以下の文章は、電子フロンティア財団の「Geofence Warrants and Reverse Keyword Warrants are So Invasive, Even Big Tech Wants to Ban Them」という記事を翻訳したものである。
ジオフェンス令状とリバース・キーワード令状は、法執行機関のデジタルツールボックスの中で最も危険で、市民の自由を侵害する悪名高いツールの1つである。こうした令状はユーザのプライバシーを侵害するため、GoogleやMicrosoft、Yahooなどの大手テック企業がこの種の令状の禁止を支持する意向を明らかにした。3社は、業界団体「Reform Government Surveillance」を通じて、ニューヨーク州議会に提出される法案を支持するとの公式声明を発表。リバース・ロケーション・サーチ禁止法(A.84/S.296)は、政府によるジオフェンス令状とリバース令状の使用を禁止するもので、EFFもこの法案を支持している。我々はGoogleのように多くのリソースと弁護士を抱える企業に対し、こうした政府の要請に抵抗するよう求めてきた。その彼らの支持は歓迎すべきことだ。
憲法修正第4条では、警察が特定の人物や場所を捜索することで犯罪の証拠が発見されるという正当な理由を証明できる場合に限って、その証拠を発見するための限定的な捜索を許可する令状を裁判所に発行させることができるとしている。一般に、テック企業が保持するデジタルデータが関連する事件では、当該企業に令状を送り、容疑者のデジタルデータの引き渡しを要求するという流れになる。
ジオフェンス令状とリバース・キーワード令状は、憲法修正第4条の制限を完全に無視した令状である。警察が器物損壊や放火などの犯罪行為を捜査する場合、その容疑者や特定のユーザアカウントを特定しなければならない。だがジオフェンス令状は、地図上の範囲を示し、ある期間にその範囲にあったすべてのデジタルデバイスを特定するよう企業に命じる。同様に「キーワード」令状では、被害者の氏名や犯罪が発生した特定の住所など、特定の検索ワードで検索した人物の身元を引き渡すよう企業に命じる。
こうしたリバース令状は、市民の自由に深刻な悪影響を及ぼす。このような令状が一般化しつつある状況では、通勤でたまたま犯罪現場近くを通行した誰もが、ある日突然警察から疑われ、監視され、嫌がらせの標的になりかねないし、強盗事件が起こった住所を何気なくGoogleで検索しただけで容疑者にされかねないのである。また、警察官の暴力に抗議したウィスコンシン州ケノーシャのデモで見られたように、抗議活動が行われた場所周辺のすべての携帯電話の識別情報を、書類1枚で企業が引き渡さなければならなくなる。EFFが法廷助言書で主張したように、犯罪とは全く関係のない不特定多数を巻き込む過剰なあぶり出しが行われることになり、これは憲法修正第4条に違反する。
各社が発表した声明では、「この法案が成立すれば、個人の容疑に基づくのではなく、特定の場所にいた、あるいは特定の検索ワードを使用した個人の情報の引き渡しを求める法執行機関の要請が増えつつある問題に、初めて対処する法律になるだろう」と記されている。これまでユーザのデータを軽率に扱い、政府の大規模監視に加担してきた負の歴史を持つ企業にとって、間違いなく前向きな一歩である。だが企業にできることは、1つの州の法案を支持することだけではない。企業は、あらゆる州でジオフェンス令状に抵抗し、ジオフェンス令状に基づく要請に関する透明性を高め、影響を受けるすべてのユーザに通知し、ユーザ自身が個人データについて意味のある選択と管理をさせなければならない。
Geofence Warrants and Reverse Keyword Warrants are So Invasive, Even Big Tech Wants to Ban Them | Electronic Frontier Foundation
Author: Matthew Guariglia / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: May 13, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Mika Baumeister