以下の文章は、電子フロンティア財団の「Facebook’s Dating Service is Full of Red Flags」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation
Facebookのモバイルアプリを開くと、同社の新しい出会い系サービスを試すよう勧められるかもしれない。「Facebook Dating」は昨年19カ国で開始され、まさに米国でローンチされたばかりの出会い系サービスだ。しかし、ユーザデータを不適切に扱ってきた同社の実績と、ユーザのセンシティブな情報をサードパーティのターゲット広告で収益化するという同社のビジネスモデルを考えれば、潜在的ユーザは我々の寝室を覗き見しようとするFacebookの野望に警戒しなくてはならない。

データプライバイシーは不適切でも出会いのプライバシーは守る?

今週もFacebook アカウントに紐付いた膨大な電話番号データベースが第三者のサーバに公開されていたことが発覚し、データプライバシーの扱いのずさんさが露呈したばかりだ。センシティブなユーザデータがFacebookユーザの思いも寄らない方法で流出したり、入手されていることが明らかになっているということである。だが、同社はこう言うだろう――安心してください、私たちはこうした慣行を改善しています、と。たしかに改善は歓迎したい。だが同じようなことを何度も何度も繰り返してきたのがFacebookだ。

このことはFacebookに新たな問題を突きつけている。かつて同社の強みは、友人や知人が繋がり、自分の情報を互いに(したがってFacebookとも)共有しやすくすることだった。そうして同社は何年もかけて、収集するデータの量を増やしていった。その一方で、センシティブな情報のすべてを預けられるほどには信頼できないことがますます明白になってきた。

こうしたスキャンダルを経て、この1、2年、多くのユーザは同社に意図して提供してきた情報を最小限にしようと努めている(一方でFacebookの偏在性がそれを難しくしている)。Facebook Datingは、同社がかつて約束したもの――接続性――と引き換えに、同社が最も重視する価値――あなたの情報――を差し出すという交換をさらに複雑にする。だが現時点では、我々のさまざまな情報を知り尽くしたFacebookという企業に自らの恋愛事情まで筒抜けになるということを覚悟しなくてはならない。友達リストだけでも、あなたに関するあらゆる情報を知ることができるのだ。Datingのような新しいサービスを利用すれば、Facebookは我々の恋愛に関する、とりわけセンシティブな情報――友達の誰に熱を上げているのか、パートナーに何を求めているのか、どこで出会ったのか、など――にアクセスできる。Datingを利用するのであれば、これまで何年にもわたってユーザ情報を不適切に扱ってきたFacebookが、これまで通りにこの特にプライベートな情報を扱うということに警戒すべきだろう。

泥棒猫の横恋慕(Third Wheels and Third Parties)

これは氷山の一角に過ぎない。Facebookは現在、同社の出会い系サービスを収益化していないという。しかしFacebookは、同社が収集したデータへのアクセスを望む広告主の広告費に支えられている。Facebookはこうした情報を様々な手段で収集している――たとえば「いいね!」ボタンをクリックしたとき、広告をクリックしたとき、Facebookピクセルが埋め込まれた外部のサイトを訪問したとき、実店舗に直接来店したときでさえ。出会いのプロフィールデータの価値を考えれば、同社が広告主からいつまでも隠し続けることはできないだろう。広告主は、Facebookの出会い系サービスが紡ぎ出す関係性になんとしてでも横恋慕したいと願うだろう。こうした情報の一部は、潜在的ターゲットについてさらに詳細なデータを検索するために、いずれサードパーティに提供されるようになることは疑いない。

Facebookはその実現に向けて、あなたの出会い系プロフィール情報とそれ以外のアカウントデータを統合することができる。Facebookが長年に渡り蓄積してきたユーザデータに、出会い系サービスで収集された新たなデータを加えないとは考えにくい。もし、ユーザに適切な説明を行い、その上でオプトインの同意を得ているのであれば、広告主によるデータの使用をさして心配する必要はないだろう。だが、出会い系サービスでの活動を他のオンラインプロフィールと一緒にされたくない、広告主に情報を提供されたくないという人たちが、自らの情報をコントロールするすべが存在するかどうかはまったく不透明だ。それこそがまさに悲嘆(heartbreak)のレシピである。

今年に入ってからも、Facebookはユーザが2要素認証のためだけに提供された電話番号をターゲティング広告に使用していたことが発覚し(FTCから非難され)ている。電話番号を安心して預けられないFacebookに、出会いの履歴の保護を期待できるだろうか? あなたがパートナーに求めていることの仔細をFacebook――とそのすべての広告主――に知られたくないのであれば、Facebookに仲人を頼むのは考え直したほうがいい。

Facebook’s Dating Service is Full of Red Flags | Electronic Frontier Foundation

Author: (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 10, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Matthew Henry
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