以下の文章は、2025年9月25日付けのコリイ・ドクトロウの「The real (economic) AI apocalypse is nigh」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

あなたと同じように、私もAIの話にはもううんざりしている。あなたと同じように、私もAIの議論に引きずり込まれ続けている。だがあなたとは違って※1、私はこの夏、なぜAIについて書くのがうんざりなのかについての本を書いた※2。Farrar, Straus and Giroux社から2026年に刊行される予定だ。

※1 たぶん

※2 『The Reverse Centaur’s Guide to AI[逆ケンタウロスのためのAI批判ガイド]』

一週間前、その本の内容を講演にまとめ、コーネル大学のADホワイト招聘教授として年次ノルドランダー記念講演で発表した。AIについて講演するのはこれが初めてで、どう受け止められるか不安だったが、ありがたいことに好評を博し、活発な質疑応答に発展した。その中で、ある若者がこんなことを言った。「つまり株式市場の3分の1が、利益を出す見込みのない7つのAI企業に縛られている。これはバブルであり、崩壊すれば経済全体を道連れにする、ということですか?」

私は答えた。「ええ、その通り」

彼は言った。「わかりました。でも、我々にはそれに対して何ができるんでしょうか?」

そこで私は本の論旨を改めて説明した。AIバブルの原動力は、自らの市場を制覇しこれ以上の成長余地を失った独占企業群であり、彼らは別のセクターに進出することで成長を継続できると投資家に信じ込ませようと必死になっている――「動画へのピボット」、暗号資産、ブロックチェーン、NFT、AI、その次は「超知能」へ。さらに、AI企業が売り込むトップラインの成長とは、大半の労働者をAIに置き換え、残った労働者をAIのお守り役(「ヒューマン・イン・ザ・ループ」)に配置転換するというもので、これはうまくいかない。たしかに、AIはあなたの仕事をできない。しかしAIのセールスマンは、あなたの仕事をできないAIであなたを置き換えるよう経営者を説得することなら100%できる。そしてバブルが弾けたとき、大赤字の「基盤モデル」はシャットダウンされ、あなたの仕事をできないAIは去っていく。しかもあなたはとっくにいなくなっている――再訓練されたか、引退したか、「意欲喪失」で労働市場から退場しているか。結果、誰もあなたの仕事をしなくなる。AIとは、社会という建物の壁に吹き付けられたアスベストであり、子孫たちは何世代にもわたってそれに煩わされることになる。

https://pluralistic.net/2025/05/27/rancid-vibe-coding/#class-war

我々にできる唯一のこと(と私は言った)は、AIバブルを一刻も早く弾けさせることだ。これ以上事態が進行する前に食い止め、社会的・経済的負債の蓄積を阻止するのだ。そのためには、AIバブルの物質的基盤――欠陥だらけのAIがあなたの仕事をこなせるとうそぶいて成長ストーリーを作り上げること――に狙いを定めなければならない。

「わかりました」と若者は言った。「でも、暴落に対して我々に何ができるんですか?」 彼は明らかに深刻に心配していた。

「それについては、もうどうしようもない。すでに確定してしまった。もし別の政権であれば、雇用保証制度に資金を投じて危機を脱するかもしれないが、トランプがそうするとは思えない――」

「でも、何ができるんです?」

こんなやり取りが何度か繰り返された。この気の毒な若者は同じ質問を声のトーンを変えながら繰り返し、まるで演技コーチがイントネーションだけで悲嘆の5段階を実演しているようだった。居心地の悪い瞬間で、来たるべきAI(経済)黙示録と、6桁台半ばの借金を背負って灰燼と瓦礫の経済に卒業していくこの若者の運命を思い、会場のあちこちで引きつった苦笑が漏れた。

私は(経済)AI黙示録が来ると確信している。これらの企業は利益を出していない。利益を出すことができない。数千億ドルもの他人の金を吸い上げて火をつけ、どうにか明かりを灯し続けているだけだ。いずれ出資者たちは投資のリターンを求めるようになり、それが得られなければ、数千億ドルの資金の流れを止めるだろう。永遠に続けられないものは、いつか必ず止まる。

これはウェブの黎明期やAmazonの初期、あるいは赤字から黒字に転じた他の大成功企業とは話が違う。それらはすべて優れた「ユニットエコノミクス」を備えた事業であり、技術が世代を重ねるごとにコストが下がり、顧客が増えるほど利益率が高まった。AI企業はといえば――エド・ジトロンの記憶に残る表現を借りれば――「ドッグシット・ユニットエコノミクス」だ。AIの世代が進むごとにコストは膨大に膨れ上がり、新たな顧客が増えるたびにAI企業の損失はさらに拡大する。

https://pluralistic.net/2025/06/30/accounting-gaffs/#artificial-income

今週、他ならぬWall Street Journal紙が、エリオット・ブラウンとロビー・ウェランの取材による、AI企業の壊滅的な財務状況に関する詳細な記事を掲載した。

https://www.wsj.com/tech/ai/ai-bubble-building-spree-55ee6128

WSJの記者たちはAIバブルを他のバブル――たとえばWorldcomの粉飾にまみれた光ファイバー狂騒曲(同社CEOは投獄され、最終的に獄中死した)――と比較している。そして彼らは、AIバブルは近年の他のどのバブルよりもはるかに巨大だと結論づけた。

データセンター建設の財務はなんともバカバカしい。莫大なNvidia製GPUを担保に融資を受けているデータセンター企業すらある。これは異常なことで、シリコンチップほど急速に価値が下落するものは(獲れたての魚を除けば)ほぼ存在しない。AIデータセンターで使われるGPUに至っては、その下落速度は3倍に跳ね上がる。54日間に及ぶ1回のトレーニングで数万個のチップが焼損するのが常だからだ。

https://techblog.comsoc.org/2024/11/25/superclusters-of-nvidia-gpu-ai-chips-combined-with-end-to-end-network-platforms-to-create-next-generation-data-centers/

資産を搾り取るとは、まさにこのことだ!

