以下の文章は、Fight for the Futureの「No Spy Cash: ACLU, Fight for the Future, and more demand any digital dollar be as private as cash」という記事を翻訳したものである。

Fight for the Future

バイデン政権が、政府支援のデジタル通貨の技術的可能性について報告したことを受けて、ACLUやFight for the Futureなどの12の市民社会組織は、デジタルドル創設のいかなる取り組みにおいても、現金と等しく包括的で、人権を尊重するものとすることをバイデン大統領に求めるキャンペーンを立ち上げた

NoSpyCash.comは、米国が100ヶ国以上の国々とともに、デビットカードと同様の機能を持ち、金融機関ではなく政府が管理するデジタルドルの創設を検討していることを受けて設立された。政府支援のデジタル通貨(digital cash)は、最低限、物理的な現金と同等のアクセス性、プライバシー、無許可性を提供する強固な公共財でなければならない。

NoSpyCash.comのキャンペーンページでは、バイデン大統領への請願書に署名したり、こうした取り組みが人権にもたらす希望と危険性について詳しく知ることができる。

このキャンペーンにより、米国政府にデジタルドルを人権と正義を前進させるよう設計・開発させる――政府や法執行機関の気まぐれで変更・無視できないような強力な法制だけでなく、強力な暗号化も含む――継続的な取り組みをスタートする。

このキャンペーンは、政府による監視と統制が組み込まれたデジタル通貨(米国造幣局のデジタルドルではなく、中央銀行が発行するCBDC[Central Bank Digital Currency:中央銀行デジタル通貨])を推進するホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)の報告書を受けて開始されたものである。

OSTPの報告について、Fight for the Futureのキャンペーン・コミュニケーションディレクター、リア・ホランド(they/she)は次のように述べる。「バイデン政権が、プライバシーをないがしろにし、政府発行のデジタル通貨に個人の身元確認を義務づけるよう勧告し続けることは、生活者の基本的人権への裏切りと同義である。とりわけ、デジタルドルは、身分証明書を持たない、あるいはプライバシー保護を優先したい周縁化されたグループへの公的給付所得、納税申告、給与の支払いに用いられる可能性があるものであり、現金が持つプライバシーとアクセス可能性を過去のものにするわけにはいかない。だが、この報告書はさらに踏み込んでいる。現在・未来の政権が犯罪の特定を目的としてあらゆる取引を監視できるような、生活者の経済活動を著しく制限しかねない技術を取り上げてもいる。これは文字通り数千年にわたって現金取引がもたらしてきたプライバシーの権利を包含する人権尊重的なデジタルドルの取り組みにとって、最悪のシナリオである。これがバイデン政権の意図するところではないなら、彼らは直ちにそのことを明らかにすべきである」。

このキャンペーンの支持者たちは次のようにコメントしている。

ジェイ・スタンレー(ACLU:シニアポリシーアナリスト、he/him)

「政府のデジタル通貨は、租税回避し続ける億万長者の取引隠蔽を見逃すものであってはなりません。しかしそれと同時に、一般市民の日常の取引のプライバシーを保護するものでもなければなりません。デジタル通貨が通常の現金よりも犯罪に強いと期待すべきではありません。その目的以上に、私達の金融プライバシーは重要なのです」

マライア・グラント(アーバン・ジャスティス・センター:セックスワーカー・プロジェクト、リサーチ&アドボカシー担当ディレクター、she/her)

「監視や検閲が盛り込まれれば、デジタル通貨の利点は失われることになります。セックスワーカーにとって、デジタル通貨を完全かつ確実に使えるようにすることは極めて重要なのです。それは一部のセックスワークが社会的スティグマであると同時に、不当に犯罪化されているためです。セックスワーカーが完全に適法な活動をしている場合でも、金融機関から差別的な扱いを受けることがあります。その使用者を監視するようなデジタル通貨の構築は、セックスワーカーを危険にさらし、公平なアクセスを棄損するものになるでしょう」

ショーン・オブライエン(イェール大学 ISPプライバシーラボ創設者、he/him)

「金融プライバシーは個人の自律性に不可欠であり、デジタル通貨へのいかなる提案であろうと、真の匿名性を市民に与えるものでなければなりません。現金が王者であるのには理由があります。政府支援のデジタル通貨は、現金と同様に覗き見から身を守るものでなければなりません。そうでなければ、社会で最も弱い立場にいる人々が、比喩的にも、文字通りにも、最も高い代償を支払わされることになるでしょう」

リア・オランド(Fight fot the Future:キャンペーン&コミュニケーション・ディレクター、they/she)

「連邦政府はあまりにも長い間、プライバシーの権利を人権として扱わず、利益優先の企業に侵食させることを許してきました。デジタルドルによって初めて、私達の生活や消費選択から侵入的で不当な監視を排除するための反撃と巻き返しを可能にするかもしれませんし、状況を10倍悪化させてしまうかもしれません。あらゆるセクターの活動家は、金融監視や検閲によってこれまで最も被害を受けてきた周縁化された人達の側に立ち、中絶患者や活動家、ジャーナリスト、そして市民全体を監視するデジタルドルを作ろうとするいかなる試みに対しても抵抗していかなければなりません」

Fight for the Future – No Spy Cash: ACLU, Fight for the Future, and more demand any digital dollar be as private as cash

Author: Fight for the Fiture
Publication Date: September 21, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Jernej Furman (CC BY 2.0)