文化庁の違法ダウンロードの範囲拡大に関するパブリックコメントの締切が明日に迫っている。文化庁はご丁寧に「『ダウンロード違法化の対象範囲の見直し』に関する留意事項」などという注意書きまで用意して、議論の方向づけにご熱心である。文化庁としては可及的速やかに範囲拡大のGOサインを政府に出さなくてはならないので、 余計なことを書いて面倒をおこすなというところか。あるいは趣旨の沿わぬ意見を無視する口実のつもりなのだろうか。

もちろん、文化庁としては権利者団体の意見を拝聴し、学者の意見も交えて体裁を整えたので、これ以上変えたくもないというのが本音だろうし、パブリックコメントも国民の意見を聞いたというアリバイにさえなればよい。

政府知財本部の海賊版対策TFが混乱のうちに結論を出せぬまま散会したことを受けて、このままではブロッキング要請を強行し、TFで拳を上げた政府や業界関係者の面子が立たぬということで、文化庁は去る10月29日の文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会に静止画違法ダウンロード対象拡大のアジェンダをねじ込み、その10日後には他の権利者からの不満で議論を長引かせるのを避けるために即座に対象を著作物全般に拡大し、わずか3回の審議で中間まとめ案に仕立て上げるという奮闘ぶりをみせている。忖度官庁、忖度官僚ここに極まれりといったところである。

とはいえ、文化庁なんてのはもともと文化そのものよりもコンテンツ業界の不満をヘイヘイ承りつつ、国民からの反対を右から左に聞き流しつつ、立法化をすすめる省庁であるので、もはや文化産業庁という体である。まぁ、その文化産業政策もうまくいっていないのだから大人しくカビの生えた文化政策だけでもやっておけばいいのにと思ったりもするが、内閣府や経産省に比べればまだマシというのも救いのない話である。それも今回の横暴なやり方をみるに、過去の話になりつつあるか。

もはや結論がきまっていて反対意見になど耳を傾けるつもりのない文化庁にわざわざパブリックコメントを送るなどご苦労なことではあるのだが、みなさん頑張っているようで、頭が下がる思いである。

意味がないとわかっていても、一般市民が声を伝えられる数少ないこの機会をみすみす逃すわけにもいくまい。パブリックコメントとして募集している以上、その意見を政府省庁は(建前としては)無視できない。理由をつけて無視しようとはするだろうが、それ以外の機会では理由もなく無視されるのだから、多少はマシであろう。

というわけで、私もこれから書こうと思うのだが、みなさんにも是非書いてもらいたい。

以下、代表的な反対意見を列挙しておこう。

文化研究者の山田奨治氏が以下のエントリでパブコメの書き方のコツを紹介しているので、こちらも参考までに。

個人的な意見ではあるが、パブリックコメントと大袈裟な言い方をしたところで、国民からの政策に関する意見募集にすぎないので、やたらハードルが高いなどというのは本来もってのほかなのだが、どうも近ごろは専門知識を踏まえてものを書けという、国民の政策参加を遠ざけるかのような本末転倒な雰囲気があるように感じる。

ただそんなものは政府・省庁の都合でしかなく、そんなもののために国民の政策参加が妨げられてはならない。そもそも国民の意見なんて聞きたくもないものだからわざわざ面倒にしているだけであって、来たら来たで聞かねばならぬのがパブリックコメントである。

専門家がしっかりしたものを書いているのを見て、少し腰が引けてしまう人もいるかもしれないが、わたしやあなたのような、何の専門家でもない、市井の人の意見も受け付けるのがパブリックコメントである。肩肘張らずにどうか気軽に意見を書いて送ってみてほしい。

要項および提出フォームは以下のリンクから。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細 – e-Gov

Material of Header Image: Rasmus Olsen