JASRAC、というか著作権管理事業については一定の理解もあるし、その意義も理解しているつもりではあるが、なんとも腹立たしい記事を目にした。

紅茶専門店TEAS Liyn-an はJASRACに著作権料を払ってません

1999年以前、著作権(演奏権)料の徴収は、放送・有線放送に加え、音楽喫茶、ディスコやダンスホール、音楽を主体とした演劇、演芸、舞踊だけに限られていたのだが、1999年の著作権法改正以降、一般の店舗でのBGM使用などについても著作権料の徴収の対象になった。

上記の記事のお店は、1999年以降に開業し、当時JASRACからBGM使用について支払いの必要はないという説明を受けていたが、今年に入って突然、JASRACとの契約書と支払請求書が送りつけられたという。しかし、契約の必要性や請求の根拠などについてはほとんど説明がなかった。店舗BGMは著作権の切れたクラシック曲を使用していたようで、そうであればJASRACに使用料を支払う道理はない。

そこで説明を聞くためにJASRAC職員に来てもらったところ、調査の結果(パブリックドメインの)クラシック曲をかけていることがわかったため「契約する必要はありません」との説明を受けたという。

ならばなぜ、支払う必要のない相手に請求書と契約書を送ったのか、という疑問が湧く。JASRAC管理曲の使用実態がないなら、何に対して著作権使用料を請求し、契約を求めたというのだろうか。JASRAC職員はろくに調査もせずに請求書や契約書を送り、相手の反応を見て調査するという、カマをかけるようなやり方をしているのだろうか。

もちろん、一方の言い分のみであるので、JASRAC側の言い分も聞かないといけないのだが、なんともgdgdな話である。

ただ、腹立たしいと思ったのはこの記事ではなく、以下の記事。

お店で音楽を流したいなら著作権使用料は払いましょう! / Founda-land (ファンダーランド)

JASRACの説明や情報に不備がある、とは言うものの、あたかも文句を言う側がとにかく悪い、ということを回りくどく、皮肉たっぷりに説明している。

たった一社のJASRACが、全国に何百万店以上もあるお店一つ一つに音楽BGMを流しているかどうか確証のある確認を取り、全て把握できていないJASRACが問題です。

今まで音楽を流していなかったお店がBGMを流すようになっているかもしれません。
それを全て把握する為には、全国に何万店あるかどうかの音楽を流していないお店を常にチェックしなければなりませんし、毎年何万件ものお店が新しくできたり潰れたり、いろんな手を使って支払いを免れようとしているお店の対応もしなければなりません。
他にも問題は山積みです。

それでも全国の大型複合施設~個人の小さなお店まで何百万件以上もあるお店で音楽が流れているか、一つのミスも許さず常に完全に把握ができていないJASRACが問題です。

JASRACは大変な仕事をしているのだから仕方ないだろう、そんなこともわからないバカは困るな的なフォローなんだろうが、たった1つだからこそミスが許されないとは考えれないのだろうか。演奏権使用料の徴収に関して言えば、JASRACは現時点では独占状態にあり、権利者のみならず、使用者も他の選択肢を選べない状況にある。その状況において、何百万もの契約を抱えているのだからミスの1つや2つあっても良いだろうとは何のおつもりだろうか。

そして、返す刀で、単に音楽にお金を払いたくないだけじゃないかとチクリ。

■著作権使用料の支払いを嫌がるお店の方に疑問があります。
音楽BGMを流すのにそんなにお金は払いたくありませんか?

それが事実であろうが、削れる経費があるのなら可能な限り削るというのは経営者としておかしな考え方ではない。確かに安ければ年間6千円で済むのは確かだが、それすらも厳しい状況もある。

もちろん、「(JASRAC管理曲を)使う以上は支払うべきだ」というのであれば、まだ話はわかる。たとえば先月、JASRACが繰り返し無断使用を注意し、裁判で差止仮処分を受けていたにも関わらず、複数回に渡ってそれを無視して使用を継続していたクラブ経営者が著作権侵害容疑で逮捕されている。そういったケースであれば、「そこまでして支払いたくないの?」とは思う(とはいえ、もはや感情的な問題になっている可能性もあるが)。

ただ、そうした不正な使用を指定たわけでもないのに、お金を支払いたくないからお金を支払わなくて済む合法的な方法を考えることが、そこまで悪しざまに言われるほどのことなのだろうか。

(引用註:顧客の滞在時間を伸ばしたり、購入意欲を高めたり、集客力をあげるなどの力を持つ音楽に)年間で6000円~5万円、1ヶ月で500円~約4200円ほど金額すら払いたくないという気持ちが理解できません。

きっとJASRACの対応に怒っているお店や、音楽がどれほどの効果を生むのかがわからない、音楽は+αでしかないと思っている人もいるでしょう。
(中略)音楽なんかただの飾りやおまけに過ぎないから使用料は払いたくないという人。

それがすべてだとは言っていない、と反論されるかもしれないが、文章全体から感じるのは、JASRACとの契約をしない店舗は音楽へのリスペクトが足りない連中だと言わんばかりである。

JASRAC管理曲だけが音楽のすべてではない。パブリックドメインの楽曲もあれば、BGM使用が許された買い切りの楽曲もあれば、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスなどで営利BGM使用できる楽曲だってある。そういった音楽を利用することが、なぜそこまで悪く言われなければならないのだろうか。

JASRACが演奏権に関しては独占状態にあり、競争が働いていないからこそ、オルタナティブが必要だというのに。

で、そんな私がおすすめするオルタナティブは、Jamendo ProのBGMサービスだ(※ここからプロモーションが始まります)。


JamendoPro

Jamendo Proはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで提供される楽曲のミュージック・ストックで、映像利用やBGM利用などの商用利用のライセンシング・サービスを提供している。BGMに関しては、ライセンシングだけではなく32ジャンルのBGM配信も行っていて、月額4.99ドルから19.99ドルとお値打ちである。USENなどより遥かに安いし、ライセンシングだけのJASRACに比べ、BGM配信までついているのだから実にすばらしい。

もちろん、多少手間を掛けて、パブリック・ドメインや商用可能なクリエイティブ・コモンズ・ライセンスなど楽曲をBGMとしてかければ、お金はかからない(クリエイティブ・コモンズの楽曲を店舗BGMとして使用するのであれば、タブレットなどで再生し、再生中の楽曲をお客さんに見えるようにするといいだろう)。ただ、それが手間だなと感じるのであれば、Jamendo Proなどを検討してみてもいいだろう。

権利にあぐらをかいて、支払いは義務だなどと考えているのであれば、その先に未来はない。使用者にとって唯一の選択肢であった時代であれば、JASRACは著作権を信託してくれる権利者だけをお客さんとして見ていればよかった。そんな時代は、もう終わるのかもね。

Header Image: Hellisp / CC BY-SA 3.0
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