小説家のチャック・パラニュークは、長年に渡り、彼の収入を減らしているのは海賊版のせいだと考えていた。人々が彼の作品をタダで「盗んでいた」せいだと。しかし彼は先週末、海賊版とは無関係の、本当の盗人が身近に潜んでいたことを明かした。
著作権侵害の売上の関連性についての意見は、それこそ千差万別だ。これは音楽や映画、ソフトウェア、電子書籍など様々なデジタルプロダクトに共通している。
著作者や出版社でも、海賊版の害はほとんどないと考える人もいれば、深刻な脅威だと見る人もいる。
ここで明確な、あるいは普遍的な解を示すことはできないが、少なくとも、海賊版は容易にスケープゴートにされうる存在であることは確かだ。まさに、『ファイトクラブ』の作者チャック・パラニュークが身をもって体験した。
パラニュークは、自身の収入が減り続けていることについて、しばしば海賊版が原因だと言及してきた。代金を支払わずに本をコピーする――作家から『盗む』――人たちのせいだ、と。確かに、それはもっともらしく聞こえる。
「この数年、私の収入は減少している。誰かがこういった。海賊版のせいだ、と。あるいは、危機的状況に陥っている出版社のせいだ、と。出版社は印税を支払うと言いながら、一向に振り込んでこなかった」とパラニュークは記している。
しかし、この記事は改めて海賊版を非難するためのものではない。むしろ、その逆だ。彼は、自身の収入が大きく減ったことを、海賊行為や出版社のせいにしたことを謝罪した。
ある人物が「本当に」彼の金を盗んでいたことがわかったのだ。書籍のコピーが共有されたわけでも、印税の支払いが滞っていたためでもない。ニューヨーク誌がその詳細を伝えている。
犯人はダーリン・ウェッブ。名門著作権エージェントの「ドナディオ&オルソン」から数百万ドルを横領したとして逮捕された人物だった。ウェッブは米国当局に起訴され、訴状によればビデオインタビューの中で犯行を認めているという。
その第二の被害者がパラニュークであった。彼の想像していたよりはるかに身近な人物が、彼の収入減の原因だったのだ。
最大20年の禁錮刑に直面しているこの容疑者こそが、パラニュークへの郵便を転送していた人物でもあった。
「もし私に手紙を送ってくれていたなら、一旦はこの容疑者の手に渡っていたかもしれない。彼は私への郵便をまとめ、私に転送していた。彼はいいヤツだったし、男が惚れる男のようなやつだった。でもそうじゃなかった」
事件が表沙汰になったことの「プラス」面は、プラニュークが理由を知ることができたという点だ。しかし、彼が破産寸前まで追い込まれていたことを考えれば、非常に高くついたと言えるだろう。また、プラニュークは、収入減を他人のせいにして非難してしまったことを反省し、謝罪した。
「マイナス面として、出版社を罵ったことを謝罪する。また、海賊行為に対する暴言も謝罪しなくてはならない。出版社はきちんと印税を支払っていてくれたし、海賊版も小規模もなものだった」
「謹んでお詫びする」とプラニュークは語っている。
“Fight Club” Author Chuck Palahniuk Apologizes For Piracy Rants – TorrentFreak
Publication Date: June 2, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Scott Ellis / CC BY-SA 2.0