以下の文章は、電子フロンティア財団の「Mad at Meta? Don’t Let Them Collect and Monetize Your Personal Data」という記事を翻訳したものである。
今、Metaに対して怒りを覚えているのは、あなただけではない。同社が最新のポリシー変更を発表した後、FacebookとInstagramの削除方法を検索する人が急増している。この変更は次期トランプ政権への配慮とみられ、ヘイトスピーチに関する規制を緩和してLGBTQ+や移民に対する攻撃的な発言を許容するものだった。
このような変更に加え、Metaには競争を阻害し、表現を抑圧し、プライバシーを侵害してきた長い歴史がある。こうした事実に嫌気が差して同社との関係を断ちたいと思っても、FacebookやInstagramのアカウントを削除したり、利用を控えたりするだけでは不十分なのが現実だ。Metaは、そのプラットフォームを使っているかどうかに関係なく、何百万ものウェブサイトやアプリを通じてユーザの行動を追跡し、ターゲット広告によって収益を上げている。Metaによる個人データの収集とマネタイズを制限したいのであれば、以下の情報を知っておく必要がある。
あなたの個人データに頼るMetaのビジネスモデル
一般にMetaはソーシャルメディア企業として知られているが、実際としては監視広告企業である。同社のビジネスモデルは、人々に関するあらゆる情報を収集し、それを高度にターゲティングされた広告販売に利用することで成り立っている。そのためMetaはインターネット上の主要な追跡企業の一つとなり、自社プラットフォームの範囲を遥かに超えてユーザの行動を監視している。AppleがiPhoneで追跡を制限する機能を導入した際、Metaは数十億ドルもの収益を失ったが、これは個人データが同社にとっていかに重要な収益源であるかを物語っている。
あなたのデータはどのようにMetaに収集されているか
Metaの追跡ツールは膨大な数のウェブサイトやアプリに組み込まれており、FacebookやInstagramを使わなければ監視の目から逃れるわけではない。世界で最もアクセスの多いウェブサイトの30%に設置されているMetaのトラッキングピクセルは、ウェブ上での行動を監視し、金融やメンタルヘルスに関するセンシティブな情報まで収集している。The Markupによる2022年の調査では、米国の主要な病院の3分の1が、このトラッキングピクセルを通じて患者の情報をMetaに送信していたことが明らかになった。
Metaの監視はオンラインに限らない。企業に対して、実店舗での購入履歴や対面でのやり取りに関するデータも送信するよう求めている。FacebookやInstagramのアカウントを削除しても、個人データの収集は続く。2018年には、アカウントを持たないユーザの情報も収集していることを認めており、これには連絡先情報や閲覧履歴が含まれる。
Metaによるデータの収集とマネタイズを制限する方法
Metaの監視システムは社会の隅々にまで行き渡っているが、個人データの収集と利用を制限する方法はある。
Metaのアカウント設定を見直す
InstagramまたはFacebookアプリを開き、アカウントセンターのページに移動しよう。
- アカウントセンターへのリンクは、両アプリの設定ページにある。見つからない場合は、FacebookとInstagramのヘルプページを確認する。
- アプリではなくブラウザを使用している場合は、accountscenter.facebook.comまたはaccountscenter.instagram.comにアクセスする。
FacebookとInstagramのアカウントがアカウントセンターでリンクされている場合は、以下の設定を1回更新するだけでよい。リンクされていない場合は、それぞれのアプリで個別に設定を変更する必要がある。アカウントセンターにアクセスできれば、以下の手順は両方のプラットフォームで同じである。
Metaはこれらの設定を意図的に分かりにくくしている。以下の手順は本記事執筆時点では正確だが、Metaは頻繁に設定を変更し、手順を複雑化している。地域によって表示される文言は異なる可能性があるが、以下の各権限をコントロールする設定は必ず存在するはずだ。
アカウントセンターで、以下の変更を行う。
