TorrentFreak

まっとうな広告ネットワークから締め出された一部の海賊版サイトは、多くのユーザが表示されたくない広告を掲載するようになった。しかし、新バージョンのChromeは、あらゆるサイトの「悪質な体験」を排除すべく、不正なリダイレクトやミスリードを誘うダイアログボックスのポップアップを防ぎ、ダウンロードを促すビデオの「再生」ボタンを無効化するという。

10年以上前、トレントサイトやファイルホスティングプラットフォームを訪れたユーザは、一般的なサイトに掲載されているような広告に迎えられた。

当時、大手企業やブランドは、大手「海賊版」サイトに自社広告が掲載されることをそれほど問題視してはいなかった。パイレート・ベイを訪問したユーザに大企業の広告が表示されることも珍しいことではなかった。

この数年、海賊版対策団体は「海賊版」プラットフォームの収益源を断つべく、努力を重ねてきた。その結果、多くの海賊版サイトで広告の質が低下し、サイトの収益が減少することとなった。

必然的に、望ましからざる広告――ポップアップやポップアンダー、偽のダウンロードボタンや強制ダウンロード――がネットにはびこることになった。こうした広告は、優れた広告ブロッカーで抑止できるのだが、Google自身もChromeに対策を実装し、海賊版サイトを含むすべてのプラットフォーム上の悪質な広告の取り締まりに乗り出した。

Googleがセーフブラウジングの取り組みに着手したのは10年以上も前のことだ。同社は2016年、偽の「ダウンロード」ボタンや「再生」ボタンに対策を講じることを発表。昨年11月のChromeバージョン68では、予期せぬリダイレクトを防止するブロック機能を搭載した。ストリーミングサイトを利用する多くのユーザに馴染み深い現象であろう。

「不要なAPKをユーザにダウンロードさせようとする再生ボタン(左)とポップアップのトリガーとなる閉じるボタン(右)」

こうした取り組みは多少の効果が得られたものの、Googleの新たなアナウンスによれば、更なる効果を得るにはChromeに組み込まれたシステムの改良が必要であったという。

「これらの保護機能は、ページリダイレクトといった悪質な体験を伴うサイトのポップアップや新規ウィンドウリクエストをブロックすることを目的としていました。しかし、このアプローチでは不十分であったことを我々は学びました」とGoogleプロダクトマネージャーのヴィヴェック・セカールは言う

「実際、これまでの対策ではこうした不愉快な経験の半数以上がブロックされず、その大半は有害な広告や誤解を誘う広告でした。こうした広告は、システム警告や実際には閉じることのできない『閉じる』ボタンを装うことで、ユーザにクリックを仕向けています。さらに、こうした不正な広告体験のなかには、個人情報を盗もうとする詐欺やフィッシングに利用されています」

これを受けて、Googleは12月にリリースするChrome 71で、執拗に不愉快な経験をもたらす「ごく一部のサイト」の広告をすべて削除することを明らかにした。

サイト所有者は、Google検索コンソールの「不快な体験レポート」で自身のサイトがその対象となるかどうかを確認できる。判定から30日以内に修正がなされなければ、Chromeはすべての広告を削除する。

Googleは、ユーザのブラウジング体験はユーザ自身がコントロールできるべきだと強調する。Chromeユーザはブラウザの設定で「不正なサイトのフィルタリング」を無効にすることもできるという。

TorrentFreakは、ごく一部の「海賊版サイト」のオーナーたちにこのアップデートについて話を聞いたが、いずれも特に懸念してはいないようだ。そもそも、このアップデートが標的とするサイトが、我々の質問にほいほい答えるとも思い難い。このアップデートが何をもたらすかはいずれ明らかになるだろう。

Chrome Update Targets ‘Abusive’ Ads Used on Some Pirate Sites – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: November 6, 2018
Translation: heatwave_p2p