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言論・表現の自由に関するデヴィッド・ケイ国連特別報告者が、EUが提案する第13条、そしてそれが事実上義務づけるフィルタリングについて警告を発した。「このような事前フィルタリングを求める圧力は、必要とはいえず、インターネットにおける著作権侵害への対処としてバランスを欠くものである」という。

今月末、欧州議会はEU著作権指令案の最終投票を実施する。

インターネットが荒れに荒れ続けているように、第11条と第13条のいずれも依然として大きな論争を巻き起こしている。

第13条をめぐっては強い反対の声があがる一方で、権利者団体やアーティストからは厚い支持が寄せられている。反対派は、この提案が事実上のアップロード・フィルターの義務化に繋がり、悪用され、意図せぬ重大な結果を引き起こすことを懸念している。こうした懸念を強力に支持するのが、国連人権理事会の特別報告者、デヴィッド・ケイ氏だ。

Photo by Maina Kiai (CC BY 2.0)

言論・表現の自由に関する国連特別報告者を務めるケイ氏は、著作権指令案は表現の自由に関する国際基準を満たしていないと警告する。

ケイ氏は月曜、声明の中で「欧州はデジタル時代の課題に対処すべく著作権法を近代化する責任を担っている。しかし、それは欧州市民が今日享受している表現の自由を犠牲にして行われるべきではない」と述べている。

「指令案第13条は、インターネットプラットフォームに対し、ユーザ生成コンテンツをアップロードの時点で監視、制限するよう仕向けることを目的としているようである。このような事前フィルタリングを求める圧力は、必要とはいえず、インターネットにおける著作権侵害への対処としてバランスを欠くものである」

第13条の支持者は、現行の指令案はフィルタリングを義務づけるものではないと主張する。しかし、オンラインプラットフォームや多数の活動家から批判が寄せられているにもかかわらず、どうすればフィルタリングを回避できるのかという点について、誰も説明しようとはしない。要件を満たすプラットフォームが、ライセンスを得ていないコンテンツをホストしてしまえば、その責任を負わされることになるというのに。

2週間前にも、ドイツ連邦データ保護および情報の自由委員会のウルリッヒ・ケルバー委員長が、サードパーティ・フィルタリング・ベンダーの「寡占」状態が、膨大なユーザデータへのアクセス、集約を引き起こす可能性について警告している(訳注:関連記事)。

ケルバー議員は、アップロードコンテンツのフィルタリング以外に第13条の目的を達成する方法についてEUは説明すべきだと提案しているが、これまでのところ返答はない。

現行の指令案では、一部のプラットフォーム(開始後3年未満で、1ヶ月あたりの訪問者が500万人未満で、年間売上高が1000万ユーロ未満のプラットフォーム)が第13条の規定から除外されているものの、ケイ国連特別報告者はあまりにも厳しすぎると指摘する

「大半のプラットフォームが免責の対象とはならず、指令を遵守するために高額なコンテンツフィルタリング設備を導入し、維持するという法的圧力に直面することになる」

「こうした技術を購入できるのは最大規模のプレイヤーに限られることから、長期的に見れば、欧州の情報の多様性とメディアの多元性の将来を損ねることになるだろう」とケイ氏は述べている。

ケイ氏はさらに、アップロード・フィルタリング・システムが侵害コンテンツと著作物を適法に利用するコンテンツ(例えば引用、批判、批評、風刺、パロディ、パスティーシュ)を区別できないという問題を抱えていると指摘する。

現代のコンピュータにできないだけでなく、専門家ですら容易には判断できないとケイ氏は説明する。

「経験豊富な法律家であっても、著作権侵害と適法な例外使用の区別に苦労している。さらに、例外規定は加盟国によっても異なる。指令案の文言が明確かつ詳細でなければ、法的不確実性はさらに高まるだろう」と警告する。

だが、コンテンツ業界は、第13条の支持が、アーティストやクリエイターを保護するための緊急の要請に基づくものだと主張している。一方、ケイ氏は、指令案が現行の条文のまま成立すれば、そのアーティストやクリエイターこそ、最初に苦しめられることになるという。

「著作権侵害と適法な利用との微妙な違いを区別できるはずだというフィルタリング技術への的はずれな信頼は、間違いや検閲のリスクを増大させることになるだろう。では、その責任を誰が負うというのか」

「通常、クリエイターやアーティストは、それに異議を申し立てるほどのリソースを持ち合わせてはいない」と彼は警告する。

ケイ氏の反対声明は、EU自身の権力の回廊内で第13条の支持者が引き起こした炎上PR(1, 2, 3)の直後にやってきた。反対派は公平性すら失われていると非難している。

さらに、今月欧州各地で予定されている多数のオフラインの抗議デモや、Change.orgの記録破りの反対署名運動(現在も時々刻々と増え続けている)を見てもわかるように、欧州市民の間に反発が広がり続けている。
UN Human Rights Rapporteur: Upload Filters “Disproportionate Response” to Copyright Infringement – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 12, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Ian Clark / CC BY 2.0