以下の文章は、電子フロンティア財団の「Face Surveillance Is Not the Solution to the COVID-19 Crisis」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

この危機的状況のさなか、政府はCOVID-19の感染拡大を防ぐため、貴重な公衆衛生のリソースを顔識別技術の使用に注ぎ込みたいという誘惑に駆られるかもしれない。公衆衛生の危機、とりわけ世界的パンデミックは、公益を守るために特別な措置を必要とすることもあるだろう。だが侵襲的な顔監視は公益に資するものにはなりえない。

このアプローチを採用するにあたっては、広範な顔監視を実現するためのインフラの構築や、世界で最も悪質な監視技術ベンダとの大規模な政府契約が必要になる。ソーシャルメディアからスクレイピングした20億枚以上の顔画像から個人を追跡し、リアルタイムの顔監視で個人を特定するClearview AIのような企業は、すでに当局に技術を提供すべく協議を進めている。市民権の擁護団体が政府による顔識別技術の使用の全面禁止を求めてきたにもかかわらず、米国の税関・国境警備隊は現在、空港のチェックインにおいて、顔監視技術の使用が他のスクリーニングよりも衛生的だと喧伝している。

顔識別に必要な巨大インフラ(カメラ、ソフトウェア、ベンダとの終わりのない契約)は、公衆衛生の危機が去ったしても容易には解体できない。捜査機関を始めとする政府当局に、この侵襲的な技術の使用を常態化させてはならない。我々はこのスパイ技術が何をもたらすかを知っている。顔識別は一見有益に思えるかもしれないが、実際には政府による絶え間ない監視を可能にする重大な欠陥を抱えた技術なのだ。医者、弁護士、礼拝所、あるいは政治デモに参加する人びとが識別・追跡され、言論の自由や移動の自由が抑圧されることにもなりうる。さらに、不正確な識別が行われる可能性もある。

顔監視をCOVID-19の封じ込めのために新たに採用したとしても、公衆衛生の危機を克服した後も使用され続ける公算が高い。感染者の都市間の移動を追跡するために導入されたシステムが、1年後には政治デモや移民弁護士の事務所に出入りする人びとを追跡するために使用されるかもしれない。サージカルマスクをしていても識別可能なHanwang社の顔識別ソフトを使えば、政府の報復を避けるために顔を隠しながら政治デモに参加する人びとを識別することもできてしまう。こうした技術が今後どのような用途で使われうるか、緊急事態が過ぎ去ったあとの日常生活にどのように浸透していくのかを考えていかなければならない。

EFFや不安に思う市民たちは、政府による顔監視技術の使用禁止を議会に訴え続けている。この技術は現在においても未来においても我々の自由権を侵食し、自由な社会参加を損なうものであることをこちらから公職者に伝え、あなたも行動を起こしてほしい。

また、こちらのクイズでは、どの政府機関が顔識別の目的であなたの写真を使用・共有しているかを確認できる。

Face Surveillance Is Not the Solution to the COVID-19 Crisis | Electronic Frontier Foundation

Author: Matthew Guariglia (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: March 19, 2020
Translation: heatwave_p2p