以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「Pluralistic is five」という記事を翻訳したものである。
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5年と2週間前、私は共同運営者として19年間ほぼ毎日執筆していたウェブサイトBoing Boingを去った。その2週間後、つまり今日からちょうど5年前に、私は自分のブログPluralisticを立ち上げた。
以来ほぼ毎年、この節目に思索をめぐらせてきた。
以下が4周年の投稿である(大きく、野心的で、総合的な作品のために思考を整理する手段としてのブログについて)。
https://pluralistic.net/2024/02/20/fore/#synthesis
3周年(アナリティクスなしの執筆について)。
https://pluralistic.net/2023/02/19/drei-drei-drei/#now-we-are-three
2周年(「自分のサイトに投稿し、あらゆる場所でシェアする」、別名「POSSE」について)。
https://pluralistic.net/2022/02/19/now-we-are-two/#two-much-posse
今日は何を書こうか迷っていたが、昨日LAのDiesel Booksでウィル・ウィートンと開催した私の新刊発売イベントに向かう車中で思いついた(今晩のイベントはシアトルでダン・サベージと共に開催する)。
いつも素晴らしいKnow Your Enemyポッドキャストを聴いていたら、ホストたちがクリス・ヘイズにインタビューしていた。
https://know-your-enemy-1682b684.simplecast.com/episodes/pay-attention-w-chris-hayes-OA3C8ZMp
この日のインタビューは、ヘイズの新著『The Sirens’ Call』の出版記念で、テクノロジーが我々の注意力にどのような影響を与えるかについて論じていた。
インタビューは実に魅力的で、コンピュータが脳を腐らせているとかいう(ソクラテスが「読書は暗記とは違って若者の批判的思考力を破壊している」と述べたとされる逸話のような)モラルパニックじみた陳腐なものではない。むしろヘイズは、アルゴリズミックフィードを読むことがいかに空虚に感じられるか、我々の注意がそれにどう捕らわれ、時には予定以上の時間を費やしてしまうか、そしてその後、自分の注意と時間が無駄に使われたと感じることについて語った。また、登校前に子供と本を読むようなゆったりとした体験が、ニュース記事が届くたびにポケットで振動する通知によって中断されてしまうことや、重要なことに長時間注意を向けることがいかに満足感をもたらすか、そしてそれがいかに困難であるかについても語った。
ヘイズの説明を聞いて、2つのことに気づいた。第一に、彼の指摘は全くその通りで、それは恐ろしいことだということ、第二に、私はそれをほとんど経験していないということだ(もちろん、経験すれば確かにひどい気分になる)。この2つは、私のブログ執筆やソーシャルメディア習慣に密接に結びついている。
15年前、私は「注意散漫時代のライティング」という記事を公表した。デジタル世界で執筆に必要な注意力を保つ方法について書いたものだ。当時とは非常に異なる世界に生きているが、そのアドバイスは今も有効だ。
https://www.locusmag.com/Features/2009/01/cory-doctorow-writing-in-age-of.html
とくに重要なポイントとして、あらゆる通知をオフにすることを読者にアドバイスした。私はスマートフォン以前の時代からこれを実践していて、AIM、Apple Mail、Google Readerといったプログラムの設定を探し出し、新着項目の通知ポップアップを無効にしてきた。これは絶対に譲れない基本中の基本である。速報が入るたびに携帯が振動するというヘイズの話を聞いて、正直驚かされた。みんな本当にデバイスにランダムな強化スケジュールで邪魔させることを許しているのだろうか?ネットが人々を狂わせるのも無理はない。私はB・F・スキナーを全面的に支持するわけではないが、ランダムな間隔で発生する刺激には慣れることは不可能で、それが繰り返されるたびに新たなショックを受けることはよく知られていると思う。
私はニュースに好き勝手にポケットを振動させるのではなく、RSSリーダーを使用している。みんなもRSSリーダー使うべきだよ、マジで。
