以下の文章は、電子フロンティア財団の「Discord Voluntarily Pushes Mandatory Age Verification Despite Recent Data Breach」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

Discordが年齢確認の義務化を段階的に導入し始めた。当然、インターネット上では大騒ぎが起きている

EFFは何年も前から年齢確認の義務化について警鐘を鳴らしてきた。昨年12月には、基本的なオンラインサービスを利用するだけでセンシティブな個人情報の提出を求める法律やプラットフォームポリシーに対抗すべく、年齢確認リソースハブを立ち上げた。当時、年齢ゲートが実施されていたのは、主に法律で義務づけられている管轄地域に限られていた。ところが今、法的義務のないプラットフォームや管轄地域にまでそれが広がりつつある。

3月上旬以降、(a)Discordによって18歳未満と推定されるか、(b)Discordが十分な情報を持っていないユーザは、「10代向け体験」にロックされる可能性がある。つまり、コンテンツフィルター、年齢ゲート、ダイレクトメッセージやフレンドリクエストの制限、そして多くのコミュニティイベントで活用されている大規模オーディオスペース「Stageチャンネル」での発言制限が課されるということだ。Discordによると、ほとんどの成人は、アカウントの使用期間、デバイスやアクティビティデータ、プラットフォーム全体のパターンに基づく新たな「年齢推定」システムにより自動的に振り分けられるという。情報不足で年齢が推定できなかったり、成人ではないと推定されたりしたユーザがデフォルトの10代アカウント制限を回避したい場合は、サードパーティベンダーを通じて顔のスキャンまたは政府発行の身分証明書のアップロードを求められることになる。

年齢確認の義務化がなぜ検閲監視の悪夢であるのか、我々はこれまで繰り返し詳細に論じてきた。Discordの方針転換は、まさにその懸念を裏づけるものにほかならない。以下にその理由を示す。

2025年の漏洩事件とその後の変化

Discordは文字通り、我々の2025年「ほら言わんこっちゃない」漏洩賞を受賞した。Discordは昨年、攻撃者にサードパーティカスタマーサポートシステムに侵入され、約70,000人分のユーザの政府発行身分証明書、自撮り写真、その他のセンシティブな情報を流出された。

*明確にしておくと、Discordはすでに当該システムの使用を停止している。従来は年齢確認のために身分証明書のアップロードを一般的なチケットシステム経由で処理していたが、現在は専用の年齢確認ベンダー(グローバルではk-ID、英国の一部ユーザにはPersonaを利用している。

これは改善ではある。しかし、データ漏洩やその他の被害が生じる根本的なリスクが消えたわけではない。Discordは、ユーザがアップロードした政府発行身分証明書の記録はすべて削除し、顔スキャンがユーザのデバイスの外に出ることは決してないとしている。だが、プラットフォームはクローズドソースであり、監査には限界があり、データ(とりわけこうした極めて価値の高いID情報)はハッキング、設定ミス、保持の不備など、なんらかの形で漏洩するというのが歴史の教訓だ。ユーザは、「次は大丈夫だ」とただ信じるよう求められている。

年齢確認と匿名の言論

何十年もの間、我々は若者にシンプルなルールを教えてきた――オンラインで見知らぬ人に個人情報を教えてはいけない、と。

年齢確認は、このアドバイスを複雑なものにする。突然、一部のDiscordユーザは、年齢推定技術がうまく機能しない場合に、特定の機能にアクセスするために政府発行の身分証明書や顔スキャンの提出を求められるようになったDiscordはブログで、ユーザのIDをアカウントに紐づけることはなく(年齢確認のみに使用)、身分証明書も保持しないと述べている。我々はこうした約束を真剣に受け止めている。しかし、そのセーフガードが実際にどう運用されているのか、あるいは本人の特定を防ぐのに十分であるかどうかについて、ユーザが独自に確認する手立てはほとんどない。

たとえDiscordが技術的にIDとアカウントを分離できるとしても、特にプラットフォームが年齢確認データに関する漏洩事件を起こしたばかりである以上、多くのユーザが懐疑的になるのは当然だろう。匿名性に依拠して活動している人々にとって、顔スキャンや政府発行の身分証明書のアップロードを求められること自体が、一線を越える行為と感じられるのだ。

匿名性に頼って自由に発言している人は多い。LGBTQ+の若者、虐待サバイバー、政治的反体制派、そのほか無数の人々がアイデンティティを探求し、支援を見つけ、安全にコミュニティを築くために別名を使っている。本人確認が参加の条件になれば、多くのユーザは単純に利用をやめるだろう。萎縮効果は、IDが恒久的にアカウントに紐づけられるかどうかだけの問題ではない。そもそもユーザがそのシステムを信頼して参加できるかどうかの問題だ。自分の発言が政府発行の身分証明書まで遡れるかもしれないと不安になれば、発言の仕方は変わる――あるいは、一切口を閉ざさざるをえなくなる。

