以下の文章は、電子フロンティア財団の「Statutory Damages: The Fuel of Copyright-based Censorship」という記事を翻訳したものである。
オンラインに投稿されるすべてのコンテンツに、不透明な政府のルールに違反していると認定した者へ最大15万ドルが支払われる懸賞金が付いている世界を想像してみてほしい――その全額がプラットフォームの負担だ。小規模なサイトは潰され、大手プラットフォームは壊滅的な賠償責任を回避するため、こうしたルールに違反する可能性があるだけの言論すら積極的にブロックし、削除し、制裁を加えるようになる。その結果、ユーザは自己検閲に走り、日和見主義者たちは告発を金儲けのビジネスに変えるだろう。
このディストピアは空想ではない。米国著作権法の壊れた法定損害賠償制度が実際に機能している姿に限りなく近いのである。
著作権法には「法定損害賠償」という制度がある。これは、被告が支払うべき賠償額――1作品あたり200ドルから15万ドルの範囲――を陪審に決定させるもので、その際、実際の経済的損失や不法利益に関する証拠を陪審が必ずしも確認する必要はない。実のところ、法律は裁判官や陪審に対し、損害額を決定するためのガイドラインをほとんど与えていない。これはオンラインの言論にとって深刻な問題である。
何らかの形で、すべての人は他者の言論の上に自らのオンライン表現を築いている。投稿を引用し、ミームを再投稿し、ニュースの画像を共有する。一部のユーザにとって、再利用はオンライン表現の核心そのものだ。パロディスト、ジャーナリスト、研究者、アーティストは、日々新しいものを生み出す過程で他者の言葉、音声、画像を活用している。こうしたユーザも、彼らが依存するプラットフォームも、著作権者がなんらかの再利用に異議を唱え、裁判所がユーザの善意の取り組みに同意しなかった場合、予測不可能で壊滅的な賠償を負うリスクを抱えている。
著作権ウィークに際して、我々は著作権法を改善する方法について議論したい。最も重要な改革の1つが、米国著作権法の壊れた法定損害賠償制度の是正である。民法の他の分野では、裁判所は陪審が認定する懲罰的損害賠償について、実際の損害額を大幅に上回ることがないよう制限を設けてきた。たとえば詐欺に対する極めて高額な陪審評決は、合衆国憲法の適正手続条項に反するとされてきた。しかし著作権の分野ではなぜかそうなっていない。一部の裁判所は、実際の損害の数百倍にもなりうる損害賠償額を連邦議会が設定できるとの判断を下している。
オンラインで24曲の音楽トラックを共有したことに対する22万2000ドルの賠償命令のように、著作権侵害に対する巨額かつ予測不能な損害賠償の認定は、オンラインプラットフォームからクリエイティブなコンテンツを過剰に、あるいは明らかに悪質な形で削除する行為を駆動する燃料となっている。気まぐれでエラーだらけの著作権執行ボット、たとえばYouTubeのContent IDは、プラットフォームに対する巨額の法定損害賠償の脅威を回避するために生み出された側面がある。そしてこの損害賠償制度ゆえに、プラットフォームは大手権利者に有利に、無実のユーザに不利な形で偏った判断をし続けている。さらに、不注意な、あるいは明らかに悪質な著作権削除要求という深刻な問題にプラットフォームが対処することをも妨げている。
訴訟をいわば経済的なロシアンルーレットに変えてしまうことで、法定損害賠償はフェアユースの境界線上における芸術的・技術的な実験をも萎縮させている。善意のフェアユースが曖昧な一線を越えて侵害と判断された場合の破滅的な損害賠償のリスクを引き受けられるのは、最大規模の企業だけだ。
「でもちょっと待って」と思うかもしれない。「フェアユースやデジタルミレニアム著作権法のセーフハーバーのような法的保護が、ユーザやプラットフォームを守ってくれるのでは?」たしかに守ってくれる――しかし法定損害賠償の脅威がその保護を脆いものにしている。フェアユースは、著作物の多くの重要な再利用を許諾なしに認めるものだ。だが、フェアユースは状況に大きく依存し、著作権が新たな用途に適用される場合にはその判断を予測しにくいことがある。善意でかつ十分な資力を持つユーザでさえ、裁判所が反対した場合のコストがあまりにも高く予測不能であるがゆえに、フェアユースの境界での実験を避けてしまう。
改革の道は数多くある。連邦議会は法定損害賠償を実際の損害の一定倍率に制限することができる。そうすれば、米国著作権法は他国の制度や、特許法・反トラスト法といった国内の他の民事法と足並みを揃えることになる。また、被告がフェアユースの善意の主張を行っている場合には法定損害賠償を適用不可とすることも可能であり、それは創造的な実験を促進する。フェアユースの制度を修正すれば、著作権法における他の多くの問題はより解決しやすくなる。クリエイターとユーザの双方にとってより公正なシステムが生まれるはずだ。
Statutory Damages: The Fuel of Copyright-based Censorship | Electronic Frontier Foundation
Author: Mitch Stoltz / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 20, 2026
Translation: heatwave_p2p