ヴィント・サーフ、ティム・バーナーズ・リーを始めとする数十名のコンピュータの専門家が第13条に反対を表明
欧州の著作権提案を決する投票が6月20-21日に迫る中、70名を超えるインターネット、コンピューティングの重鎮たちが、インターネット・プラットフォームにアップロードされたコンテンツの自動フィルタリングを義務づける危険な条項、すなわち第13条に反対する意見を表明した。インターネットのパイオニアであるヴィント・サーフ、World Wide Web発明者のティム・バーナーズ=リー、Wikipedia共同創設者のジミー・ウェールズ、Mozillaプロジェクト共同創設者のミッチェル・ベイカー、暗号・情報セキュリティ専門家のブルース・シュナイアー、Internet Archive創設者のブリュースター・ケール、ネット中立性の専門家ティム・ウーらは、本日公表された共同声明で次のように述べている。
第13条は、インターネット・プラットフォームにユーザがアップロードする全てのコンテンツを自動的にフィルタリングすることを義務づけることにより、共有とイノベーションのためのオープン・プラットフォームであるインターネットを、ユーザを自動的に監視し、コントロールするためのツールに大きく変貌させようとしている。
第13条が廃止になる公算は薄まりつつある。先月末までは、(欧州連合理事会によって代表される)加盟国が譲歩案を提出するという希望があった。しかし、彼らの最終交渉要請は事態をより悪化させた。
いまやこの提案を打ち破る最後の希望は、欧州議会に託された。6月20-21日に予定されている欧州議会法務委員会(JURI)で、この提案の採決が行われる。そこで否決されれば、戦いは欧州議会と欧州委員会、欧州連合理事会との交渉の場に移されることになる。しかし、そうならなければ、欧州市民が利用するすべてのユーザ・コンテンツ・プラットフォームに、アップロードコンテンツへの自動フィルタリングが義務づけられることになる。すでにコンテンツをフィルタリングするコンテンツIDシステムを導入するYouTubeのような最大手のプラットフォームにはほとんど影響はないだろうが、中小規模のプラットフォームやスタートアップにとっては、巨大な参入障壁が作り出されることになる。彼らがこの欧州法を回避するためには、運営拠点を海外に移転せざるを得なくなるだろう。
アップロード・フィルタリングが確立されたプラットフォームにおいて、ユーザは動画や音声、テキスト、さらにはソースコードに至るまで、あらゆる貢献が監視される。自動システムが著作権侵害と思しきコンテンツを検出した場合には、即座にブロックされることになる。誤検出が生じることは避けられない。自動化されたシステムは、著作物の使用が引用やパロディのような欧州著作権法の制限や例外に該当するかどうかを確実に判定することはできないのだ。
さらに、こうした例外規定は欧州全域で一貫しているわけではなく、米国のようにフェアユースが広く認められているわけでもないため、ミームやマッシュアップ、リミックスなどの害のない著作物の使用までもが、たとえ著作権者が異議を申し立てていなくとも、技術的に著作権侵害として判定されることになる。もし、自動システムがこれら技術的侵害を監視し、排除してしまえば、欧州における表現の自由は、著作権法の改正を必要とすることなく、大幅に狭められてしまうことになる。
アップロード・フィルタリングの提案は、著作権の目的を見誤っている。著作権は、クリエイターが作品を使用されるごとに補償を受けられるようデザインされているわけではない。イノベーションや表現を通じた公益を促す取り組みの一環として、クリエイターにインセンティブを与えることを目的としているのだ。しかし、新たな世代が過去の貢献を構築し、コメントできるよう著作権を制限しなければ、この公益は叶えられない。こうした制限は、フェアディーリングのように適法なものであり、無害な使用に許容範囲を設けるという実用的なものでもある。しかし、自動化されたアップロード・フィルタリングはその双方を損ねてしまう。
本日公表された書簡には、次のように記されている。
私たちは、インターネット上で作品を使用されたクリエイターが公正な対価を受けられるような手段を検討するという趣旨には賛同する。しかし、インターネット・プラットフォームに監視と検閲のための自動化インフラストラクチャを埋め込むことを義務づける第13条を支持することはできない。インターネットの未来のために、この提案の削除に投票することを強く求める。
著作権ロビイストが想像上の『バリュー・ギャップ』のソリューションとして入れ知恵したことで始まったものが、今や私たちが知るインターネットの未来のとてつもない脅威となっている。インターネットの運営を支え、維持してきた人々が、とてつもない驚異だと認識しているならば、我々もまた立ち上がり、注視しなくてはならない。
あなたが欧州に在住していたり、欧州に友人や家族がいるのであれば、これがアップロード・フィルターを回避する最後のチャンスとなる。こちらをクリックして、行動を起こしてほしい。キャンペーンサイトでは、あなたの地域の欧州議員に電話、メール、ツイートを送ることができる。遅きに失する前に、全世界のインターネットを危機に晒す提案を阻止するよう訴えてほしい。
Publication Date: June 12, 2018
Translation: heatwave_p2p