https://pluralistic.net/2024/10/16/keep-it-really-simple-stupid/#read-receipts-are-you-kidding-me-seriously-fuck-that-noise(邦訳記事)
私は定期的にリーダーをチェックして、どんな記事が投稿されているかを確認している。ニュースを選んで見る体験は、ニュースを一方的に押し付けられる体験とは根本的に別物だ。とはいえ、いつも賢い選択ができているわけではない。他にもっと満足感を得られることができたはずなのに、スマートフォン・スクロールの罪を犯してしまうことだってある。だが、いつどのように時事ネタを消費するかを自分でコントロールしている実感は、「公開」ボタンを押すアホな見出しライターの呼び出しに応じさせられている感覚とは真逆のものである。
これはスマートフォン時代においてさらに重要である。アプリをインストールするときは、必ず通知をオフにする。もし忘れてアプリが更新を通知してきたら(「こんにちは!以前一度だけ駐車料金の支払いに使用したアプリです!あなたがいる都市とは異なる都市の駐車スペースが2%オフになるセールを開催中で、今すぐあなたが何をしていても中断して知ってほしかったのです!」)、そのアプリの通知をオフにする。アプリの削除も検討しよう。電話が振動するのは、電話や重要なメッセージがあるときだけでいい。
重要なメッセージと言ったことに注目してほしい。私はダイレクトメッセージ機能を持つほとんどのアプリの通知もオフにしている。グループチャットは定期的にチェックするが、町の向こうや世界中の友人がランチの写真を投稿しても、地下鉄で隣の人が屁をこいたことに愚痴ったりしても、[通知をオフにしていれば]邪魔されることはない。休憩中にそれらのチャットを見るのであって、何かに取り組もうとしているときではない。クリエイティブに思索をめぐらしている最中に、ブーマーがオサマ・ビン・ラディンの言葉を引用するミレニアル世代に腹を立てたブーマー世代をからかうズーマー世代のTikTok動画を共有されて、低レベルな憤りを感じることなく、友人たちの生活を把握し続けられるのは本当によいことだ。グループで外出していて互いの位置を確認しようとしているときなど、グループチャットの通知をオンにすることが理にかなう場合もあるが、それ以外の時はオフにしておく。
もちろん、何か重要なことで緊急に連絡を取る必要のある人たち――プロジェクトを一緒に進めている人々や、妻や子供など――からの連絡は、私のポケットを振動させることができる。しかし、そういった人々全員に、緊急でない限りメールで連絡するよう伝えている。誰かに突然電話をかけることが少し不快で失礼だと感じる規範があるのをご存知だろうか。重要でないなら、誰かのポケットを振動させることについても同じように感じるべきである。そういう人々にはメールを送るように。
私は他のタスクの合間にメールをチェックし、受信トレイを整理している。もしこれが不可能に思えるなら、管理方法についていくつかの提案がある。
https://www.theguardian.com/technology/2010/dec/21/keeping-email-address-secret-spambots
長い? 要するに、メールルールを設定するということだ。
- やり取りをする全員を「知人」というアドレス帳に追加する
- 「知人」アドレス帳に登録された人からのメールを優先受信トレイに振り分け、それを通常の受信トレイとして扱う
- フィルタリングされていない受信トレイ(一度もやり取りしたことのない人からのメール)を1〜2日ごとにチェックし、返信が必要なメールに返信する(そうするとその人々は以後「知人」受信トレイに振り分けられる)
- 「unsubscribe」という単語を含むメールを「メーリングリスト」というフォルダに振り分ける
- 失礼になるから退会できないと感じているメーリングリストに登録している場合は、メッセージに自分の名前が含まれている場合を除いて、「メーリングリスト」フォルダに振り分ける(リストで自分の名前が出たときに迅速に返信できるように)
ここでのポイントは自分の注意を管理することである。緊急でない連絡をいつ受け取りたいかを自分で決め、メールアプリの自動化機能が見たい可能性が最も高いものを自動的にフラグ付けする。さらに上級者向けとして、他の人々からのあなたへのメールを管理できる「保留[suspense]ファイル」を採用すること。
https://pluralistic.net/2024/10/26/one-weird-trick/#todo
