国がコンセンサスを破ればよく、そしてすべての国がそうする根拠はかつてなく強い。かつてはUSAID(米国国際開発庁)に依存する国々は、米国を怒らせれば食糧、医療、資金支援を失う心配をしなければならなかった。だがトランプがUSAIDを潰した今となっては、もう過去の話だ。

一方、地球上最も旺盛な消費国としての米国の地位は、何十年にもわたる反労働者/億万長者優遇政策によって骨抜きにされてきた。今日、米国は3度目のK字型回復の真っ只中にある。富裕層はさらに富み、その他すべての人はさらに貧しくなるという経済回復だ。一世代にわたり、米国はこの拡大する格差を簡単な信用供与で糊塗してきた。一般の米国人はクレジットカードや2度目、3度目の住宅ローンで消費を賄ってきたのだ。

全員が買い続けられる間は、他の国々も米国を輸出市場として気にかけなければならなかった。だが一世代にわたる搾取の結果、米国の下位90%の人々は食料品やその他の必需品を買うのに四苦八苦し、高騰する住居費、教育費、医療費など潰れそうな負債を抱えている。50年間の賃金停滞のおかげで、返済の見込みすらない。

トランプ政権は、債権取り立て屋、便乗値上げ業者、利権屋の側に断固として立っている。トランプはRealPageのような賃料吊り上げプラットフォームへの取り締まりを骨抜きにし、800万人の学生の債務返済を再開させ、救命医薬品を少しでも安くする計画を潰した。米国人は引き続き世界で最も高い薬価を支払っている。

ローンの返済に充てられる1ドルは、消費に回すことができない1ドルだ。そして貧困に陥る米国人がますます増える中、米国はSNAP(フードスタンプ制度)のような、国民に代わってカネを使う公的プログラムを削減している。飢餓を食い止めるために、ますます多くの国民が利用しているプログラムだ。

米国は「人間のいない世界」の夢を追い続けている。労働者が何も持たず、何も使わず、1円残らずレンティア[資産家・投資家]に上納し、レンティアはそのカネをすかさず株式市場、シットコイン、あるいはギャンブルサイトに注ぎ込む。そして、それが繰り返される。

長らく聖域とされてきた米軍でさえ、レント・シーカーを富ませるために弱体化させられている。議会は軍の「修理する権利」法を葬った。だから今後も、海外駐留の米兵は、ペンタゴンの誇らしい伝統を続けなければならない。つまり、発電機からジープに至るまで、物資を修理のために米国に送り返し、メーカーに10,000%の上乗せ料金を支払い続ける。ペンタゴンは日常的に、海兵隊員にエンジンの修理方法を教えることを禁じるメンテナンス契約を結んでいるからだ。

ポスト・アメリカの世界は本当に急速にやってきている。我々が迂回禁止法を廃止する際に、米国がどう思うかを気にする必要はないし、関税を気にする必要もない。どうせすでに関税で叩かれているのだから。そして、米国でまだモノを買う余裕のある人間は富裕層だけで、彼らだけでは十分な量を購入しない。最も断頭台送りにされそうな大富豪であっても、有効活用できるランボルギーニやサブゼロの冷蔵庫には限りがある。

だが欧州の企業が迂回禁止法の恩恵を受け続けたい場合はどうか? そこにも朗報がある。「朗報」と言ったのは、迂回禁止法に依存しているEU企業が、想像しうる限り最も卑劣で最も唾棄すべき詐欺行為に手を染めているからだ。

フォルクスワーゲンがディーゼルゲートをやり通せたのも、迂回禁止法があったからこそだ。著作権指令第6条は、この致命的な犯罪を発見し得たリバースエンジニアに対して法的責任を課して萎縮効果を生み出た。そして毎年何千人もの欧州人が命を落とした。

今日、ドイツの由緒ある自動車メーカーはディーゼルゲートの伝統を受け継ぎ、ドライバーからレントを抽出すべく自社の車にサボタージュを仕込んでいる。メルセデスの高級車のアクセルペダルは、月額サブスクリプションを購入しなければエンジンの最大加速カーブを解放してはくれない。BMWも、対向車を検知して自動的にハイビームを減光するシステムをサブスクリプション制にしている。

