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著作権者と米国政府はICANNに対し、ドメインのWHOIS情報に再びアクセス可能にするよう求めている。WHOIS情報はインターネット上の海賊をはじめとする悪党を追跡するために必要不可欠であるという。この状況に改善の見込みがないのであれば、米議会は望ましい結果を得るために立法措置を講じなければならない、と警告する。

EUの新たなプライバシー規則「GDPR」が発効してから1年が経過した。

GDPRは多くのオンラインサービスやツールに対して、プライバシーポリシーを強化することを求めた。この規則はドメイン登録機関にも適用される。

ドメインネーム管理機関であるICANNは、この新たな規則に対応するため、暫定的に仕様を変更し、WHOISシステムを通じて提供していたサイト所有者の個人データへのアクセスを制限した。

この変更は、プライバシー団体や多くのドメイン登録者に歓迎されたものの、著作権対策団体からは不評を得ていた。MPAAをはじめとする業界団体は、このWHOIS情報を利用して海賊版サイトを調査・追跡していたのだ。

MPAAはWHOIS情報へのアクセスに強く固執している。以前には、米国国家電気通信情報管理庁に対し、よりオープンなシステムにしたほうがプライバシーは向上するはずだとも警告していた

そうした訴えにもかかわらず、状況が好転することはなかった。しかし、MPAAの考えは変わらない。今週、連邦通信委員会(FTC)に提出された書簡(pdf)の中で、MPAAは米国政府機関に支援を求めている。理想的には、認可された機関が容易にアクセスできるシステムを望ましいのだという。

「MPAAはFTCに対し、著作権侵害との戦いをはじめとする消費者および適法な商取引を保護するために、WHOIS情報の利用可能性を回復するアクセス・認可モデルを迅速に採用し、実施することを(ICANNに)引き続き要望することを求める」

「またMPAAはFTCに対し、このモデルが実施されるまでの期間、ドメイン名プロバイダがこの要望を慎重に検討し、そのようなアクセスの要請を受け入れるよう手助けすることを求める」

MPAAによれば、商業的インターネットの創設以来、WHOIS情報は個人情報の盗難、知的財産の窃盗、詐欺、サイバー攻撃、オピオイドの不正販売、人身売買などのオンライン犯罪と戦うための起点となっているのだという。

MPAAは、現在ICANNが実施している暫定的なソリューションは適切な解決策ではなく、不必要なアクセス制限だと主張する。

WHOIS情報への制限に不満を訴えているのはMPAAだけではない。Copyright Alliance、Creative Future、Independent Film and Television Allianceも、この問題を強調する書簡(pdf)をFTCに提出している。

さらに、米国政府自体もこの問題に取り組もうとしている。NTIAのデイヴィッド・J・レドル情報通信担当次官補は、ICANNのシェリー・チャラビー理事長に書簡を送り、「迅速な」行動をとるよう求めている。

「WHOIS情報は、インターネット上での自らの行為に対して利用者に説明責任を負わせる重要なツールである。法執行機関は、犯罪企業や悪意あるウェブサイトを閉鎖するためにWHOISを使用している」とレドル氏は綴っている。

レドル氏は、さまざまな利害関係者の助けを借り、ある程度の進展が見られたことを歓迎しているという。しかし、ICANNは、特に暫定的な仕様が来月には失効するため、さらに踏み込む必要があるとも主張する。

「今こそ、法執行機関、知的財産権の所有者、サイバーセキュリティ専門家ら、適法な利害を持つ第三者が責務を遂行する上で不可欠な非公開データへのアクセスを可能にするシステムを構築すべきである」とレドル氏はいう。

もちろん、釘を刺すことも忘れていない。ICANNが新しい方針を採用しなかった場合、あるいはそれに近い状態であった場合には、米国の議会議員が介入することになる、と念を押す。

「明確で、効果的な進歩が見られなければ、国内法の要請など代替的解決策が強く求められることになるだろう」とレドル氏は記している。

この方針がMPAAからFTCへの書簡の中にも持ち出されていることを考えれば、この選択肢は密室での議論における重要課題となっているのだろう。

MPAAは「ICANNおよびドメインネームプロバイダがそうしなければ、米国議会は、市民を保護し、適法な商取引を促進するために、WHOIS情報へのアクセスを保障する法律を制定する権限を十分に有している」と述べている。

「FTCなどの機関がWHOIS情報に継続的なアクセスすることの重要性を鑑み、MPAAはFTCおよびその他の機関に対し、そのような状況に陥った場合には、立法努力を支持するよう要請する」

圧力はますます高まりつつある。

US Govt and Rightsholders Want WHOIS Data Accessible Again, to Catch Pirates – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 13, 2019
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header Image: Yuri_B / Rick B

「非公開WHOISデータへのアクセスモデル案」については、ICANN自身が検討しているものでもある(123)。

ただ、ICANNがGDPRにおけるWHOISデータの収集の限界を探るべく、ドイツのgTLDレジストラのEPAGを提訴しているように、現時点でも不確実性も存在するわけで、米国で法律が制定されたとしても、その法律とEU法が矛盾を起こすことも考えられる。

世界各国がインターネットをコントロールしようと前のめりになっていることを考えれば、WHOIS以外でも、いずれかの法律を遵守するともう一方の法律を犯すことになるという状況も今後は出てくることになるだろう。

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