オンライン投票に関する米国科学振興協会のオープンレターの翻訳に関連して、電子フロンティア財団の記事も紹介しておきたい。EFFのような組織であれば、本来的にはインターネットを介して投票ができるようになる社会を歓迎するところではあるのだろうが、こちらも一貫してオンライン投票の実施に強く反対している。そこで今回は、EFFの「Election Security」という概要記事を翻訳した。
米国ではすでに複数の州で電子投票機や、投票用紙の集計(読み取り)に光学式スキャナーが導入されていることなど、日本国内で実施される選挙とは異なる点も多いことに注意が必要である。とはいえ、オンライン投票や、投票・集計での電子機器の導入に関する議論において参考にはなるだろう。
投票は民主主義の根幹である。我々の投票が意味あるものであることを保証するためには、投票方法や集計の仕組みが重要になる。EFFは、すべての投票を紙に記録すること、すべての選挙で自動的にリスク制限監査(RLA:risk limiting audits)が実施されることを支持している。この2つを含まない法案に反対の立場を取る。EFFはオンライン投票に反対する。2018年、複数の上院議員が「投票選挙保護(PAVE:Protecting American Votes and Elections)法」案を提出した。この法案は、すべての連邦選挙に紙の投票用紙の使用とリスク限定監査を義務づけるもので、これにより民主主義のプロセスがハッカーや外国勢力に乗っ取られないようにできる。これは大きな前進であり、今後の議会で同様の法案が検討されることを期待したい。
紙の記録
タッチスクリーン式の投票機や集計機など、選挙に用いられる機器はハッキングの標的になる。攻撃はその性質上、秘密裏に、不明確に行われる。巧妙に計画された攻撃プログラムは、投票機をハッキングしたあとに自分自身を消去し、選挙妨害を事後的に証明できないようにするだろう。紙の記録ならそのような妨害行為を発見し、迅速に修正することが可能である。だが多くの州で、この最低限のベストプラクティスが守られていない。
リスク制限監査(risk limiting audits)
投票の改ざんを検出するためには、機械による「再集計」に頼らず、人の手で紙の投票用紙を確認することが重要である。監査は、選挙の問題が指摘されたときにだけ特別に行われるべきではない。質の高い監査は、民主主義プロセスの中で自動的かつ定期的に実施されねばならない。リスク制限監査(RLA)は、手作業で集計する少数の投票用紙サンプルを抜き出し、電子的な票の改ざんを検出するという統計的信頼性の高い、実績のある、革新的な手法である。また、すべての選挙でこの監査を実施できるくらいに安価である。2018年現在、コロラド州をはじめ3つの州がRLAの義務化を実施している。残る47州も一刻も早く追随すべきだ。
オンライン投票の禁止
しばしばスマートフォンやパソコンを使って、自宅や海外から投票できるようにしようという提案が湧いて出てくる。セキュリティ専門家の間では、オンライン投票は許容できないレベルで危険であるという意見でほぼ一致しており、EFFもその結論を支持している。
Translation: heatwave_p2p