Electronic Frontier Foundation

7月、数百万の欧州市民が、ソーシャルメディアに著作権フィルターを課し、ニュース記事へのリンクに使用料を支払わせ、さもなくば訴えることを可能にする新聞社のための新たな権利を創設する著作権指令案に反対票を投じるよう欧州議員に訴えた。欧州議員はその呼びかけに耳を傾け、通常の手続きを否決し、条文の再投票を実施することを決定した。

現在、彼らはさらに複雑な選択を迫られている。その内容を精査する時間はもはや1週間に満たない。

水曜の正午(中央ヨーロッパ標準時)、751名の欧州議員は「デジタル単一市場における著作権」指令の203の修正案に投票を行う。そのなかには、真っ当な改革案もあれば、一見すると差し障りのない文言に見えて、以前に拒絶された草案にあった著作権フィルターやリンク税をさらに強化するものも含まれている。

あなたがインターネットの仕組みを理解する欧州市民――あるいはそうした知り合いがいる――であれば、欧州議員にどの選択肢を、どの修正案を選ぶべきかを正直に教えてあげられるだろう。

あなたの訴えは、音楽業界やマスメディアが仕掛ける新たなロビー活動や、インターネット大手の葛藤を抱えた曖昧な態度、さらには激しくロビーされている偽りの譲歩案と戦わなければならない。だが、状況は7月よりもだいぶマシだ。我々は7月の戦いで勝利した。さらにもう1度勝利しなくてはならない。

ここでは問題の所在を明らかにし、あなたがいま欧州インターネットの目前に迫る氷山を避けるために何ができるかをお伝えしたい。

何が問題なのか

欧州議員がなすべきは、欧州連合の別の統治機構である欧州委員会と欧州理事会の提案を修正――願わくば改善――することである。残念なことに、当初から酷かった「デジタル単一市場の著作権」指令は、修正案によって更に酷くなった。著作権フィルターの義務づけ(第13条)や、報道メディアにニュース記事のリンクテキストをライセンスし、コントロールする新たな権限(第11条)を与える文言が盛り込まれている。

修正案の文言の多くは、アクセル・ヴォス議員が法務省委員会で提出したものだ。7月5日、議会はヴォス議員の修正を加えず、元の提案に差し戻すことを決定した。そして、各会派に新たな修正案の提出を求め、9月12日にその投票を実施することとなった。

これら修正案の提出締切は、投票日のちょうど1週間前、9月5日であった。まさにその日こそ、欧州議員とそのアドバイザーが、欧州委員会・理事会の元の条文案に寄せられた200を超える修正案を目にする最初の日であった。

ヴォス議員の偽りの「妥協」案

アクセル・ヴォス議員が反対派との妥協点を見つけるという仄かな希望は、先週彼が「譲歩案」を公表したことで消え去った。ヴォス議員は取ってつけたように「オンライン百科事典」と「オープンソースコード共有サイト」を彼のプランから除外し、問題は解決されたと主張した(WikipediaとGithubはこれを是としておらず、依然として第13条への反対の声を上げている)。この変更は一見する友好的に見えるが、むしろその逆で、第13条をさらに改悪するものだ。

ヴォス議員の第13条修正案には、著作権フィルターの明示的な言及は含まれてはいない。ただし、それを導入しなければ、コミュニティコンテンツを共有するウェブサイトが生き残れないような文言に変更されている。たとえ、最大限にユーザをフィルタリングしたとしても、適法状態を維持するのは極めて難しくなる。

欧州指令第2001/29号の第3条1項および2項に影響を及ぼすことなく、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、公衆とのコミュニケーションを行う。

(ユーザではなく)共有ウェブサイト自身を「コミュニケーション行為の主体」として定義することにより、ユーザが著作権侵害で訴えられた場合にウェブサイトを守る責任制限を剥ぎ取ることができるのだ。共有サイトは突如として、リミックスからミームに至るまで、ユーザによる権利管理上の過ちのすべてに一括して責任を負うことになる。

別の新たな条文においても、サイトは掲載するすべてのコンテンツについて事前的ライセンス交渉を行うことで、存続が可能になると述べられている。つまり、完璧な著作権フィルターを実装する限りにおいては、大手音楽レーベルやハリウッドスタジオからの訴訟を回避することができるというわけだ。もちろん、彼ら以外から訴訟を起こされる可能性も大いに残されている。

改善どころか、むしろ酷くなっているのだ。

ヴォス議員の第11条修正案にも偽りの譲歩が含まれている。彼の修正案では、「個々の単語(individual words)」をニュース記事のリンクに使用できるとしているが、リンク税に反対する人々はこれを譲歩とは捉えていない。ヴォス議員の提案は、間違っても2つの連続した単語を引用せずに、脅迫状スタイルの単語の切り貼りをしている限りにおいては、ニュース記事のリンクに独自のテキストを付随させることができるだけだ。

提出されているより良い提案

これらの条項は、テキストから削除されねばならない。すでに、欧州懐疑主義の右派・左派双方がこの立場をとっている。

さらに優れた譲歩案が、ドイツ海賊党のジュリア・レダ議員や、欧州議会でデジタル問題を専門的に扱ってきたオランダのマリエッテ・シャーケ議員から提案されている(シャーケ議員の提案はこちら。レダ議員の提案は、他の提案との対照表とともに彼女のウェブサイトで提示されている)。

投票手続きの変更がなければ、欧州議員は9月12日、条項の削除と、レダ/シャーケ修正案の双方に投票することになる。最初に各条項の削除について投票を行うが、そこで条項の削除ができなかったとしても、欧州議員は修正案について投票を行うことになる。

我々はすべての議員に、第13条および第11条を完全に削除するよう求めている。これは、過去20年近くに渡り、政治的な立場を超えて、業界から広く支持されてきた体制の賛否を問う投票となる。たとえ削除に至らなかったとしても、レダ/シャーケ議員の修正案が代替案としては最良の選択肢となる。

ユニバーサル・ミュージック・フランスの元CEOで、自身も音楽レーベルを所有するパスカル・ネグレ氏は今週、ル・モンド紙のコラムでこのように述べている。

「音楽業界で35年の経験を積んだ私には、この指令がアーティストに、業界に、そして最終的には公共の利益にとって、不利益をもたらすものと思えてならないのです」

あなたにいまできること

さまざまな政党や圧力団体が投票にかけられる修正案それぞれ――我々があまり取り上げてこなかったものではデータマイニングなど――の詳細を伝えてくれるだろう。

現時点で、あなたはこの指令が抱えている問題点をどう扱うべきかは理解しているはずだ。

今すぐ欧州議員に連絡を取り、欧州域内に知り合いがいれば、その人にも議員に声を届けるよう伝えてほしい。

SaveYourInternet.euのサイトや議会のウェブサイト(地図をクリックするだけ)で、地元の議員の情報を見つけられるはずだ。

あなたが欧州域外にお住まいの場合には、このブログ記事を欧州の友人や家族に共有し、危機が迫っていることを教えてほしい。投票日まであと数日しか残されていない。

ヴォス議員の修正案を否決し、第11条と第13条を削除し、著作権フィルターを否決し、報道スニペットの付随的権利を否決するよう伝えてほしい。そして、あなたの議員に、アップロードフィルタリングやリンクの制限を回避する選択肢を選ぶよう、後押ししてほしい。

Fake Compromises, Real Threats in Next Week’s EU Copyright Vote | Electronic Frontier Foundation

Author: Danny O’brien (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: September 7, 2018
Translation: heatwave_p2p