以下の文章は、電子フロンティア財団の「Congress Must Exercise Caution in AI Regulation」という記事を翻訳したものである。
ワシントンDCでは最近、人工知能技術(AI)で湧いている。政治家は、技術者、CEO、公益団体から夢想的なチャンスと避けがたい破滅の物語を聞き、議会がいつ、同介入すべきかを見極めようとしている。
議会はAI技術に注意を払わねばならない。AI技術の多くはとてつもない可能性を秘めている。大量の情報を抽出したり、膨大なタスクを効率的に管理することで、我々ユーザの働き方を――良くも悪くも――大きく変えるだろう。大企業や政府当局者は、AIが彼らにはコントロールし得ない形で権力を再分配する可能性を秘めていることを理解している。それが今、議会に介入を求める声が高まっている理由の1つである。
だが議会は、規制を導入するにしても細心の注意をはらい、ツールそのものよりも、ツールの使用にこそ規制の重点を置かねばならない。もし政治家がプライバシーを懸念しているのであれば、(訳注:AIの規制という間接的な方法ではなく)強力なプライバシー法を成立させるべきだ。法執行機関による顔認識の悪用を懸念するなら、その使用をこそ制限すべきだ。とりわけ、AI技術の帰結がC-3POかターミネーターかというような二元的な思考に陥ってはならない。
残念なことに、政治家というのは考えもなく動き、何もかも台無しにしたがるものである。
AI技術は委員会による規制には適さない
先日の公聴会で、数名の議員から、AI技術開発のライセンス制など、AI技術を監督する特別な権限を持つ政府独立機関の設立が提案された。
だが、それは間違いだ。歴史的に見て、こうした機関はある産業が制術の中心レベルに達し、社会・経済に不可欠な存在になったときに設立される。たとえば、独立委員会は電気通信、医療、エネルギー、金融証券を監督している。だがAI技術は発展の初期段階にあり、幅広い産業に組み込まれている。現実問題として、単一の機関が効率的に運営できるとは考えにくい。
さらに、開発者に規制当局からライセンス取得を義務づければ、自ずと停滞と捕縛を引き起こすことにもなるだろう。ロビイストの軍勢、政治献金や天下りなどを考えれば、そうした機関はコネのある大企業だけを優遇することになる。
著作権の拡張はAIの可能性を削ぐ
同様のことが、著作権改革を求める提案にも当てはまる。著作物を訓練データとして使用することはフェアユースで保護される可能性が高いにもかからわず、権利者たちはそのような使用に補償金を支払うべきだと主張している。以前に説明したように、こうした主張の多くは、生成AIへの大きな誤解に根ざしている。要するに、機械学習は著作権侵害の上に成り立っているわけではない。
そのように考えているのが権利者だけではないために、立法に向けた動きが散見されているのだろう。このような光景は以前にも見たことがある。テレビ放送局とケーブルテレビの戦いだ。放送局は、放送信号には著作権があり、ケーブル会社が使用料を支払うことなくケーブルテレビシステムに放送信号を送出していると主張した。最高裁はこれに同意せず、放送信号には著作権で保護されるものではないと判断した。そしてテレビ局は議会に「再送信」に対する補償金の権利を新たに創設するよう求めた。
だが、仮に議会がAIの訓練データに同様の制限をかけたとして、誰がどれだけの対価を得られるのだろうか? 訓練データは数十億点の情報に触れていて、一方で出力の大半は経済的な価値を持たない。誰だって、1回利用されても100万分の1円以下の対価しか得られないなどとは思ってもいないだろう。だが、アウトプットの価値を膨大な量のインプットで割ればそうならざるをえない。また、数十億のデータポイントに依存するAIツールを作るコストが持続不可能なほどに上昇すれば、誰もAIツールなど作ることはできなくなってしまうだろう。
Congress Must Exercise Caution in AI Regulation | Electronic Frontier Foundation
Author: Ernesto Falcon / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: May 24, 2023
Translation: heatwave_p2p