以下の文章は、Niemanlabの「Want a little less Donald Trump in your brain? Vox has a new newsletter that dials down the franticness」という記事を翻訳したものである。

あなたの頭の中でドナルド・トランプはどれだけのスペースを占めるべきだろうか?

仮にあなたが彼のファンではないとしよう。1期目の政権運営に失望し、これから実行しようとしている政策の数々に不安を感じている。つまり、あなたにとって彼の大統領職は、期待すべき変革の機会というよりは、警戒を要する脅威である。

だとすれば、メディア各社の収益を潤した2017年当時、多くの人々がそうしたように、彼の一挙手一投足や政権の動きを逐一追いかけるべきなのだろうか? 情報に関する警戒が必要な時なのか? 時計じかけのオレンジのように目を見開いていなければならないのだろうか? それとも、そうした姿勢は精神をすり減らし、怒りと不安の悪循環を生むだけなのか? これから4年はタッチグラスをして(訳注:ネットから距離を置いて)、本当に注意が必要な時にはニュースが自然と目に入ってくると考えた方が賢明なのだろうか?

Voxは、情報至上主義者からニュース隠遁者にいたる連続線上で、独自のポジションを打ち出そうとしている。昨日、トランプが就任宣誓を行ってから約90分後、VoxはThe Logoffという日刊ニュースレターを開始した。このニュースレターはニュース製品としては異例の価値を提案している(強調は筆者による)。

The Logoffは、政治ニュースに生活を支配されることなく、トランプ政権について情報を得られる日刊ニュースレターだ。毎日午後、新大統領に関する最も重要なニュースについて、可能な限り簡潔な説明を送信する。隠された主張はない。反トランプの論説でもない。何が起きていて、なぜそれが重要なのかを、最もシンプルで効率的に伝えることに徹する。

解説の対象は、時として見出しを飾っている話題かもしれない。おの一方で、見出しを占める話題に実質的な意味がない日には、表面化していないが重要な決定事項に読者の注意を向ける。そして本当に意味のあるニュースがない日には、その事実をありのまま伝える

なぜ「The Logoff」という名前なのか?

トランプ関連ニュースの洪水から読者を守るだけでなく、その日の終わりに思考をトランプから解放して、より生産的な精神状態で一日を締めくくれるように、毎号の最後に動画やポッドキャスト、記事などを1つ紹介する。

これはニュースレターの案内なのか、はたまた瞑想アプリの説明なのか(後者だとしたら呼吸法の説明が欠けているが)。確かにこれまでも、メディアは見出しをざっと眺める程度の人から、ニュース中毒者まで、さまざまなレベルの読者に対応してきた。しかしThe Logoffはさらに一歩踏み込み、多くの人々が政治ジャーナリズムを有害な情報公害のように捉えている現実を認めているのだ。

この微妙な問題について理解を深めるため、The Logoffの生みの親であり編集長を務めるVoxのシニア政治・アイデア編集者パトリック・レイスに話を聞いた。幸いにも、矢継ぎ早に出される大統領令の合間を縫って時間を割いてくれた。

「我々の目的は、政治ニュースを極めてアクセスしやすい形で提示することです」と彼はメールで語った。「もちろん、これは最大のトラフィックを生む方法ではありません。しかし、最大の理解を生み、それを通じて読者のロイヤルティを獲得できると考えています。それが我々の目指すところです。」

レイスは、自分の仕事について話すと、相手が「ああ、私はもうニュースを追わないようにしているんです。重すぎて」といった反応を示すことに慣れていたという。実際、ニュース忌避は2017年1月頃から、ジャーナリズムの研究と実践の中心的な課題となっている。

1980年代のCNNの台頭まで、ニュースに圧倒されることや「重すぎる」と感じることは、実は珍しかった。新聞や夜のニュースは特定の時間枠に収まっていた――その日がどれほど波乱に満ちていようと、最後のページを読むか、ウォルター・クロンカイトの「今日はこんなところです」という言葉で終わりを迎えた。そこには限りがあり、終わりがあった。インターネットはそうはいかない

レイスは、1日1回という配信スタイルが、見出しから適度な距離を置くための後押しになると考えている。「最初のトランプ政権期は、彼の行動をリアルタイムで理解しようと必死でした」と彼は振り返る。「彼が何か発表すると、我々は皆それを報じようと飛びつきました。1時間もすると、その発言が実態を反映していないことが判明し、約束と現実のギャップを報じようと走り回りました。すると今度はトランプが『そんなことを言った覚えはない』と否定し始め、我々はまたそれを追いかけました。結局、振り出しに戻っただけなのに、『一番乗り』を追求するあまり、読者を何度も振り回すことになってしまいました。」

The Logoffは、最後のステップまでの全過程を省略できるという賭けだ。「私は忍耐強く、トランプの発言が『ニュース』として報じるに値するかを見極めようとしています――ここでいう『ニュース』とは『読者が本当に必要とする情報』です。」

実際、彼は意味のあるニュースがない時には、その事実を伝えるという約束を真摯に守ろうとしている。確かにトランプは毎日見出しを生むだろうが、それらはすべて共有する価値があるのだろうか?「私が読者に約束しているのは、その日のニュースが必要とする以上の注意を要求しないということです。広告収入やトラフィックのために読者の関心を利用しようとは考えていません。本当に重要なことを理解してもらうという約束を守ることこそが重要なのです。」

もちろん、トランプ政権への注意を制限できる余裕があるというのは、ある種の贅沢かもしれない――その政策によって最も直接的な影響を受ける人々はそうもいかない。しかし、ニュース組織のページビュー責任者が考えるのとは異なり、より多くの時間を費やすことが、より深い理解につながるわけではない。「何時間もTwitterでドゥームスクロールをしても――私も散々経験しましたが――状況の理解にはつながりません」とレイスは言う。「むしろ、ある時点から効果は薄れ始め、最後にはマイナスにさえなってしまう。」

この哲学は、説明に重きを置き、ニュースサイクルから四分の一歩ほど引いたジャーナリズムを価値の中心に据えるVoxのような媒体にマッチしているように思える(ちなみに最近ペイウォールを導入したメディアでもある――ただしThe Logoffは有料会員限定のニュースレターではない)。レイスによれば、ターゲットは少々忙しいニュースジャンキーではなく、「ニュースから距離を置きたくなる人々に、健全で生産的な関わり方を提案すること」なのだという。

個人的には、トランプ政権2期目で自分のニュース消費パターンが1期目とどう変わるのか、まだ見えていない(Twitterの使用時間が95%減ったことを除けば)。しかし、The Logoffのようなプロダクトを求める市場が確実に存在することは間違いない。日刊のニュースまとめメールは目新しいものではないが、読者への提示の仕方には大きな意味がある――「今後4年間、あなたの精神を10%健全に保つことを約束します」というのは、かなり魅力的な売り文句ではないだろうか。

ジョシュア・ベントンはNieman Labのシニアライターであり、前ディレクター。連絡はメールjoshua_benton@harvard.edu)またはTwitter DM(@jbenton)まで。

Want a little less Donald Trump in your brain? Vox has a new newsletter that dials down the franticness | Nieman Journalism Lab

Author: Joshua Benton / Neiman Lab (CC BY-NC-SA 3.0 US)
Publication Date: Jan. 21, 2025
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: Journalism