国内および国際的な著作権者を代表する海賊版対策団体「Rights Alliance」の調査によると、デンマークにおける海賊版サイトへのトラフィックは、2016年から2017年にかけて67%増加したという。映画やテレビ番組の消費が大半を占める一方、IPTVサービスやストリーム・リッピングが急速に拡大している。
この20年、著作権者はインターネットの海賊版の潮流を押し止めようと格闘してきた。ますます強力な執行ツールを手にしているにもかかわらず、著作権侵害は大規模に行われ続けている。
海賊版の問題はグローバルなものであるが、権利者団体はしばしば国内に目を向け、ローカルな海賊版問題の現状を確認している。今週発表された「Rights Alliance Data Report 2017」には、デンマーク国内の海賊版に関する悲観的な現状が描かれている。
この業界調査は、SimilarWebとMarkMonitorのデータに基づき、2017年にはデンマーク国内から596の主要海賊版サイトに5億9600万回のアクセスがあったと報告する。2016年の3億5600万アクセスから67%も増加していたという。
報告書によると、この爆発的な増加は特にモバイルと相性の良いサイトやサービスに起因していると見られ、自宅や移動中に不正コンテンツを手軽に消費しやすくなっているという。
海賊版ストリーミングサイトについては、Rights Allianceは、ある特定のプラットフォーム――123movies(GoMovies、GoStreamとしても知られる)に焦点を当て、特に悪影響をもたらしたと強調する。
「このサービスの人気は2017年に急増した。2016年には4000万アクセスだったのが2017年には1億7500万アクセスにまで伸びており、337%も増加した。そのほとんどはモバイル端末からのトラフィックであった」と報告書には記されている。
123moviesは先日閉鎖を発表したが、それ以前には複数の地域でウェブサイト・ブロッキングを受けていた。
Rights Allianceによると、デンマークは世界でも有数の効果的なブロッキングシステムを有しているが、膨大な数のユーザがブロックされていない海賊版サイトにアクセスしているという。
Rights Allianceの責任者、マリア・フレデンスルントは「侵害サイトへのトラフィックは莫大であるため、一部のサイトのブロッキングが最優先となります」とTorrentFreakに語った。
「ブロッキングは、ブロックされたサイトへのアクセスを75%抑止するほどに効果的ですが、その対象をさらに広げる必要があります」
Rights Allianceはさらに、適法サービスの促進を海賊版対策における重要戦略と位置づけ、ブロックキングされたサイトにアクセスしてきたユーザを正規プラットフォームに誘導しているという。
「そのため、デンマーク文化省とISPは正規サービスを促進する『Share With Care 2』キャンペーンに取り組んでいる。たとえば、ブロックされたウェブサイトには、適法なサービスを検索できる機能や、バナーが設置される」という。
しかし、そのような措置を講じたとしても、海賊版コンテンツへの渇望が飽くことはない。2017年だけでも、500本の人気映画やテレビ番組がBitTorrentなどのP2Pネットワークを通じ、デンマークのIPアドレスから1500万回以上ダウンロードされていた。2016年には1190万回であった。
海賊版サイト全体へのアクセスが激増したということは、多くの消費者が海賊版コンテンツにアクセス可能であることを意味している。Rights Allianceによれば、DNSブロッキングを実施するデンマークでは、ユーザがISPのDNSサービスを使用していない場合にはブロッキングを回避できてしまうのだという。
さらに、最近ではVPNや同様の匿名化、回避技術への関心も高まっており、デンマークでもインターネットユーザの3.5〜5%がVPNを利用している。さらに、Rights Allianceは「クローズド」な海賊版コミュニティに注目を寄せている。
「データは閉じた(BitTorrent)ネットワークから来ている。また、Facebookやその他の(ソーシャルメディア)プラットフォームのプライベート・コミュニティの問題にも対処しなくてはならない」
「こうしたプラットフォームは扉を閉ざしているため、そこで行われている侵害行為の量について正確なことは不明である。しかし、会員社から自社のコンテンツが違法に流通していることを確認したという報告も増加しており、これらプラットフォームにおける監視活動も強化している」
トレントやウェブストリーミングといった確立した技術を利用した海賊版はいまだに大規模に流通しているが、一方で、アプリや専用プラットフォームを介してアクセス可能なIPTV型のサービスも注目を集めている。
「これらのサービスのウェブサイトへのアクセスは2017年に急増しており、1月から12月にかけて84%増加した」とRights Allianceはいう。
「ユーザはプログラムをダウンロードするために1度だけアクセスすることから、アクセス数だけでは海賊版消費の実態についてわからないが、この数字はIPTVへの関心が高まっていることを示唆している」
Rights Allianceは、この成長市場に対抗するため、ソフトウェア/アプリをホストするサイトに対するウェブ・バリケードを確立したいのだという。
また、ライブスポーツを違法に提供するプラットフォームへのアクセスも増加している。2017年には、これらのサービスに296万件、1カ月平均で25万件のアクセスがあり、年間で28%増加したという。
Rights Allianceは、デンマークでも英国プレミアリーグが手にした「ライブ」ブロッキングと同様のシステムが実装される可能性があるとTFに語った。
「すでに動的なブロッキング・システムの準備は整っています。違法なテレビコンテンツへの需要増が確認できていますので、次のステップとしては自然なことでしょう」とフレデンスルトは説明する。
細かい点ではあるが重要なポイントとなるのが、海賊版サイトへのアクセス経路だ。報告書によれば、50%を超えるユーザが、Googleなどの検索エンジン経由ではなく、直接プラットフォームにアクセスしているという。
また、Rights Allianceの報告書によれば、海賊版サイトへのアクセスを抑止するための施策として、海賊版対策分野で頻繁に見かけるいつものアプローチが実施されているようだ。
Rights Allianceは、NetflixやSpotifyのような正規サービスの利用者が増加していることから、正規サービスでは得られないコンテンツを海賊版サイトから取得していることは認めている。しかし、世界各地の海賊版対策団体と同じように、マルウェアを配布したり、違法なビジネスに関与している海賊版サイトには近寄るべきではない、と反論する。
どれほどの人がこのアドバイスに耳を傾けるかはわからないが、昨年1年間で海賊版サイトへのアクセスが67%も増加したことを考えれば、海賊行為の勢いが収まるとは考えにくく、さらに増加する可能性もある。Rights Allianceはさまざまな施策を講じてきたが、目標を達成するためにはさらなる支援が必要だと訴える。
「トラフィックデータから明らかなように、犯罪活動への対処は私たち民間企業(ISPと協力した権利者)だけでは不可能です」とフレデンスルント氏は言う。
「そのため、デンマーク政府が期限付きで設置したIPタスクフォースを恒久化すると発表したことを歓迎しています。その意味では、警察当局に多数の著作権侵害ウェブサイトをブロッキングする権限を与えることも重要かつ必要になります。現在、警察はブロッキングの権限を持っていないのです」
報告書はこちらから(デンマーク語/pdf)。
Danish Traffic to Pirate Sites Increases 67% in Just a Year – TorrentFreak
Publication Date: May 1, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Tomaž Štolfa / CC BY-NC 2.0