以下の文章は、電子フロンティア財団の「San Francisco’s Board of Supervisors Grants Police More Surveillance Powers」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

サンフランシスコ監理委員会は4対7の投票で、サンフランシスコ市警(SFPD)のリアルタイム監視権限を強化する15ヶ月間の試験プログラムを承認した。このプログラムに対しては、地域コミュニティや公民権団体、住民、サンフランシスコ弁護士会、市長や理事会の任命者で構成される文民監督機関の警察委員会のメンバーらさまざまな団体が反対していたにも関わらず、承認されてしまったのである。この条例は、市長とサンフランシスコ市警に支持され、軽犯罪や窃盗犯などの犯罪捜査を目的としてサンフランシスコ市警が市街の民間カメラのライブ映像ストリームにアクセスできるようになる。SFPDがひとたびライブストリーミングにアクセスすると、24時間にわたってリアルタイムで閲覧できるようになる。この条例は、カメラの所有者の同意または裁判所の命令に基づくカメラ映像へのアクセスを許可している。

器物損壊や信号無視などの軽犯罪は、サンフランシスコ市街のほぼ全域で日常的に発生している。つまり、この条例は本質的にサンフランシスコ市警に、街全体を無期限にリアルタイム監視下に置く権限を与えていることになる。

この条例はさらに、市警が「重要なイベント」、つまり大規模イベントや注目を集めるイベントを「警察官の配置のために」監視することをも可能にする。これは抗議活動や憲法修正第1条で保護された活動をリアルタイム監視する許可を警察に与えるもので、集会に関連してバリケードの設置や道路封鎖が必要な場合に限定される。SFPDは以前、ジョージ・フロイド殺害事件やサンフランシスコ・プライド・パレードなどのデモを監視するために、ライブストリーミングカメラにアクセスしていたことが判明しているが、この条例を承認した多数派の監理委員はこの事実を無視し続けた。

修正案

公聴会では、ヒラリー・ローネン監理委員が、条例が市民の自由に及ぼすを影響を緩和するために、2つの重要な修正案を提示した。1つ目は、死や身体的危害の差し迫った脅威がない限り、SFPDが公共の集会をリアルタイム監視することを禁止するものであった。だが、これは条例と同数の4対7で否決された。

承認された2つ目の提案は、SFPDのリアルタイム監視の実施に伴う報告義務の強化と、試験プログラムの有効性に関する独立監査人の選任を求めるものであった。この修正は、SFPD自身ではなく、独立した機関が試験プログラムのデータを評価し、この新たなリアルタイム監視の権限がいつ、どのように、なぜ用いられたかを正確に判断するために必要とされていたものだ。

この条例は一体何なのか

では、そもそもこの条例は何なのか? 公聴会では、監理委員の数名から、市民がどれほど犯罪を恐怖しているかについて述べられたが、市警にリアルタイム監視能力を与えることによって恐怖がどれほど解消されるのかについては明確な説明はされなかった。

実際、サンフランシスコ市警と条例支持の監理委員の双方が指摘した事例の多くは、リアルタイム監視が役に立つとは思えない状況であった。たとえばある監理委員はリアルタイム監視が必要な例として、小売店での窃盗や車上荒らしを挙げている。だがこの条例のもとでは、警察はまずサンフランシスコ市警の責任者に許可を得たうえで、カメラの所有者にライブ映像へのアクセスを要請しなければならない。こうした手順を踏まなければならないことを考えれば、事件が発生するまでの数秒、数分の間にアクセスできるとは到底思えない。また、警察が特定の場所で犯罪が発生するという確固たる理由が存在するのであれば、リアルタイム監視の許可取りで時間を浪費するより、警察官を直接派遣したほうがはるかに効率的だ。むしろ、交差点や薬局が常時理由もなく警察の監視下に置かれるようになることが懸念される。

さらに、シャマン・ウォルトン監理委員長が指摘するように、警察は以前からカメラの所有者に依頼して、犯罪現場のカメラの履歴映像を入手してきた。警察はこれまでずっと、事件の立証や証拠収集のために、ビジネス改善地区や商業地区の数千箇所のカメラから録画映像を入手してきたのだ。事後的に得られる録画映像では得られない何かをリアルタイム監視で得られるとして、街を積極的かつ広範囲に監視したいという警察の願望以外に何があるのだろうか。

つまり、この条例はサンフランシスコ市民の安全につながるものではなく、セキュリティ劇場(見せかけだけのセキュリティ対策)に過ぎないという悲しい結論が導き出される。たとえその積極的な監視が犯罪抑止に何の効果もなく、むしろサンフランシスコの活動家や弱い立場の人々を危険に晒すおそれがあるとしても、犯罪対策をやっている感を出して“有権者”を安心させることに意味があるのだろう。

心からの感謝

この条例には、さまざまな団体が反対の声を上げてくれた。彼らの取り組みや、パブリックコメントを送った多数のサンフランシスコ市民の努力なしには、試験プログラムの見直し規定と独立監査規定は盛り込まれなかっただろう。

また、チャン、プレストン、ローネン、ウォルトンの各監理委員が、監理委員会の会合で勇敢に立ち向かい、条例案を鋭く批判・質問し、心配する地域住民の声に耳を傾けようとしたことを賞賛したい。

監視者の監視

この条例案には、15ヶ月後に見直しが求められるサンセット条項が盛り込まれているため、我々は再びブーツを履き、メガホンを鳴らし、警察の過剰な介入からサンフランシスコ市民を守るために全力で戦わなければならない。それまでの間、我々は他の団体とともに、違反がないかどうかを監視し、サンフランシスコ市警が作成するデータを注意深く追跡していくつもりだ。そして15ヶ月後、この危険な条例の再承認を阻止するために、再びサンフランシスコで戦うつもりだ。

San Francisco’s Board of Supervisors Grants Police More Surveillance Powers | Electronic Frontier Foundation

Author: Matthew Guariglia / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: September 22, 2022
Translation: heatwave_p2p