フランス政府は海賊版ストリーミング対策の強化を検討しているが、同国の海賊たちはますます適法なサービスを選択するようになっている。単にフランス国内の海賊ユーザが減少しているというわけでなく、海賊版の消費が減り、Netflixなどの合法的なストリーミングサービスへの加入が増えているようだ。
フランスはこの10年超の間、海賊版対策の最前線で戦ってきた。
同国は世界で初めて段階的レスポンスシステム「Hadopi」を導入した。これにより、BitTorrnetなどで繰り返し海賊版コンテンツを共有するユーザは、インターネット接続を遮断されるリスクを負うことになった。
今日、この種のアプローチは以前ほど効果的ではなくなってしまった。インターネット上の海賊版の大半が、P2Pファイル共有からストリーミングに移行してしまったためだ。海賊版ストリーミングを利用するユーザはもはや海賊版ウォッチドッグには追跡できない。
そこでフランス政府は、国内海賊版ストリーミングサイトのブラックリスト作成を検討している。しかし興味深いことに、このような措置を実施せずとも、インターネット上の著作権侵害は減少しているようだ。
コンサルティング会社「EY」が公表したレポートによると、フランス国内の海賊版ユーザの数は、2016年の1160万人から2017年には1060万人に減少し、1年で8%減となったという。また海賊ユーザがダウンロード/ストリーミング視聴した海賊版コンテンツの消費量も前年に比べ4%減少した。
こうした海賊行為は、主に映画産業がターゲットになっており、海賊版消費者の94%が海賊版映画のダウンロードやストリーミングを認めている。ハリウッドによって好ましくないニュースではあろうが、この報告書には彼らにとっての救いもある。
実際、海賊ユーザたちはますます「合法的な選択肢に向かいつつ」あるようだ。もちろん、彼らが完全に海賊版から足を洗ったというわけではないのだが、コンテンツのへのアクセスにお金を払うという意識が高まりつつあるとは言えるだろう。
この1年で、ビデオ・オンデマンド・サブスクリプションに未加入の海賊ユーザは30%近く減少した。その結果、海賊ユーザの半数以上が、合法的な映画ストリーミングサービスにお金を支払うようになっている。
さらにEYによると、テレビ番組の海賊版視聴も大幅に減少しており、これも有料ストリーミングサービスの普及から説明がつく。
「テレビシリーズの海賊版が大幅に減少していることが確認された。これはSVoDプラットフォームのブームと無関係ではない」とScreenDalyは報告書から引用している。
その変化を主導するのがNetflixだ。このストリーミングサービスは昨年、海賊版消費者の間で大幅に利用が増加している。
「Netflixはこれまでも合法的なサービスに加入していない海賊版の消費者を引き込んでいたが、2017年には、Netflixに加入する海賊版消費者の数は前年比で20%増加した」と報告書にはある。
このことは、映画会社やその他コンテンツプロバイダが、正規ストリーミングプラットフォームで彼らの作品を幅広く提供することこそが目指すべきゴールであることを示唆している。理想的には、遅れることなく、そして手頃な価格で。
もちろん、すべてがバラ色というわけではない。報道によれば、残る1000万人超の海賊版ユーザたちは、1人あたり100ユーロ以上、合計で約11億8000万ユーロ(約1535億円)の損害をもたらしているという。
裏を返せば、それだけNetflixには市場開拓の余地があるということだろうか……。
Pirates Are Increasingly ‘Going Legal’ in France – TorrentFreak
Publication Date: July 7, 2018
Translation: heatwave_p2p
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