以下の文章は、電子フロンティア財団の「New Surveillance Transparency Report Documents an Urgent Need for Change」という記事を翻訳したものである。
米インテリジェンス・コミュニティ(IC)が、2021年の国家安全保障監視法制の使用状況を開示する「年次統計透明性報告書」を発表した。案の定、報告書には、情報機関の広範囲に及ぶ越権行為や、多数の米国民を監視する監視権限の濫用が続いていることが記載されている。具体的には、米国政府が外国人ターゲットの通信を大規模に監視することを可能にするFISA(Foriegn Intelligence Surveillance Act)改正法702条が、連邦捜査局(FBI)により令状なしに米国民を監視する根拠として依然として濫用されていることが報告されている。
報告書は、2020年12月から2021年11月の間に、FBIが令状なしに300万人以上の「米国民」のデータを照会していたことを明らかにしている。
702条は、国家安全保障に関わる捜査対象の外国人の監視を容易にすることを目的としているが、米国の通信・インターネットプロバイダから全てのデータを収集した結果、米国内の膨大な人びとが関わる会話が「付随的」に補足されることになったとされている。
だが、こうしたデータはプログラムの運用に「付随的」なものでは決してない。透明性報告書が示すように、各機関の「標的化」「最小化」のルールに基づいて702条の網にかかった米国民の通信にアクセスできるようになっているのである。FBIが米国民個人に関連するクエリで702条データベースを検索する回数の多さを考えれば、702条はFBIの通常の「法執行業務」に組み込まれていることがわかる。ICは国境外の国家安全保障ツールとして702条を働きかけたが、その真の狙いは、ありふれた犯罪を含め、国内の米国民を令状なしに監視することである。702条が果たすこのような機能は、政府謹製であって、バグなどではないのである。
良い知らせもある。議会は再び、この令状なしの大規模監視プログラムの是非を決断しなければならない。702条の権限は、2023年末までに立法によって更新されなければ、失効する。つまり議会議員は、情報機関による長年の越権行為を終わらせ、令状なしに我々のデータにアクセスする「バックドア」を塞ぐことができるのである。
FBIは幅広い捜査手段を持っている。FBIをはじめとするICのメンバーは、このバックドアを維持することで回避可能な脅威の概略を説明して議員を怖がらせようとするだろう。だが、702条が他の捜査手段では代替し得ないことを公的記録によって証明することを求められてはこなかった。2020年、議会は同様の理由から愛国者法215条を失効させた。215条が提供するツールは侵入的かつ違法なもので、他の狡猾なツールで得られない情報を得られるというものでもはなかったためだ。
今回の監視の透明性報告書は、このようなプログラムがICの暗躍の影で長らく存続し、蔓延してきたことを我々に思い起こさせるものである。702条が更新される可能性がある今、政治家はデータ執行法のバックドアを閉じるために立ち上がらなければならない。
New Surveillance Transparency Report Documents an Urgent Need for Change | Electronic Frontier Foundation
Author: Matthew Guariglia / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: May 18, 2022
Translation: heatwave_p2p