ファンが製作した翻訳映画字幕を提供するサイトの運営者が、スウェーデンで起訴された。Undertexter.seは2013年夏に強制捜査を受けていた。多数の人が、サイトは何ら悪いことをしていないと考えているが、検察は、運営者が犯罪に関与しており、刑務所に送られなければならないと主張している。
海賊版映画・テレビ番組の配信やリンクを提供するサイトの運営は、非常に難しいものである。そうしたサイトは著作権者や警察、場合によっては政府の注目をひきつけることになり、遅かれ早かれターゲットにされることになる。
しかし、サイトが独自にコンテンツを制作、配信したならば、それは犯罪になりうるのだろうか。その疑問への答えは、ファンによる字幕サイトUndertexter.seの裁判なかで見つかることになるかもしれない。
Undertexter(スウェーデン語で『字幕』の意)は10年間にわたって、ある種の有益なサービスを提供していた。サイトのメンバーらは、多くの映画やテレビ番組が現地語に翻訳されていなかったため、翻訳字幕を独自に制作し、サイトで提供した。
しかし2013年夏、すべてが終わりを迎えた。ハリウッドの映画スタジオから強い圧力を受けたスウェーデン警察が、サイトの強制捜査を行い、サーバーを押収した。
「このサイトに関わる人たちは、独自のダイアログの翻訳が違法だとは考えてはいない。特に、それが無料で提供される場合には」と当時、サイト創設者のユージン・アーチーは述べている。
しかし、当局はそれを完全に否定した。アーチーは逮捕され、彼のサイトへの捜査は続けられた。それから3年ほどが経過したいま、Undertexterの設立者は著作権侵害字幕を配布したとして起訴された。
「74本の映画のダイアログを公衆に利用可能にしたUndertexter.seの運営者を起訴した」と検察官ヘンリク・ラスムソンは話す。
興味深いのは、事件化されたのが、サイトにあったすべての映画字幕ではなく、74本の映画の字幕に限定されたという点だ。検察官は、この事件をより有利にすすめるため、当時スウェーデンで商業的に公開されていなかった映画字幕などに絞り込んだとみられる。
ここで重要になるのは、制作された字幕が、合法的な視聴の目的で使われたのか、それとも、海賊版コピーを視聴する際に字幕が使われたのか、という点である。また、Undertexterのトラフィックの大半がスウェーデンのものであったことから、サイトのユーザはおそらく、海賊版コピーと字幕を合わせて視聴していたと見られる。
アーチーはサイトを設立・運営していたことを否定はせず、彼がこの活動から広告費などのお金を儲けているという主張にも反論はしなかった。しかし、彼はファンが製作した字幕の提供は犯罪ではないと彼は確信している。
驚くことでもないが、ラスムソンはこうした主張を強く否定し、この起訴の結果、禁錮刑がくだされる可能性もあると述べた。
「海賊版映画に用いられる海賊版字幕に関する事件は、これまで裁判で扱われたことはない。しかし、その規模が非常に大きいことから、刑罰は罰金で留まるべきものではなく、禁錮が妥当である。ただし、執行猶予の余地はある」とラスムソンは言う。
ファンが制作した字幕の配布行為が、スウェーデンにおいて犯罪であるかどうかは、近いうちに裁判所が判断することになるだろう。専門家も既にこの事件に関心を示しており、民法を専門とするウプサラ大学准教授サナ・ウォルクは、悪魔は細部に宿ると言う。
「この事件の核心は、文章が独立した作品か、純粋な翻訳か、という点にあります。もしスクリプトを基にしたものだとしたら、許諾のない字幕の配布は著作権侵害ということになります。しかし、自身で書き上げたものだとしたら、著作権侵害にはなりません」とウォルクは以前に記している。
「明確に境界線を引くのは難しいでしょう。しかし、字幕はそれ単独で意味を成すものとして考慮されなくてはなりません」
“Fan-Created Movie Subtitle Site Operator Facing Prison – TorrentFreak”
Publication Date: May 25, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Immo Wegmann