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米国最高裁判所は、クリエイターが誰かを著作権侵害で訴えるには著作権登録証明を取得する必要があるとの判決を下した。この全員一致の判決において、ギンズバーグ判事は、著作権登録を申請するだけでは不十分であることを明確に示した。著作権団体はこの判決に不満を抱く一方、別の者たちには福音になるかもしれない。

世界中のほとんどの地域では、クリエイターは登録などを必要とすることなく自らの作品の著作権を主張することができる。

これは米国にも当てはまるのだが、著作権者が誰かを著作権侵害で訴えようとすると、この主張を裏づけるものが必要とされる。

これまで、著作権侵害の提起要件としてどのような「証明」が必要であるかという問題について、米国の裁判所の判断はわれていた。クリエイターが著作権局に著作権登録を申請していればよいということもあれば、登録が完了していなければならないとされたこともある。

しかし今週、米国最高裁判所は、こうした判決の不一致を終わらせる判断を示した。最高裁は、 Fourth Estate Public Benefit CorporationとWall-Street.comとの間で争われていた訴訟で、著作権者は訴訟を起こす前に著作権登録証明を得なければならない、と全員一致で判決した。

この裁判は無許可で公開された記事をめぐる争いであったが、この判決は、今後の著作権裁判にも影響を及ぼすことになるのかもしれない。劇場公開前の映画の流出やリークから、毎年数千件の規模で起こっている著作権トロール訴訟に至るまで。

その影響は特にトロール訴訟において顕著であろう。米国の著作権侵害訴訟の大半がBitTorrentダウンローダーに対するものであるためだ。こうした訴訟を起こす権利者が、常に著作権登録証明書を手にしているわけではない。この際高裁判決後、複数の弁護士がこの判決はクライアント(訳注:トロール訴訟の被告)に有利に働くかもしれないと話している。

「この事件は、我々のBitTorrent著作権抗弁にも大いに関連するものだ」とジェフリー・アントネッリはツイートしている

一方、権利者たちはこの判決に不満をいだいている。RIAAは、著作権者が著作権侵害訴訟を起こすまでにさらに多くの時間を要することになるとして失望を顕にしている。

「この判決により、行政手続きが未処理であることを理由に、憲法に基づく権利の適時行使が妨害され、インターネット時代のスピードで発生する侵害に対応する必要かつ即時の対処が妨げられる」とRIAAは述べている。

「この判決を踏まえ、著作権局は、適切な執行による本質的な権利保護を確実とするために、インターネットのスピードに即して取り組まねばならない」

現時点では、著作権登録証明書が発行されるまでには数ヶ月を要する。新しいコンテンツが次々に制作されるこの時代にあっては、さまざまな問題を引き起こす可能性がある。この問題は、コピーライト・アライアンスからも指摘されている

「著作権局が申請を処理するまでに平均して6ヶ月を要している。著作権局審査官が著作権者に確認を取る必要がある場合には9ヶ月にも及ぶ。バイラルなオンライン侵害の世界において、著作権者に抑止の術がないのであれば、多大な損害を及ぼす可能性がある」とコピーライト・アライアンスのテリー・ハートは記している。

とはいえ、最高裁も著作権登録の処理の遅さは理解している。しかし、それは立法者の意図を曲げる理由にはならず、したがって法に則って適切な著作権登録証明書を必要とするとした。

「遅延の大部分は、著作権局の人員配置と議会による予算削減によるものであるが、法廷はこれを解決することはできない。行政手続きが遅延していることは残念ではあるが、それによって本法廷が、議会が制定した第411条(a)の条文を変えることは許されない」とギンズバーグ判事は記している。

権利者側からは障害と見られているこの判決だが、この未登録著作物の保護が完全に失われるわけではない。たとえば2005年に成立した「芸術家の権利と窃盗防止法」では、公開前の映画や音楽のリークに罰則を設けている。

しかしこの判決は、各種ユーザ生成コンテンツに新たな難題をもたらす可能性もある。たとえば無断でバイラルビデオをコピーした誰かを訴えようとするならば、まずは著作権登録を申請し、手続きを完了しなくてはならない。

Fourth Estate Public Benefit Corp. 対 Wall-Street.comの最高裁判決の写し(pdf)はこちらから。

Rightsholders Can’t Sue Without a Copyright Certificate, Supreme Court Rules – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 06, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: dokabalint