以下の文章は、欧州海賊党のジュリア・レダ欧州議員のブログ記事「The text of Article 13 and the EU Copyright Directive has just been finalised」を翻訳したものである。

2月13日夜、欧州議会と理事会の交渉担当者は、EU著作権指令案の最終テキストをまとめ、トリローグを終了しました。この2年間、私たちは第11条、第13条をめぐる議論を続けてきました。これまでさまざまな草案や修正案が入り乱れてきましたが、これではっきりと定まったことになります。この法案が次の最終投票で採択されれば、私たちの知るインターネットは根底から変わってしまうでしょう。でも、まだその結末を回避することはできるのです!

条文を概説すると共に、どうしてこうなってしまったのか、そして今、何ができるのかをお伝えします。

密室のトリローグ交渉は終了した

このEU著作権指令は何なのか

第11条第13条全文、それぞれのリンクから最終条文を確認できます。要約したものを以下に掲載します。

第13条:アップロードフィルター

議会交渉官のアレックス・ヴォス議員が、(このブログでも伝えた)フランスとドイツとの合意を受け入れた。

  • ユーザに投稿を許す商業サイトやアプリは、ユーザがアップロードするかもしれないあらゆるコンテンツ――つまり世界中のすべての著作物を事前にライセンシングする「最善の努力」が求められる。現実的に実現は不可能である。
  • 加えて、極少数の(小規模かつ出来たばかりの)サイト以外は、権利者がプラットフォームに登録した作品の不正コピーがネット上に公開されることを防ぐためにあらゆる手を尽くさなくてはならない。つまり、アップロードフィルターを導入する以外の選択肢はないということだ。アップロードフィルターは、高額であり、頻繁に間違いを起こすという性質を持つ。
  • 裁判所がライセンシングやフィルタリングの努力を怠っていると判断した場合、サイトはユーザが引き起こした著作権侵害を、自らが行ったものとして直接責任を負わされることになる。こうした重大な脅威により、プラットフォームは自らの安全を保つためにこの規則を過剰に遵守し、それによって言論の自由に悪影響がもたらされることになる。

第11条:リンク税

このニュースサイトのための著作隣接権は、以前にも同様のものがドイツで実施され、失敗に終わっている。しかし今回は、検索エンジンとニュースアグリゲーターに限定されてはいない。つまり、さらに多くのウェブサイトに損害を与えうることを意味する。

  • ニュース記事から「単一の後またはごく短い抜粋」以上のものを複製する場合には、ライセンス契約が必要となる。ここには、今日リンクと共に表示され、リンク先のコンテンツを把握するために一般的に利用されているスニペットにも適用される。「ごく短い」がどの程度を指すのかは裁判所の解釈を待たなくてははならない。それはで(スニペットを使用した)ハイパーリンクは、法的に不確実な状態に置かれることになる。
  • 例外はなく、個人、小規模企業、非営利団体が運営するサービスであっても適用される。また、営利を目的としたブログやウェブサイトも含まれるだろう。

その他の規定

現代の人工知能研究とその発展に極めて重要なテキスト・データ・マイニングを欧州市民が実施するプロジェクトは、あまりに多くの注意点と要件によって妨げられている。権利者は、研究機関以外の物が自分の作品のデータマイニングをオプトアウトすることができる。

  • 作者の権利:作家にバランスの取れた対価を受け取れるようにすべきだという議会の提案は、著しく骨抜きにされた。今後も総買取契約(Total buy-out contracts)が続くことになるだろう。
  • 文化遺産へのアクセスのための僅かな改善:図書館は絶版となった作品をオンラインで公開できるようになる。美術館は数世紀前の絵画を写した写真の著作権を主張できなくなる。

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どうしてこうなったのか

この法律を提案したエッティンガー前デジタル委員

この法案の歴史は、恥ずべきものです。そのはじめから、第11条と第13条の目的は、著作権法で解決すべき問題を十分に検討された方法で解決するというものではなく、副作用を度外視し、特定業界への強力な利益誘導を目指すものでした。

この目標に向けてひた走る一方、中立の学識者人権団体中立の出版社スタートアップ、その他大勢の人々があげた懸念の声は無視され続けてきました。問題を明らかにした科学的証拠が示されているにもかかわらず、有耶無耶にもされてきました。さらに、議会の交渉担当者であるアクセル・ヴォスは、数百万人のインターネットユーザが立ち上がった前代未聞の抗議行動を「嘘に基づくもの」と切って捨てたのです。

