以下の文章は、TorrentFreakの「New Bill Aims to Block Foreign Pirate Sites in the U.S.」という記事を翻訳したものである。
ゾーイ・ロフグレン下院議員が本日提出したForeign Anti-Digital Piracy Act(FADPA)により、米国での海賊版サイトブロッキングが現実味を帯びてきた。法案が成立すれば、外国勢力が運営する海賊版サイトに対して、権利者がブロッキング命令を申請できるようになる。この命令はISPに加え、DNSリゾルバにも適用される。
長きにわたり、海賊版サイトブロッキングは、米国の政治家にとって避けたい話題の1つだった。
長引くSOPA騒動の余波により、米国の権利者たちは主に他国にブロッキングを導入させることに力を注いできた。その取り組みは概ね実を結んでいる。
あれから10年以上が経ち、状況は一変しつつある。本日、カリフォルニア州選出の民主党議員ゾーイ・ロフグレンがForeign Anti-Digital Piracy Act(FADPA)を提出し、外国の海賊版サイトを狙い撃ちにするブロッキング差止命令の実現に向けた扉を開こうとしている。
「新たに改良された」海賊版サイトブロッキング法案
FADPAが承認されれば、著作権者は大手ISPやDNSリゾルバに対して、海賊版サイトへのアクセス遮断を命じる裁判所命令を取得できるようになる。この法案は既存の著作権法を改正し、著作権侵害を「主たる目的」とする「外国のウェブサイト」にターゲットを絞っている。
注目すべきは、DNSリゾルバが対象に含まれている点だ。GoogleやCloudflareといったテック大手のDNSサービスがグローバルに展開していることを考えれば、米国のブロッキング命令が世界規模で波紋を広げる可能性がある。ただし、年間収益1億ドル未満のDNSプロバイダは対象外とされる。
サイトブロッキングは60か国以上で実施されているとされるが、DNSリゾルバを対象とする法規制は異例だ。これらのサービスは以前からブロッキング要請の矢面に立たされてきたものの、標準的な措置とは言い難かった。
申請、審査、ブロッキング…
ブロッキング命令の発行には、米国の裁判所による厳格な審査が必要となる。明確な著作権侵害の証拠、適正手続き、検閲防止のための司法監督が求められ、合法的なコンテンツへのアクセスを妨げないことも確認されなければならない。
ブロキッキング要請は、以下のような複数の段階を踏むことになる。
1.申請:著作権者やライセンシーが米国地方裁判所に予備命令を申請する。ドメイン名やIPアドレスの明記が必須となる。
2.通知:申請者は、対象サイトの運営者とサービスプロバイダにの双方に合理的な通知努力を行わなければならない。
3.裁判所の審査:著作権侵害の確認など、予備命令発行の要件を満たしているかを裁判所が審査する。要件を満たせば予備命令が発行される。
4.異議申立ての機会:外国のウェブサイト運営者には30日以内に出廷し、予備命令に異議申し立てできる。
5.ブロッキング命令の申立て:予備命令が維持された場合、申請者はブロッキング命令を申し立てることができる。裁判所は、非侵害コンテンツへのアクセス保護、プロバイダへの過度な負担回避、公共の利益に反しないことを確認する。
6.最終命令:要件を満たしていれば最終命令が発行され、サービスプロバイダは15日以内に実施しなければならない。
すべての裁判所命令は発行と同時に一般公開される。具体的なブロッキング手法は規定されておらず、各プロバイダが最適な方法を選択できる余地が残されている。
称賛と批判
現行の米国著作権法でも、権利者によるブロッキング差止命令の申し立ては可能だった。だがその場合、ブロッキングの法的リスクをオンラインサービスプロバイダが負うことになっていた。そのためFADPAは、「無過失」の差止命令であることを明確にし、ISP、DNSプロバイダ、その他の仲介者を法的リスクから保護しようとしている。
この法案は、コンテンツ産業とテック産業のステークホルダーによる数ヶ月の協議を経て提出された。具体的な合意の有無は不明だが、ロフグレン下院議員は手応えを感じている。
「本法案は、安全性と知的財産権に焦点を当てつつ、適正手続きと表現の自由を守り、本質的な問題に焦点を絞って法執行を行う賢明なアプローチだ」と自信を見せる。
興味深いのは、かつてオープンインターネットを守るためにSOPAのサイトブロッキング案に猛反対したロフグレン下院議員が、今回の法案を必要不可欠な代替案と評価している点だ。
「テック業界、映画・テレビ業界と1年以上にわたって協力し、侵害者以外の自由なインターネットを守りながら、海外の著作権侵害に対する救済を提供する提案にたどり着いた」と言う。
MPA会長兼CEOのチャールズ・リブキンは、クリエイティブ産業を支援するロフグレン下院議員の尽力に感謝を示し、この法案を米国における海外の海賊版対策の切り札と高く評価している。
しかし、全員が手放しで歓迎しているわけではない。消費者団体のPublic Knowledgeは、この「検閲的な」サイトブロッキング法案をすぐさま批判した。
「海外の海賊版サイト運営者を裁判にかけるという根本的な問題解決ではなく、議会とエンターテインメント産業の仲間たちは、検閲のための包括的なインフラ構築を選んだ」とPublic Knowledgeのメレディス・ローズは述べている。
今後数週間から数ヶ月の間に、ISPや大手テック企業を含むステークホルダーからさらなる反応が寄せられるだろう。13年前のような大規模な反発は想定しづらいものの、FADPAの採決までには激しい議論が繰り広げられることは間違いない。
更新:Re:Createも法案に反対の姿勢を示し、エグゼクティブディレクターのブランドン・バトラーは次のような声明を発表した。
「FADPAをはじめとする『サイトブロッキング』提案は、ビッグコンテンツが長年熱望してきたインターネットのキルスイッチを彼らに与える。著作権は激しい論争の的であり、オンラインの表現の自由を抑圧する武器として悪用されやすいことで知られている」
一方で、Copyright AllianceはFADPAへの全面的な支持を表明した。
New Bill Aims to Block Foreign Pirate Sites in the U.S. * TorrentFreak
Author: Ernesto Van der Sar / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 29, 2025
Translation: heatwave_p2p