Googleは、オーストラリアのコンテンツホルダーやISPと「自主的」合意を交わし、同社の検索結果から832の海賊版サイトを自主的に削除することに同意した。Village Roadshowのグラハム・バーク代表は「Googleは正しいこと(right thing)をしている」と評価。しかし、このニュースにはいくつかの注意点があるようだ。
オーストラリア著作権法の第115a条では、著作権者は裁判所に差止請求を申立て、同国ISPに「海賊版」サイトをブロッキングさせることができるとしている。
同法が施行された2015年以降、主にトレントサイトやストリーミングプラットフォームのブロッキングに何度も利用されてきた。しかしそうしたサイトはしばしば、ブロッキングを回避するために、代替ドメイン、ミラー、プロキシなどを用意している。
Googleはこうした行動と何ら関係するものではないが、検索によってユーザに回避策を提供しているとして、著作権者、特にVillage Roadshowのグラハム・バーク代表らから厳しい批判を受けてきた。
この抜け穴に対処するため、オーストラリアは2018年11月、権利者が司法判断によらず、ブロッキング対象の拡大を可能にする新法を可決。この法律には、検索プロバイダに、裁判所がブロッキングを許可したサイトへのリンクを検索結果から削除することも盛り込んでいた。
このフレームワークは容易に理解できるが、今朝方、SMHに掲載された記事によると、著作権者とGoogleとの間で事実上の和平が結ばれたという。
報道によると、Googleは、現在ISPからブロッキングされている832の「サイト」を検索結果から削除する「自主的合意」を交わした。だが、同地域を対象とした裁判所命令が、必ずしもGoogleに適用されるわけではない。
「つまり、コンテンツの所有者である我々は、法廷で争う費用や労力、時間、不確実性を回避できることになります」とRoadshowのバーク氏は語った。
「私たちは敵から味方へと変わったのです。Googleはオーストラリア人にとって、善き行い(the right thing)をしているのですから」と彼は付け加えた。
「海賊版のビジネスモデルは盗みや騙しによって成り立っており、情報を奪うための手法は洗練されています。ですが、Googleは正しい側に立ちました」
バーク氏がGoogleを絶賛したことはいささか驚いたが、彼の手のひら返しにはさらに驚かされる。とはいえ、Googleも昨年、自主的合意が提唱された際、その枠組みを強く非難していた。
特にGoogleは、「連邦裁判所の直接の監督」下にないいかなるプロセスにも反対するとし、「サイトブロッキングの仕組みをISPから他のオンラインサービスプロバイダに拡張すべきではない」とも主張した。
TorrentFreakは昨晩、Googleに詳細を問い合わせ、次のような回答を得た。
「Googleは、著作権侵害に効果的な業界主導の対策を支援しており、Googleプラットフォームにおける著作権侵害を防止する技術、ツール、およびリソースに多額の投資を行っています」と広報担当者は述べている。
Googleはこの「自主的合意」に関する詳細を明らかにすることを明らかに渋っているが、我々はこのスキームはオーストラリアのみに適用されること、昨年可決された新法と直接的に関係していることを知らされた。
海賊版リソースの大量インデックス削除は、掃討戦を意味しているのだろう、
既知の海賊版サイトの大部分は、検索エンジンのインデックス削除を要求する以前の法律にもとづく裁判所命令によってすでにブロッキングされている。したがって、Googleの検索結果からこれらのサイトを削除するためには、著作権者が再び法廷で争わなければならなくなる可能性が高い。
832のサイト(より正確に言えば832のドメイン)を相手にそうするのは、たとえ結果は確実であっても時間がかかる。そこで、両者は仲介者(訳註:裁判所)を省き、互いに譲歩することで、時間と費用を節約する合意を交わしたと見るのが妥当であろう。
バーク氏は、このインデックス削除はすでに実施されているという。そこでTFは、その効果を確認すべく、ブロッキングおよびインデックス削除の複数のターゲット(thepiratebay.orgなど)でテストを実施した。
まず、オーストラリアの2つのIPアドレス(1つはメルボルン、もう1つはシドニー)でGoogle.comにアクセスし、「The Pirate Bay」を検索し、通常通り、同サイトがトップに表示されていることを確認した。
次に、Google.com.auに切り替え、同じIPアドレスで再びテストした。すると、thepiratebay.orgが再びトップに表示された。
我々はGoogleにこの結果を伝え、より正確な報道のために、インデックス削除の細かなパラメータについて説明を求めた。
同社はコメントを避けたものの、インデックスの削除作業はまだ完了していないのかもしれない。また、Telstra、Optus、Vocus、TPG、Vodafoneやそのサブブランドなど、当初の裁判所命令に明示的に記載されているISPのユーザのみが影響を受けるという可能性も考えられる(訳註:TFは同国にサーバを置くVPNを使用してテストしたため、上記ISPからアクセスした際の挙動は確認できていないのだろう)。
Google “De-Indexes 832 Pirate Sites” From Australia Search Results – TorrentFreak
Publication Date: May 13, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: David Clode