以下の文章は、電子フロンティア財団の「How to Make Sure the Tech You Use and Build Reflects Your Values」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

テクノロジーはあなたを力づけるものでなくてはならない。テクノロジーはあなたがコントロールできなくてはならない。あなたはテクノロジーを提供する企業に利用されていると感じるようではいけない。もしあなたがテクノロジーの担い手であるなら、あなたはユーザを力づける責任を負わなくてはならない。そうすれば、あなたがビルドしたものを心から誇ることができるだろう。

だが、電話会社が私たちの位置情報をストーカーに売り渡したとか、Slackが私たちの全プライベートメッセージを保持しているだとか、Amazon、Vigilant Solutions、PalantirがICE(移民・関税執行局)にどうやってデータを提供しているのかというようなニュースを定期的に目にしていると、私たちが使ったりビルドしたりしているテクノロジーをコントロールできているとはとても思えないし、ましてや私たちが直面する問題を解決してくれるような力があるとも思えない。さらに、Ciscoが中国の少数民族を監視するためのカスタムビルドのツールを販売したとか、FinFisherがエチオピア政府にスパイウェアを販売していたとか、NSOグループがサウジアラビアに米国在住のジャーナリストを監視する技術を販売しただとか、企業が外国政府に人権侵害的な監視テクノロジーを販売していると聞くにつけ、果たして私たちは語るべき言葉を持ちあわせているのだろうかと思うこともある。

だからこそ私は、Firefoxの「Tech Worker Resistance」IRLポッドキャストに参加できてとても嬉しかった。ポッドキャストでは、自らの立場を表明し、大企業に真の変化を促そうとしはじめたテクノロジーワーカーを取り上げた。こうした行動は、私たち、特にテクノロジーに精通した人々に道を指し示してくれる。ポッドキャストで話したように、従業員として、請負業者として、消費者として、私たちは誰であれ、企業が世界中に提供する強力なテクノロジーをより有効に管理させるためにできることがある。

テックワーカーの影響力:
抵抗は無意味ではない

まずはテックワーカーだ。大手テクノロジー企業、とりわけGoogle、Amazon、Microsoft、Apple、Facebookがそれぞれのサービス分野で十分な競争に晒されていないことは、誰もが知るところである。支配的なテクノロジーの囲い込み、ユビキタスネットワーク、途方もなく溜め込まれたデータが、真の競争の前に立ちはだかっている。いまやこれら大手企業は、ユーザの権限を縮小していくようなルール変更を加えたところで、自社の利益や市場シェアには何の影響もないと考えるほどに思い上がっている。だが、彼らとて激しく競争している分野がある。それは技術人材の獲得競争だ。トップ人材は企業を育てもするし、壊しもする。そのため企業は優秀な人材を獲得すべく互いにしのぎを削る。雇用した後でも、最高の人材が転職しないように膨大な時間とコストを投入する。もしあなたがどこかに勤めていて、自分たちがビルドしたツールやサービスがもたらす影響を心配しているのなら、今こそ同僚と力を合わせて、変革に向けたロビー活動を開始すべきだ。企業はあなたの仕事から利益を上げている。あなたの仕事を自国や世界中の国々で抑圧のために使わせないためには、企業にあなたの要求を突きつけなくてはならないのだ。

多くの労働者は、当然のことながら、ICEや地方の法執行機関、中国、シリア政府などが、監視技術を悪用していることに強い懸念を抱いている。このような状況で、従業員と消費者にできることは、こうした技術を不正利用しかねない相手と取引するテクノロジー企業に強力な「Know Your Customer〈顧客を知れ〉」プログラムを採用させ、市民や国民を抑圧しうるツールを販売させないようにすることだ。これは非常に合理的な考えであり、米国務省でさえ、監視装置の輸出に関して、これに沿ったガイドライン案を公表している。

Know Your Customerプログラムの要件は、輸出規制や贈賄禁止の文脈ですでに導入されている要件をベースにしており、さらに製品やサービスを販売する際に考慮しなくてはならない事柄として人権への影響を加えている。この枠組みのもとでは、テクノロジーや技術サービスを政府に直接、間接に提供する企業、特に継続的なサポートとアップグレードを必要とする技術を提供する企業は、自社のテクノロジーを誰が購入し、使用しているかを調査しなければならない。製品やサービスが人権侵害を助長するように利用される(されている)ことが確実に懸念されるのであれば、企業はシステムを悪用されないように設計しなくてはならない。それができないのであれば、取引自体を控えなくてはならない。もちろん、この枠組みは万能薬ではない。だが、これまで何ら手を打つことなく口先だけの説明を行ってきた企業に、ほんとうの意味での説明責任を果たすよう促すためには、真剣な取り組みと継続的な警戒が必要だ。しかし、Know Your Customer戦略は、抗議の声をあげた瞬間から、より良い企業行動を促すための方法を提供してくれるのである。

テックユーザの影響力:
数は力だ

しかし、あなたが従業員ではなかったならどうだろうか。消費者の数にはまだ大きなレバレッジがある。自分の価値観に反するテクノロジーへのボイコット、あるいは使用しないとの決意は、状況によっては強力な戦略となりうる。が、根本的な変化を促すには十分ではない。ではあなた自身や他者の問題を解決するために、ほかに何ができるだろうか。その1つは、消費者であることをやめ、あなたの望む未来のテクノロジーの共同クリエイターになることだ。そのために、フリー/オープンソースのオルタナティブを選択し、支援し、さらにはビルドを手助けすることができる。

より倫理的なテクノロジーを唱導するもう1つの方法は、インターネットユーザが団結して、法律や公共政策を変えることだ。EFFにはアクティビズムチームがあり、あなたの声を全国の政治家に届けるキャンペーンを立ち上げている。現在は、マサチューセッツ州による顔監視の使用中断要請、通話記録に対するNSAのスパイ活動の中止要請、真のネット中立性の回復要請などに参加できる。いまや政治家たちはテクノロジー企業に強い関心を持っている。あなたが声を届けることで、政治家たちは国内外で抑圧を可能しているテクノロジーの悪用を防ぎ、説明責任を確立するためのアプローチに注力できるだろう。

テクノロジー業界の現状については、テクノロジー業界で働いているか否かに関わらず、失望し、諦めてしまいがちだ。だが、だが諦めてしまえば、ごく一握りの有力企業に私たちの信念を踏みにじられることになる。私たちがいま、賢明な努力を惜しまなければ、生活を向上させ、活力をもたらし、世界をより良くする刺激的なテクノロジー、ソフトウェア、サービスに満ち溢れた、望むべき未来を手に入れることができるだろう。

How to Make Sure the Tech You Use and Build Reflects Your Values | Electronic Frontier Foundation

Author: Cindy Cohn (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 24, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Micheile Henderson @micheile010 // Visual Stories [nl]
カテゴリー: PrivacySurveillance