オンラインコミュニティへのアクセスとプライバシーの保護を天秤にかけなければならないなど、あってはならない。

年齢確認システムは本番運用に堪えない

Discordは、デバイス上での顔年齢推定の活用や、政府発行の身分証明書とユーザアカウントの分離によってプライバシーへの懸念に対処しようとしていると述べ、身分証明書そのものではなくユーザの年齢のみを保持するとしている。これは、センシティブなデータの収集・保持に伴うリスクを軽減するための措置だ。しかし、プライバシーのセーフガードが整備されていたとしても、我々は別の問題に直面する。完全にプライバシーを保護し、誰もがアクセスでき、かつ一貫して正確な技術は、現時点では存在しない。顔による年齢推定ツールは、精度が低いことで悪名高く、有色人種、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々、障害を持つ人々にとっては特にそうだ。こうした顔年齢推定ツールを回避する方法についての記事がインターネット上にあふれている。だが、システムが誤判定した場合、ユーザは異議申し立てプロセスを経るか、政府発行の身分証明書などの追加書類の提出を求められることになり、その結果、外見と書類が一致しない人々や、そもそも政府発行の身分証明書を持たない世界中の数百万もの人々が排除されることになる。

より新しいアプローチ(年齢推定、行動追跡、金融データベース照合、デジタルIDシステムなど)もデータ収集の網を広げるものであり、アクセスやエラーに関して独自のトレードオフを伴う。先述の通り、プライバシーを保護し、誰もがアクセスでき、すべての層において一貫した精度を同時に実現するアプローチは、現時点では存在しない。

ここに課題の本質がある。プラットフォームが年齢確認技術に担わせようとしている広範な役割に対して、技術そのものが追いついていないのだ。

影響の範囲

Discordは月間アクティブユーザ2億人以上を擁し、ゲーマーがチャットに利用するプラットフォームとしては最大級の存在だ。ビデオゲーム産業は映画、テレビ、音楽を合わせた規模を上回っており、Discordはコミュニティを運営したいゲーマーにとって、ほぼデフォルトの選択肢となっている。

オープンソースプロジェクト、スポーツチーム、ファンダム、友人グループ、家族など、多くのコミュニティがDiscordでつながりを保っている。コミュニティや個人が誤って未成年とフラグ付けされたり、年齢確認プロセスを求められたりした場合、難しい選択を迫られることになる。顔スキャンやID確認に応じるか、それとも制限された「10代」の体験を受け入れるか、だ。プロセスを拒否した人には、機能の制限、コミュニケーションツールの縮小、そしてそれに伴う萎縮効果が生じることになろう。

最も重要な点は、Discordが年齢確認を義務づける管轄地域に住んでいるかどうかにかかわらず全ユーザに年齢確認を要求する「先行遵守」をする必要はなかったということだ。他のソーシャルメディアプラットフォームやその業界団体は、米国内の十数件に及ぶ年齢確認関連の法律に対して反対の声を上げ、Redditは今やその法的闘争を国際的にも展開している。Discordほどの市場支配力を持つプラットフォームが自主的に年齢確認を導入することは、到底容認できるものではない。

年齢ゲートに直面したら、どうすべきか

Discordは、本人確認の拡大がコミュニティにもたらす害に見合うものかどうか、再考すべきである。だが当面の間、多くのユーザが今まさに年齢確認に直面している。

そこで我々は、ガイド「年齢ゲートに直面したら、どうすべきか」を作成した。リスクを最小限に抑えるための実践的なステップを紹介している。

  • センシティブなデータの提出は最小限にとどめる。
  • どのようなデータが収集されるのか、誰がアクセスできるのか、どのくらいの期間保持されるのかを確認する。
  • 独立した、セキュリティに重点を置いた監査の証拠を探す。
  • 自撮り写真やID写真の背景に写り込む情報に注意する。

残念ながら完璧な選択肢は存在せず、あるのはトレードオフだけだ。すべてのユーザがそれぞれ固有の安全上の懸念を抱えている。こうした混乱の中で我々が目指すのは、あなた自身とあなたのコミュニティにとって最善の選択ができるよう、正確な情報を届けることである。

年齢確認システムがもたらす害を踏まえ、EFFはすべてのサービスに対し、法律で義務づけられていない場合にこうしたシステムを採用しないよう強く求める。また、Discordのアプローチをあらゆるプラットフォームの標準にしようとする法案を検討中の世界各国の立法者は、この反発を直視し、同様にその考えから距離を置くべきだ。

プライバシー、表現の自由、そして身元を明かさずにオンラインに参加する権利を大切に思うなら、今こそ声を上げるときだ。

この闘いに参加しよう。

Discord Voluntarily Pushes Mandatory Age Verification Despite Recent Data Breach | Electronic Frontier Foundation

Author: Rindala Alajaji and Samantha Baldwin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: February 12, 2026
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: Privacy