この法案を背後から推し進めたのは保守系会派EPPは、反対者を傍流に追いやってきました。彼らが任命した最初の代表者が出した結論は、あまりに賢明過ぎたがゆえに破棄されました。その後、ヴォス氏はありとあらゆる(後に彼自身も驚かされることになる)制限的な措置を盛り込んだ案を強硬に通してしまいした。彼の所属するドイツCDU / CSUの(アップロードフィルターを拒否する)連立協定に平然と違反し、同政党の大臣がこの問題を懸念したことさえ気にかけることもありませんでした。

条文を更にひどいものにしないためには、会派を越えて、とてつもない徒労を強いられることになりました。

結局、反対の声は届かず、フランスとドイツが密室で交わした合意が最終的な結論を出しました。

ただ、注意しなくてはならないのは、非難されるべきは「EU」という統合体ではなく、権力を持ち、基本的人権よりも自らの特別利益を優先する人々だということです。あなたはそれを投票で変えることができるのです! 反EUの極右勢力は、偏狭なナショナリズムに基づくアジェンダをおしすすめるべくこの機を利用しようとしています。実際、極右会派のENF(主に仏国民戦線に占められている)がこの法案を継続的に支持しなければ法務委員会で止められたはずで、今日のような極端なものにはなっていなかったでしょう。

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まだ法案は止められる

最終テキストに合意した議会と理事会の交渉担当者は、その合意の承認のためにそれぞれの機関に戻ることになります。議会、理事会の双方が修正なしに承認してしまえば、この法案はEU法として成立し、それに基づいて加盟各国は国内法を整備しなくてはならなくなります。

しかし、いずれの機関にも抵抗する勢力は存在しています。

議会のプロセスは、法務委員会の承認から始まります。これは2月18日月曜に行われる予定です。

続いて、欧州理事会でEU加盟国政府が投票を実施します。ここで、13の加盟国政府、またはEU人口の35%を占める政府(計算機)が承認しなければ、法案は阻止されます。前回、人口の27%を占める8カ国が反対しました。ドイツのような大国か、複数の小国が考えを翻す必要があり、法案阻止の実現可能性としては低いといわざるを得ません。

最も可能性の高い方法は、欧州議会本会議での最終投票です。ここでは、直接選出された市民を代表する751人の欧州議員が投票を行います。これは3月25〜28日、あるいは4月15〜18日に行われることになるでしょう。昨年7月に示されたように、間違った著作権法案への反対が過半数を上回ることは実現可能なのです

本会議は、投票で法案を否決することもできるし、第11条や13条を削除するといった修正を加えることもできます。後者の場合、理事会は修正を承認するか(この場合、これらの条項抜きの指令が成立する)、議会構成を大きく変えうる5月の欧州議会選挙が終了するまでプロジェクトを棚上げするかを決定することになります。

あなたの出番だ

議会の最終投票は、欧州議会選挙の直前に行われることになっています。多くの欧州議員、そして間違いなくすべての政党が、再選を望んでいるでしょう。多くの有権者が第11条、第13条の問題に異議を唱えるキャンペーンに参加すれば、この2つの条項を打ち負かせるはずです(欧州議会選挙への投票方向についてはこちらから――言語を母国語に変更の上、各国の詳細情報を確認してください)。

地元議員の態度をはっきりさせるのは、あなた次第です。インターネットを破壊する第11条と第13条に投票するかどうかで、来る欧州議会選挙での投票を決めると伝えましょう。強く、ねばり強く――ただし、礼儀正しく。

  • 地元議員の投票方針SaveYourInternet.euで確認しましょう
  • 地元議員の事務所(ブリュッセルまたは地元)に電話、訪問しましょう
  • 選挙運動、政党のイベントに行って、この問題を取り上げましょう
  • 史上最大規模の署名運動に参加し、その活動を広めましょう(もしまだなら)

私たちは団結し、この法案を止めることができるはずです。

Julia Reda – The text of Article 13 and the EU Copyright Directive has just been finalised

Author: Julia Reda
Publication Date: February 13, 2019
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header Image: Gem & Lauris RK