ジェイルブレイクを合法化すれば、欧州のどの修理工場でも、一度の料金でこうしたサブスクリプション機能をアンロックでき、そのカネの一銭たりともBMWやメルセデスと分け合わなくていい。

そして、アイルランド企業になりすましているメドトロニックだ。メドトロニックは世界最大の医療テック企業で、競合他社をすべて買収した後、史上最大の「タックス・インバージョン」(租税逆転)を行い、利益をアイルランド海に漂う非課税の恩寵へと魔法のように変身させるべく、小さなアイルランドの会社に自社を売却した。

メドトロニックは世界で最も広く使われている人工呼吸器を供給している。そして、自社の製品にはジョンディアがトラクターに仕掛けているのと同じようなブービートラップを仕込んでいる。病院の技術者がメドトロニックの人工呼吸器に新しい部品を組み込んだ後、呼吸器の中央コンピューティングユニットは暗号化ハンドシェイクが完了するまで部品を認識しない。認定されたメドトロニックの技術者に数百ユーロを支払って、病院の技術者自身がおそらく行ったであろう修理を認証してもらったことを証明するためのハンドシェイクだ。

呼吸器が壊れるたびに病院から数百ユーロを吸い上げるだけの仕組みである。これだけでも十分にひどいだが、コロナのロックダウン中、すべての人工呼吸器が切実に必要とされ、飛行機が止まっていた時、メドトロニックの技術者が来て病院技術者の修理を「祝福」する方法はなかった。これは文字通り致命的だった。人が死んだのだ。

もう1つ、迂回禁止法に依存している欧州の企業について触れたい。CCCの旧友だからだ。ポーランドの鉄道会社Newagである。Newagは自社の機関車にサボタージュを仕込み、競合他社の整備施設に持ち込まれたことを検知すると機関車が文鎮化するようブービートラップを仕込んでいる。鉄道運営者がこの不思議な問題についてNewagに連絡すると、Newagは「親切にも」機関車のコンピュータにリモートアクセスし、「診断」を行う。これは実際には文鎮化解除コマンドを送信しているだけであり、このサービスに2万ユーロを請求する。

昨年、ポーランドのセキュリティ研究企業Dragon Sectorのハッカーたちが、まさにこのホールで、この忌まわしい仕組みに関する研究を公表した。そして今、彼らはNewagの意図的に欠陥のある製品についての完全に真実の開示をしたかどで、迂回禁止法に基づきNewagに訴えられている。

これが迂回禁止法を支持する欧州の利害関係者だ。ディーゼルゲートの殺人者たち、ハイビームやアクセルペダルをサブスクで貸したがる自動車メーカー、パンデミック中にすべての人工呼吸器を文鎮化した医療テック大企業、そしてポーランドを線路に縛りつけた企業。

ブリュッセルでこいつらと戦い、「機関車文鎮化業者のことも考えてくれ!」と泣きつく彼らの姿を見届けるのを、私は楽しみにしている。

テクノロジーのメタクソ化――我々が依存するプラットフォームやシステムの劣化――には多くの原因がある。競争の崩壊、規制の虜、テック労働者の力の粉砕。だが何にもまして、メタクソ化は迂回禁止法による相互運用性の禁止の結果なのだ。

相互運用性を阻止し、汎用コンピュータに宣戦布告することで、我々の政策立案者はメタクソ化を促進する環境を作り出し、企業がクソになることに報酬を与え、すべてがクソになるメタクソ世(エンシティセン)を招き入れた。

メタクソ化に終止符を打とう。計算手段を掌握しよう。我々が依存するサービスやファームウェアの、互換性のある、フリーでオープンで監査可能な代替手段を構築しよう。

サイロの時代を終わらせよう。考えてみれば、誰かと話したいだけなのに、相手がどのネットワークを使っているか気にしなければならないのは、実に奇妙ではないか? と話したいかを決めるだけでいいはずなのに。

参加しようとしている議論がTwitterなのかBlueskyなのか、MastodonなのかInstagramなのかを把握しなければならないというのは、まさにProdigy/AOL/CompuServe的なデジタル世界の運営方法だ。1990年から電話がかかってきて、ウォールドガーデンを返してくれと言っている。

汎用コンピューティング戦争に、強力な味方が我々の側についている。今世紀ずっと闘い続けてきた我々のような人間だけではない。米国テックが溜め込んだ数兆ドルを、自国のテックセクターを安定軌道に乗せるための使い捨てロケットの燃料に変えたい国々も。

自分たちの省庁やトラクターがトランプに文鎮化されることを懸念し、また――十分な理由を持って――習近平にすべてのソーラーインバーターとバッテリーを文鎮化されることも懸念する国家安全保障タカ派も。結局のところ、ポスト・アメリカのインターネットは、ポスト中国のインターネットでもあるのだ!

