ハリウッド・スタジオとそのテクノロジー・パートナーのグループは、米国政府に、アンティグアのソフトウェア企業SlySoftとの長引く裁判を解決するための助力を依頼した。既に有罪判決は出されているものの、SlySoftはDVD/Blu-rayリッピング・ツールの提供を続けている。そこで、権利者たちは米国にアンティグアを優先監視国リストに入れるよう求めている。

AACS-LAは、Warner Bros.やDisney、Microsoft、Intelなど映画スタジオとテクノロジー企業によって設立されたAACSのライセンシング団体で、最近は複数のDRM回避ツールをターゲットにしている。

AACS-LAは、人気のDVDリッピングツール DVDFabを米国で訴え、AnyDVDで知られるSlySoftをアンティグアで訴えた。SlySoftの拠点はアンティグアにあるためだ。

SlySoftは2007年にアンティグア警察当局によって立件され、それから7年後の2014年、AACS-LAの勝利に終わった。

アンティグア法廷は、SlySoftのオーナーGiancarla Bettiniが2003年著作権法において6つの罪で有罪であり、1侵害につき5000ドルの罰金を支払うよう命じた。また、滞納した場合は、1侵害につき6ヶ月間の懲役が課されることとなった。

AACS-LA側にとってポジティブな結果に終わったように見えたこの事件であったが、SlySoftのオーナーが即座に上告したことで、この有罪判決は実質的に保留されている。それから2年が経過したが未だ控訴審は開始されておらず、AnyDVDは販売を継続している。

それでもAACS-LAは諦めることなく、今度は米国通商代表部にこの問題を取り上げるよう求めている。政府にアンティグアを著作権優先監視国リストに入れるよう仕向けているわけだ。

「SlySoftのAnyDVD HDのようなプログラムを利用した回避は、米国ならびにアンティグア・バブーダ、そしてその他多数の国のユーザによる広範かつ大規模、商業的著作権侵害を引き起こしている」とAACS-LAはいう(PDF)。

「そのような回避は、『ルールに則って』コンテンツを再生するデバイスを製造している適法な家電および情報技術企業を害してもいる」

AACSはその書簡のなかで、アンティグアの司法制度によって問題を解決しようと試みたが、有罪判決は問題の解決にはつながらなかったと述べている。

「SlySoftは有罪判決を受ける以前と同様に事業を続けており、その『ビジネス』に何ら影響を受けてはいない。その一方でSlySoftの回避活動により被害を被っているAACS LAやコンテンツ企業には何の救済もない」という。

AACSによると、DVDリッピングソフトは過去2年間で「数万の個人」にダウンロードされており、その被害は「きわめて」大きいとしている。

アンティグアを優先監視国リストに掲載するということは、次のステップとして理にかなっている。AACSによれば、優先監視国リスト入りすればアンティグアに圧力をかけ、入念な捜査にコミットできるかもしれないのだという。

「AACS LAは、USTRにアンティグアを優先監視国リストに入れるよう謹んでお願いする。それによりAACS LAとUSTRは今後数カ月にわたって、SlySoftとその創設者の起訴を含め、アンティグアの活動を精査することができる。」

1つの裁判が「国際問題」にまで発展するなどあまり例のないことであろう。そのため、米国政府がこの勧告を受け入れるかどうかは未だ不明だ。

ところで、アンティグアと米国との貿易摩擦はこれが初めてではない。

2005年、米国は国内企業であれば自由に参入できるオンライン・カジノ市場にアンティグアのカジノ会社を参入なかったことため、WTOから自由貿易協定に違反しているとの裁定を受けている。WTOは2007年には、アンティグアに米国著作権を年間2100万ドルを上限として一時的に停止する権限を与えた。

その結果、アンティグアは世界貿易機関のお墨付きで、海賊版サイトを運営できることになった。しかし、いまのところその海賊版サイトは日の目を見ておらず、米国・アンティグア両国で、問題の解決に向けて交渉を続けているという。
“Hollywood Escalates “DVD Ripping” Case to International Incident – TorrentFreak”

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: February 13, 2016
Translation: heatwave_p2p