さて、アルゴリズミックフィードについて話そう。この話題についてはこれまでも散々議論されてきたが、アルゴリズムの批判者たちは、「ドーパミンループをハックできる」と主張する、気取り屋の自称邪悪な魔術師であるテックブロたちの自画自賛を信じてしまう残念な傾向にある。これは馬鹿げている。マインドコントロール光線は、ラスプーチンが提唱しようと、改心した放蕩テックブロが提唱しようと、ナンセンスなのだ。
https://conversationalist.org/2020/03/05/the-prodigal-techbro/
私はアルゴリズミックフィードを嫌悪している。その理由を説明するためには、まず私が非アルゴリズムのフィードをどれほど愛しているかを説明しなければならない。私は複数のソーシャルメディアで多くの人々をフォローしているが、トレンドトピックスやおすすめ投稿、「For You」フィードのようなものを見る必要性をほとんど感じない。確かに、ホテルの部屋でスーツをアイロンがけしながらテレビをつけっぱなしにするような感覚で、ソーシャルメディアテレビをなんとなく流しておきたいと思うことはたまにある。
大抵の場合、私にフィードされるのは、友人たちが共有する価値があると判断したものだ。その一部は「OC」(オリジナルコンテンツ)だが、大半は彼らの友人のフィードから拡散されたものである。ここで友人と言ったが、フォローしている人々の大半とは面識がない。私は彼らとパラソーシャルな関係(これは不当に悪評を受けている)を持っている。
彼らの感覚が面白いという意味で、我々は「友人」なのだ。10年以上にわたって一度も明示的なコミュニケーションを取ることなくフォローしている人々もいる。私は彼らをクールだと思い、彼らが投稿するクールなものをリポストして、私をフォローしている人々に見てもらう。リポストとは、アテンション・マネジメントを共有することに同意した他者との共同作業なのだ。
https://pluralistic.net/2021/05/27/probably/
コメント付きのリポストはさらに良い――その投稿に注目すべき理由を伝えることができるし、より重要なことに、自分の興味に合わないものを安全に無視できる理由を伝えることができる(ブルース・スターリングが印象的に「注意の節約のための告知[Attention Conservation Notice]」と呼んでいるものだ)。Mastodonが「煽り文化1訳注:Dunk Culture|引用ポストを使って他のユーザの投稿を批判したり嘲笑したりする文化。」に対する誤った潔癖さを理由に引用ポストを実装しなかったことが、致命的なオウンゴールとなった理由である。アルゴリズムによるサジェストフィードを持たないソーシャルネットワーク(それ自体は素晴らしい)を構築する場合、他者のタイムラインにブーストした内容に注釈を付けられる機能を阻止することは絶対にしてはならないのだ。
https://fediversereport.com/fediverse-report-104/
先ほど、ニュースを読みに行く体験が、ニュースを押しつけられる体験とは全く異なる(そして圧倒的に優れている)と述べたことを思い出してほしい。同じことが、自分でフォローすることを選んだ人々が書いたり拡散したりしたものからなるフィードと、アルゴリズムによって選ばれたものからなるフィードの違いにも当てはまる。これは単にアルゴリズムが投稿を選ぶ際に貧弱なシグナル(例えば「この投稿について多くの人々が議論しているように見えるか?」)を使用しているという事実よりも、はるかに深い理由によるものだ。
私にとって、アルゴリズミックフィードの問題は、AIアートの問題と同じである。アートの本質は何かを伝えることにあり、アートは何かを伝えようとする誰かによる数千もの細かな決定から構成される。それがアートに豊かさと質感を与え、印象的で奥深いものにする。AIにプロンプトを与えて絵を描かせることは、どれほど多くのプロンプトを通じて画像を洗練させたとしても、人間が描いたイラストに込められたコミュニケーション行為と比べると桁違いに少ない決定しか含んでいない。得られるのは「魂のない」もの、つまり多くの決定が行われたように見えるが、その大半はコミュニケーションの意図を持たない機械によってなされたものだ。
これは「何も意図せずに意図があるように見えること」であり、つまり「忌まわしさ[uncanniness]」の定義である。AI イラストの「意味」の大半は「体系化された意図に由来しない意味」なのである。
https://pluralistic.net/2024/05/13/spooky-action-at-a-close-up/#invisible-hand(邦訳記事)
