以下の文章は、Access Nowの「Statement on the historic decision in the WhatsApp v NSO case」という記事を翻訳したものである。
WhatsApp対NSO Group訴訟で、米国カリフォルニア北部地方裁判所が歴史的判決を下した。裁判所は判決の中で、NSO GroupがPegasusスパイウェアを用いてWhatsAppのユーザおよびインフラを標的としたことは、連邦法およびカリフォルニア州のハッキング関連法規に違反するとともに、WhatsAppの利用規約にも違反すると認定した。米国最高裁判所まで持ち込まれた、5年にわたる激しい法廷闘争の末に下されたこの一部略式判決は、世界で初めてNSO Groupの法的責任を認めた画期的な判断となった。
事の発端は2019年にさかのぼる。1,400人を超えるWhatsAppユーザを標的とした攻撃の中で、100人以上の市民社会活動家が被害に遭ったことが明らかになり、Access Nowは直ちに責任追及を求める声明を発表した。2020年12月には、Access Nowはアムネスティ・インターナショナルやジャーナリスト保護委員会(CPJ)、インターネットフリーダム財団(IFF)、パラダイム・イニシアチブ、プライバシー・インターナショナル、国境なき記者団(RSF)、Red en Defensa de los Derechos Digitales(R3D)とともに、ファレラ・ブラウン+マーテル法律事務所のプロボノ支援を受けて米国第9巡回区控訴裁判所に法廷助言書を提出し、NSOのハッキング行為が人権に及ぼす深刻な影響を指摘するとともに、インド、モロッコ、ルワンダ、トーゴで標的となった市民活動家たちの証言を裁判所に届けた。
職業も国籍も民族的背景も異なるこれら被害者たちは、一様に壊滅的な影響を受けた体験を裁判所に訴え、正義を求めた。「権威主義国家からの監視は、仕事上の関係を損なうだけでなく、社会的なつながりも失わせた」と、元モロッコ人ジャーナリストのアブーバクル・ジャマイは証言した。「電話で自由に話すという行為そのものが、家族や友人を危険にさらすことになる」。
NSOは被害者たちの声を伝える我々の助言書に異議を申し立てたものの、裁判所はNSOの主張を退け、被害者の声に耳を傾けることを選んだ。
2022年8月、NSOが米国最高裁判所に上訴し、司法長官の意見を求めた際、Access Nowと市民社会の連合は、NSOによる人権侵害の実態、そのスパイウェアが世界中の人権擁護者やジャーナリストに及ぼしている危害について詳細な情報を司法長官に提供した。司法長官の意見書は我々の提言を支持するものとなり、これを受けて最高裁判所はNSOの上訴を却下した。事件はカリフォルニア北部地方裁判所に差し戻された。
地裁がNSOの法的責任を認定したことで、今後の審理はNSOがWhatsAppに支払う損害賠償額の確定に絞られることになる。オークランドの地方裁判所で2025年3月に予定されている。
この地裁判決は、世界中のスパイウェア企業に対して、不処罰の時代が終わりを迎えつつあることを示す重要な転換点となるだろう。我々は、他のテック企業や各国政府に対し、司法制度やその他のあらゆる手段を用いて、スパイウェア企業の違法行為に対する責任を問い、業界全体で人権尊重を確保するよう求める。適切な法的・財政的支援があれば、市民社会は今後も監視産業とその有害な製品・サービスがもたらすグローバルな影響を監視し続けることができる。政府、民間セクター、法曹界、テクノロジストのコミュニティなど、幅広いステークホルダーとの協力関係の深化を期待している。
Access Nowとそのパートナー団体は、この訴訟を通じてプロボノ支援を提供してくれたファレラ・ブラウン+マーテル法律事務所[Farella Braun + Martel LLP]のカイル・マクローグ、ステファニー・スカフ、そして故ディーパック・グプタに深い感謝の意を表する。
Statement on the historic decision in the WhatsApp v NSO case
Author: Access Now (CC BY 4.0)
Publication Date: January 13, 2025
Translation: heatwave_p2p