以下の文章は、電子フロンティア財団の「A Win for Encryption: France Rejects Backdoor Mandate」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

明らかに問題をはらんだ法案が進行しかけていた中で、フランス国民議会は正しい選択をした。薬物取引との戦いという名目でエンドツーエンド暗号化を無効化しようとする危険な提案を否決したのだ。内務省からの強い圧力があったにもかかわらず、議員たちは木曜の夜、SignalやWhatsAppといったメッセージングプラットフォームにプライベート会話へのスパイアクセスを強制する条項に反対票を投じた。

この投票は、デジタルライツとプライバシー、セキュリティ、そして常識の勝利である。

今回否決された法案は、薬物問題対策を口実とした監視のためのウィッシュリストに他ならない。法文には、広く信頼を失った「ゴースト」参加者モデル――バックドアではないと言い張っているだけのバックドア――が密かに書き込まれていた。法執行機関が暗号化されたチャットに密かに参加できるというこの方式は、プライベートな通信という概念そのものを根底から揺るがすものだった。セキュリティ専門家たちはこのようなアプローチを強く批判し、システム全体に脆弱性をもたらし、セキュアな通信プラットフォームへの信頼を損ない、悪用の温床となる恐れがあると警鐘を鳴らした

この条項に反対票を投じたフランスの議員たちは称賛に値する。彼らはフランスのデジタルライツ団体や技術者の声に耳を傾けただけでなく、サイバーセキュリティと市民的自由の基本原則を理解していたからだ。暗号化が守るのは活動家や反体制派だけではない。ジャーナリスト、医療従事者、虐待サバイバー、そして監視の目が増え続ける世界でプライベートな生活を送ろうとする一般市民をも守っているのである。

世界への警鐘

フランスがバックドア条項を拒絶したことは、世界中の立法機関への明確なメッセージとなるだろう。公安の名のもとに基本的権利を犠牲にする必要はない。暗号化は正義の敵ではなく、プライベートな会話をする権利をはじめとする我々の基本的人権を支えるツールである。それは現代の民主主義とサイバーセキュリティの基盤なのだ。

米国、英国、オーストラリアなどの政府が反暗号化法と戯れ続ける中、今回の決定は模範として、しかし同時に警告としても機能するはずだ。暗号化を弱体化させても社会は安全にならない。それはただ、全ての人をより脆弱にするだけである。

この勝利は必然ではなかった。市民からの持続的な圧力、専門家の知見、そして市民社会による疲れ知らずの擁護活動が実を結んだのだ。この結果は抵抗が無意味ではないことを証明した。だが予見できる将来においても、警察や国家安全保障機関の見識の浅いロビイストたちは同様の提案を――おそらく装いを変え、より注目を集めにくい立法の機会を狙って――推し進めてくるだろう。

プライバシーの擁護者たちは今日、この勝利を大いに祝おう。そして明日も、我々が警戒の目を緩めることはない。

A Win for Encryption: France Rejects Backdoor Mandate | Electronic Frontier Foundation

Author: Joe Mullin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: March 21, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: EFF (CC BY 3.0 US), Modified