1)他のアプリやウェブサイトで収集したデータに基づく広告のターゲティングを停止する。
アカウントセンターの下にある広告設定をクリックし、情報の管理タブ(地域によっては広告設定タブと表示される場合がある)を選択する。パートナーからの活動情報をクリックし、設定を確認をクリックする。パーソナライズ広告に使用しないを選択し、確認画面で確認をクリックする。
2)Meta外での広告表示にFacebookとInstagramのデータを使用させない。 Metaの広告ネットワークは、プライバシーを侵害する広告オークションを通じて広告主と他のアプリをつなぎ、その過程でより多くの収益とデータを得ている。
広告設定ページに戻り、再度情報の管理タブ(地域によっては広告設定と表示)をクリックし、Meta外での広告表示を選択、許可しないを選択してから×ボタンでポップアップを閉じる。
地域によっては、この設定は情報の管理タブのパートナーからの広告として表示される。
3)他社がMetaと共有するユーザデータとアカウントの紐付けを解除する。
アカウントセンターで情報とアクセス許可をクリックし、Meta外でのアクティビティ、次に今後のアクティビティを管理をクリックする。今後のアクティビティを切断を選択し、続行をクリックしてから、もう一度今後のアクティビティを切断をクリックして確認する。注意:この設定が反映されるまで最大48時間かかる場合がある。
注意:これにより過去の活動履歴もクリアされ、Facebookでログインしていたアプリやウェブサイトからサインアウトされる可能性がある。
これらの設定によってMetaによるデータの利用は制限されるが、データの収集自体や、他の目的での使用まで完全に防ぐことはできない点に注意が必要だ。
Privacy Badgerでトラッキングをブロックする
Privacy Badgerは、EFFが開発した無料のブラウザ拡張機能で、訪問したウェブサイトでMetaのピクセルなどのトラッカーが読み込まれるのを防ぐ。また、埋め込まれたFacebookの投稿、いいねボタン、シェアボタンをクリックで有効化されるプレースホルダーに置き換えることで、Metaによる別の追跡手法もブロックする。来週リリース予定の次期バージョンでは、InstagramとThreadsの埋め込み投稿(これらもデータをMetaに送信する)にも同様の保護機能が拡張される。
privacybadger.orgにアクセスして、ブラウザにPrivacy Badgerを導入しよう。モバイルでは現在、Android版Firefoxのみがこの拡張機能に対応している。
スマートフォンでの対策
スマートフォンでは以下の設定も重要だ。
- アプリ間でのMetaの追跡を困難にするため、広告IDを無効化する。iPhoneとAndroidそれぞれの手順はEFFのガイドを参照。
- Metaアプリの位置情報へのアクセスを制限する。FacebookやInstagramの機能に位置情報は不可欠ではなく、アクセスを無効にしても問題なく使える。iPhoneとAndroidそれぞれの設定方法はEFFのガイドを参照してほしい。
真の解決策はプライバシー法の制定にある
信頼できない企業が個人データから利益を得るのを防ぐために、我々が複雑な設定を探り当て、拡張機能をインストールしなければならない現状は異常だ。本来、個人のプライバシーはデフォルトで守られるべきものである。そのためにも、個人情報のコントロール権をMetaではなく、我々自身の手に取り戻す強力な連邦プライバシー法の制定が不可欠だ。
有効なプライバシー法が存在しない限り、Metaは新たな手法を編み出し続け、プライバシー保護の抜け道を探り、個人データのマネタイズを続けるだろう。プライバシーの問題は、単にセンシティブな情報を守るという次元にとどまらない。それは、Metaのような企業が我々の個人データを金儲けの道具として搾取することを、根本から防ぐ力を手に入れることなのである。
Mad at Meta? Don’t Let Them Collect and Monetize Your Personal Data | Electronic Frontier Foundation
Author: Lena Cohen / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 17, 2025
Translation: heatwave_p2p