TorrentFreak

米著作権局は、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)がインターネット上の著作権侵害に十分対応できているかを検討しており、多数の利害関係者から意見を募集している。著作権者は自動化された著作権フィルタリングこそが必要とされていると主張している。しかし、非営利組織Engineが提出した研究論文によると、著作権フィルタリングは有害無益であるという。

20年ほど前に施行されたDMCAは、インターネット関連法として最もよく知られている。

DMCAでは、インターネット・サービスのセーフハーバーが導入された。これにより、ユーザがそのサービスを利用して著作権侵害を行ったとしても、サービス提供者が削除要請を適切に処理し、侵害を繰り返すユーザに対処する限りは、その責任を免責されることになった。

しかし近年、このセーフハーバーの不備や濫用について、方々から批判の声が上がっている。権利者側はDMCAがクリエイターを十分に保護していないと主張する一方で、デジタル市民団体らは検閲や濫用の増加を警告している。

米国著作権局はこうした懸念を解消するため、調査を実施するとともに、利害関係者にパブリックコメントを提出するよう求めている。そこに参加する組織の1つに、スタートアップとテック業界の利益を代表する非営利団体Engineがある。

これまで複数の著作権業界団体が、著作権フィルタリングこそが効果的かつ効率的な著作権侵害対策だと主張してきた。著作権者の負担を軽減し、海賊版の「取り締まり」をインターネットサービス側に委ねる提案でもある。しかし、おいそれとテクノロジー産業がそれに同意するわけではない。

Engineはプリンストン大学のニック・ファームスター教授と共同で、自動フィルタリングがソリューションとして不完全であることを示した。「The limits of Filtering(フィルタリングの限界)」と題された研究報告書には、さまざまな欠点が列挙されている。

「危うい義務的なコンテンツ・フィルタリング規制を検討する前に、政策立案者はフィルタリング技術固有の限界を理解する必要がある」と彼らは報告書で述べている。

「過去20年にわたって意味のあった著作権政策を覆し、OSPに高額で、容易に回避可能で、効果が限定的なツールを実装するよう義務づけることは、スタートアップやユーザのみならず、クリエイター自身にも甚大な不利益をもたらすことになる」

研究者たちは、フィルタリングの効果範囲が限定的であることを指摘している。たとえば、ファイル形式は絶え間なく変化しており、マスクすることも可能である。プラットフォームが音声ファイルのみを扱う理想的な環境であったとしても、フィルタリングは完全には機能しない。

報告書では最近の音楽電子指紋システムEchoprintであっても、1〜2%は誤って識別してしまうことを示している。それほど多くはないと思われるかもしれないが、サイトに数百万のファイルが保存されているとなればどうだろうか。

数万のファイルが誤って削除されてしまうことになる。理想とは程遠い状態だ。

「報告されたエラー率を考慮すると、最新の電子指紋アルゴリズムであっても、100のオーディオコンテンツにつき1つから2つ程度は誤って識別する可能性がある」

「したがって、自動フィルタリング手続きで1〜2%の偽陽性率が同様の理由で問題になる。そのような手法は、一定の割合で適法なコンテンツをフィルタリングしてしまい、表現を制限することになってしまう」

これは理想的な環境での話だ。現実はもっと複雑である。たとえば自動フィルタリングツールは、フェアユースを判定することはできない。また、コンテンツのタイプによっては、そもそも適当なフィルタリングの選択肢が存在していない。

さらに、Engineの調査では、インターネットサービス全般への悪影響が予測される。たとえば、小規模スタートアップは、関係するコストが問題になることがある。中規模のファイル共有サービスでは、1万〜2.5万ドルのコストがかかる。

フィルタリング要件は、スタートアップにとって不確実性をはらんだものになる。彼らはフィルタリングを義務づけられるのか、どの程度求められるのか、どこまでの電子指紋技術であれば基準をクリアできるのか。

最後に、見て見ぬふりをされている大きな問題がある。たとえフィルタリングが魔法のように100%機能したとしても、司法権の及ばない外国に拠点を置く多数の不正サイトが侵害コンテンツの提供を続けるだろう。

この報告書の共著者でEngine事務局長のエヴァン・エングストーム氏はTorrentFreakに、国会議員たちが真剣にこの懸念を検討すべきだと話す。それは米著作権曲だけではなく、著作権侵害防止フィルタリングの義務づけを具体的に検討している欧州委員会(EC)も同様だ。

「あらゆるフィルタリング技術は、ごく限られた範囲のコンテンツファイルしか処理できず、暗号化やちょっとしたファイル操作によって簡単に回避できてしまいます。ECが考えているほど、電子指紋技術は安価ではなく、特にスタートアップには重い負担になります」とエングストーム氏は言う。

「この論文が、フィルタリング技術を理解するうえで必要な技術的、経済的エビデンスを政策立案者に提供し、このフィルタリングの義務づけ提案を再考してくれることを望みます」
‘Piracy Filters Are Expensive and Far From Perfect’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 29, 2017
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Luca Sartoni (CC BY-SA 2.0)