アルゴリズミックフィードにも同じことが言える。フォローしている誰か――人間――が何かを投稿したり拡散したりするとき、そこには人間の意図が存在する。それ自体がコミュニケーション行為なのだ。単なる拡散であっても、その人が自分のコメントや引用で文脈を付け加えれば、よりコミュニケーション的なものになりうる。また、ブーストボタンをちょんと押すような、ささいなコミュニケーション行為になることもある。しかし、いずれにせよ、機械ではなく人々によって構成されたフィードを読むということは、自分が耳を傾けることを選んだ人々のコミュニケーションの意図を浴びることなのだ。もし賢明でない選択をして、陳腐な、攻撃的な、あるいは繰り返しの多いコミュニケーションをする人をフォローしてしまったのなら、フォローを解除すればよい。
最も重要なのは、自分がフォローしている人々がフォローしている人々をフォローすることだ。自分が好む趣味を持つ誰かが、見知らぬ人の投稿を拡散することで、何度も喜びや興味を与えてくれるなら、その見知らぬ人をフォローすることで、より近い存在にすればよい。これを繰り返し行い、自分を笑顔にしたり考えさせたりしてくれる人々の星座を作り上げていく。それらの人々が作り出し、拡散するものを拡散し、実質的に扱うという行為だけでも、それらは自分の皮膚や思考の中に入り込んでくる。
https://pluralistic.net/2022/07/31/divination/
これは良い意味でのフィルターバブル――「私が興味を持つ人々」のバブルである。アルゴリズミックフィードを読むことが罪だとは言わないが、アルゴリズミックフィードに依存することは、空虚感と、注意力を無駄に使ってしまったという後悔を感じるレシピなのだ。これは、TikTokのように、ハンドルから手を離してオートパイロットに完全なコントロールを委ねることがアピールポイントとなっているような場合でも、アルゴリズムが仕事を上手くこなしているときでさえ当てはまる。アルゴリズムが自分の好みを良く推測できたとしても、好きなものを見ることは、同じものを誰かの意図の結果として見ることほど、良いものでも、喜ばしいものでも、有用なものでもない。
そしてもちろん、アプリに運転を委ねてしまうと、アプリ制作者の欲望と欺瞞の標的になってしまう。例えばTikTokは「加熱ツール」を使用して、選択的に特定のコンテンツをフィードにブーストする――あなたが好むと思うからではなく、そのコンテンツの制作者をTikTokが自分の作品を配信するのに適した場所だと思い込ませるために騙すのだ。
https://pluralistic.net/2023/01/21/potemkin-ai/#hey-guys(邦訳記事)
アルゴリズミックフィード――仲介されたフィード――の価値は、仲介されない、人間のフィードを構築する手助けをすることにある。アルゴリズムを通じて好きな人々を見つけ、フォローし、その後はアルゴリズムに運転を委ねるのをやめればよい。
そして、あなたが消費する人間のフィードは、あなたが作り出す人間のフィード――つまり、世界に向けて示すコミュニケーション・ストリームのインプットとなる。「これは私が注意を向ける価値があると感じるものです。もしこれがあなたにとっても良いものなら、私をフォローしてください。そうすれば、私が多くの他者のコミュニケーション行為の下流に位置するように、あなたは私のコミュニケーション行為の下流に位置することになります」。
あなたが発信するフィードがよりコミュニケーション的であればあるほど、より多くの報酬を得ることができる。第一に、自分の注意力を吟味すること――「なぜこれが興味深かったのか?」――は、向けた注意からより多くのものを得られる、明確かつ記憶的な行為だからだ。第二に、それらの注意深い洞察についてより多く伝えれば伝えるほど、真にあなたの同類である人々、この危険と心配に満ちた世界で「私はこの見知らぬ人をフォローしている」という以上の「この見知らぬ人と私は同じ側にいる」という領域に踏み込んだコミュニティをより多く見つけることができる。
https://pluralistic.net/2021/05/09/the-memex-method/
このブログと、5回目のブログ記念日に話を戻そう。ブログもまたフィードだが、ブーストされた投稿のストリームよりもはるかに重いコミュニケーションである。このブログを始めて5年(そしてブログ生活全体では24年)を迎え、ブログは依然として私の一日の中で最も力強く、明確で、心を高揚させるものの一つであり続けている。
Pluralistic: Pluralistic is five (19 Feb 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: February 19, 2025
Translation: heatwave_p2p