ユーザの許可なくフィールドアップデート可能なものが設計されてはならない。重要なものがブラックボックスであってはならない。

この講演の冒頭でも述べたが、私は電子フロンティア財団で24年間この仕事をしてきた。二重に施錠されデッドボルトもかけられたドアに体当たりし続けてきた。そのドアが今、わずかに開いている。ちくしょう、私は希望を持っている。

楽観ではない。楽観なんてくそ食らえだ! 楽観とは、我々が何をしようとしまいと物事は良くなるという考えだ。我々のすることが重要であることを私は知っている。希望とは、たとえ小さくとも物事を改善できれば、望む世界に向けた勾配を登ることができ、ここよりも高い見晴らしの良い地点に達し、今の低い位置からは見えない新たな行動方針が現れるという信念だ。

希望は鍛錬だ。絶望に屈しないことを求められる。だからここで伝えたい。絶望するな。

この10年間、世界中で、各国が集中した企業権力に対して武器を手にした。米国では(トランプ第一期そしてバイデン政権下で)大規模かつ力強い反トラスト攻勢があった。カナダ、英国、EUとドイツ・フランス・スペインなどの加盟国、オーストラリア、日本、韓国、シンガポール、ブラジル、そして中国でも。

これはほとんど奇跡的な展開だ。世界中の政府が、億万長者の富と権力の源泉である独占に対して宣戦布告している。

最も強い風であっても、目には見えない。その効果によってのみ見ることができる。我々が目にしているのは、企業権力の抑制を志す政治家が帆を広げるたびに、世界のどこであろうと、その帆に風が吹き込み、何世代もの間見られなかったような勢いで政策を前進させている光景だ。

企業権力をめぐる闘いの長い凪が終わり、激しく止められない風が吹いている。欧州だけでなく、カナダでも、韓国でも、日本でも、中国でも、オーストラリアでも、ブラジルでも。そして米国でも。米国の状況がどれほど混乱し恐ろしいものであっても、同国が地方、州、連邦レベルで反トラスト法案と執行措置の津波を経験してきたこと、そして今も経験し続けていることを、決して忘れてはならない。

そして、ポスト・アメリカのインターネットは米国人にとっても良いことであることも忘れてはならない。K字型で二極化した不平等な米国では、米国企業が世界から略奪した数兆ドルは米国人にトリクルダウンしない。平均的な米国人が保有する資産ポートフォリオはゼロに等しく、そこには米国テック企業の株も含まれている。

平均的な米国人はビッグテックの株主ではなく、ビッグテックの被害者なのだ。世界を米国のビッグテックから解放することは、米国を米国のビッグテックから解放することでもある。

それが35年間にわたるEFFの使命だ。25年間にわたる、EFFでの私の使命だ。この闘いに参加したいなら――そう願っているが――それはあなたの使命にもなり得る。EFFに入ることもできるし、自国の団体に入ることもできる。ドイツのNetzpolitik、アイルランドのIrish Council for Civil Liberties、フランスのLa Quadrature du Net、英国のOpen Rights Group、フィンランドのEF Finland、ブルガリアのISOC Bulgaria、XNet、DFRI、Quintessenz、Bits of Freedom、Openmedia、FSFEなど、世界中に数十の組織がある。

ドアはわずかに開き、風が吹き、ポスト・アメリカのインターネットが目前に迫っている。かつての良きインターネットの技術的自己決定権をすべて備え、一般の友人たちも使えるようにWeb 2.0の使いやすさも兼ね備えた、新しき、良きインターネットだ。

そこでみんなと一緒に過ごせる日が待ちきれない。きっとすばらしいものになるだろう。

Pluralistic: The Post-American Internet (01 Jan 2026) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: January 1, 2026
Translation: heatwave_p2p

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    訳注:「彼が言った/イルカのカイル(米版はクリッピー)が言った」ならどっちを信じる?というジョーク。
カテゴリー: Digital Rights