だがこれは、AIバブルにおける粉飾のほんの表面をなぞったに過ぎない。Microsoftは自社サーバへの無償アクセスを提供する形でOpenAIへの「投資」としている。OpenAIはこれを100億ドルの投資として計上し、その「トークン」をMicrosoftのデータセンターで引き換える。するとMicrosoftはこれを100億ドルの売上として計上するのだ。

AI業界ではこれが常態化している。Nvidiaがデータセンター企業に数百億ドルを「投資」し、その企業が投資額をそっくりNvidiaのチップ購入に充てるのは日常茶飯事だ。同じ資金の塊が、密接に関連し合う企業間でエネルギッシュにキャッチボールされ、企業はそれぞれに、投資として、資産として、あるいは売上として(あるいはその全部として)計上している。

WSJ紙は、Sequoiaのベンチャーキャピタリストであるデイヴィッド・カーンの言葉を引用している。彼によれば、AI企業が黒字化するためには、現行のデータセンターとGPUの寿命が尽きるまでの間に、我々に8000億ドル分のサービスを売らなければならないという。途方もない金額であるだけでなく、期間もきわめて短い。AI業界のトップ自身が、これらのデータセンターやGPUは稼働を始めた瞬間に事実上陳腐化すると公言しているのだ。マーク・ザッカーバーグは、AIへの誤った投資で「数千億ドル」を無駄にする覚悟があると言っている。

https://www.businessinsider.com/mark-zuckerberg-meta-risk-billions-miss-superintelligence-ai-bubble-2025-9

Bain & Companyの試算では、今日のAI投資を黒字化させるには、このセクターが2030年までに2兆ドルを稼がなければならない(WSJ紙は、これがAmazon、Google、Microsoft、Apple、Nvidia、Metaの売上を合算した額を上回ると指摘している)。

https://www.bain.com/about/media-center/press-releases/20252/$2-trillion-in-new-revenue-needed-to-fund-ais-scaling-trend—bain–companys-6th-annual-global-technology-report

ではAI業界はどれだけ稼いでいるのか。Morgan Stanleyによれば年間450億ドルだ。しかしこの450億ドルは、AI業界自身の極めて水増しされた帳簿に基づいている。そこでの年間売上は実際には年率換算売上であり、これは最も実績の良かった1か月を選んで12倍するという会計上のペテンにほかならない。その月が異常な外れ値であっても、おかまいなしだ。

https://www.wheresyoured.at/the-haters-gui

業界の寵児であるCoreweave(データセンターを転貸する仲介業者)は膨大な負債の山の上に座っている。その負債を担保するのは、返済期限のはるか前に切れるテック企業との短期契約だ。数年以内に新規顧客を大量に見つけられなければ、債務不履行に陥り崩壊する。

今日のAIバブルは、19世紀英国の鉄道バブルのような歴史的な国家破壊的バブルと比べても、より多くの国富を吸収し、経済活動により大きな影響を及ぼしている。広く議論されたMITの論文では、AIを導入した企業の95%が成果ゼロか損失を被っていたことが明らかになっている。

https://www.technologyreview.com/2019/01/25/1436/we-analyzed-16625-papers-to-figure-out-where-ai-is-headed-next

あまり知られていないシカゴ大学の論文では、AIは「労働者の所得、記録された労働時間、賃金に有意な影響を与えていない」と結論づけている。

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5219933

永遠に続けられないものは、いつか必ず止まる。トランプはAI企業を救済するかもしれないが、いつまで持つだろうか。これらの企業は人類史上ほぼ他に類を見ない速度で金を燃やし続け、しかし目をみはるような成果はほとんどない。

コーネル滞在中、大学のAI戦略の責任者の一人が、大学としてAIについて何をすべきかと尋ねてきた。私は、バブル崩壊後に残される生産的な残滓を吸収する計画を立てるべきだと答えた

https://locusmag.com/feature/commentary-cory-doctorow-what-kind-of-bubble-is-ai/

GPUを10分の1の価格で買え、熟練した応用統計学者を買い手市場で雇え、ほとんど最適化されておらず膨大な改善の余地を持つ極めて有望なオープンソースモデルが大量に転がっている――そんな未来に備えるのだ。

AIでできる有用なことはたくさんある。だがAIは(プリンストン大学のアルヴィンド・ナラヤナンとサヤシュ・カプール――『AI Snake Oil』の著者――が言うように)ごく普通のテクノロジーである。

https://knightcolumbia.org/content/ai-as-normal-technology

「見るべきものはない、先に進め」という意味ではない。AIは「差し迫った超知能」の兆しではないし、「人間並みの知性」をもたらすものでもない、ということだ。

AIは便利な(時にはとても便利な)ツールの福袋であり、労働者が使い方と使うタイミングを自分で決められる場合に、労働者の生活を改善しうる。

AIについて最も重要なのは、その技術的な能力や限界ではない。最も重要なのは、投資家向けのストーリーとそれに続く熱狂が、何億人、あるいは何十億人もの人々を傷つける経済的大惨事への準備を整えてしまったということだ。AIが目覚めて超知能になり、あなたをペーパークリップに変えるようなことはない――だがAI投資病に罹った富裕層が、あなたをはるかに貧しくすることは、ほぼ確実である。

(Image: TechCrunch, CC BY 2.0; Cryteria, CC BY 3.0; modified)

Pluralistic: The real (economic) AI apocalypse is nigh (27 Sep 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: September 27, 2025
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: AI