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ロシア当局は、大手VPNプロバイダ10社に対し、同国のブラックリストに掲載されたサイトのブロッキングを開始するよう命じた。対象には、NordVPN、ExpressVPN、IPVanish、HideMyAssなどが含まれる。TorGuardはこの通知を受けた直後、ロシアからの撤退を決断した。

この数年間、ロシアは国家が不適切とみなしたコンテンツへのアクセスを制限するというミッションを推し進めてきた。

海賊版プラットフォームから過激派のコンテンツをホストするサイトに至るまで、さまざなサイトがその影響を受けている。

ロシア国内のISPは、これらのドメインをブロッキングし、アクセス遮断することを法的に義務づけられている。しかし、さまざまな回避方法が存在しており、ロシア政府はまさにその点に対処しようとしていた。

2017年7月、ウラジミール・プーチン大統領は、この抜け穴を塞ぐことを目的とした法律に署名した。この法律は、市民がVPN、プロキシ、Tor、その他匿名化ツールを使用して禁止サイトにアクセスするのを防ぐことを目的としている。

その脅威は至ってシンプルだ。もしそれらのサービスが、禁止されたプラットフォームへのアクセスを可能にしていることが判明した場合、そのサービス自体がFGISと呼ばれるロシアの『インターネットブラックリスト』に掲載されることになる。

いくつかのVPNプロバイダが、この法律の施行以前にロシアから撤退したが(たとえばPrivate Internet Accessは2016年に撤退)、他のサービスは提供を継続している。しかし現在、当局はさらに締め付けを厳しくしようとしている。

この数日、通信規制当局のロスコムナゾールは、ロシア国内にサーバを設置する10の主要VPNプロバイダ(NordVPN、ExpressVPN、TorGuard、IPVanish、VPN Unlimited、VyprVPN、Kaspersky Secure Connection、HideMyAss、Hola VPN、OpenVPN)にコンプライアンス通知を送付した。

当局はこれらのサービスに対し、FGISのブラックリスト・データベースに接続して、そこに含まれるサイトをブロッキングするよう要求している。検索大手のYandex、Sputnik、Mail.ru、Ramblerといった同国企業は、すでにこのデータベースに接続し、必要に応じてフィルタリングを実施している。

「2006年7月27日『情報・情報化及び情報保護に関するロシア連邦法』第147-FZ号 第15.8条5項に従い、(この通知の)受領から30営業日以内に、遮断すべき情報ソースおよびネットワークを扱う連邦国家情報システム(FGIS)に接続しなくてはならない」と通知には書かれている。

TorGuradが受け取った通知では、実際にはプロバイダは1ヶ月以内に遵守するよう指示されているという。指示通りにしなかった場合には、自らのサービスもブラックリストに掲載されることになり、ロシア国内では機能しなくなることが詳細に説明されていた。

しかしTorGuradは、これに応じることは同サービスの規約に反することになってしまうため、自ら撤退することを決断したという。

「TorGuardは現在、ロシアに存在するすべての物理サーバを破棄する方向で作業を進めています。サンクトペテルブルク、モスクワの拠点に設置されたサーバをたたみ、今後はこの地域のデータセンターとの取引を断つことになります」と同社は声明の中で述べている。

「このサーバの破棄は、TorGuardの管理者による自主的な決定であり、機器の差し押さえがあったわけではないことを明確にしておきます」

ロスコムナゾールはさらに、TorGuardら企業に事業者や事業所の詳細情報を当局に引き渡すよう要求している。

通知では、外国企業は、完全な事業者名、居住国、税務番号、貿易登録番号、郵便番号、電子メールアドレス、その他情報を開示することが求められている。

TorGuardから入手したロスコムナゾールの通知では、VPN加入者データへのアクセスが要求されてはいない。だが、これについてはTorGuardのプライバシーポリシーを考えれば、そもそも提供できるようなデータを保存してはいない。

「私たちはいかなるログも保存していないため、たとえサーバが危険にさらされたとしても、顧客データが漏洩することはありえません」と同社は付け加えた。

ロシア当局から連絡のあった複数のVPNプロバイダも同様であろう。TorrentFreakの2019年版VPNまとめ記事でも、NordVPN、ExpressVPN、TorGuard、VyprVPNはいずれも、ログは一切保存していないと宣言している。

問題に見舞われた企業は、今後自社の法務チームと協議することになるだろう。そのうち、どのVPNプロバイダがロシア国内の法律を遵守、つまりブロッキングの実施を選択し、あるいはロシアから完全撤退を選択するのか。いずれ明らかになってくるだろう。

Russia Orders Major VPN Providers to Block ‘Banned’ Sites – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 28, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Sanmeet Chahil