以下の文章は、TorrentFraekの「US Govt. Seizes Millions in Cash & Crypto in Movie Piracy Case」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

米国政府は、国土安全保障省とMPAAが進める映画・TV番組の著作権侵害事件の捜査の一環として、数百万ドル分の現金と暗号通貨を押収した。PayPalが2つのサブスクリプションベースの「海賊版」サイトの情報を提供し、初期の捜査の初期段階に重要な役割を果たしたようだ。ここから、闇が次第に暴かれていった。

海賊版サイト運営者に対する大規模な法的措置は、以前から大々的に実施されてきた。

しかし、現在オレゴン州連邦裁判所で進行している訴訟は、従来の事件に比べ桁違いだ。

2019年5月6日、連邦地裁に提起された訴訟により、米国政府がおよそ400万ドル分の現金および暗号通貨の没収を求めていることが明らかとなった。これは資産の所有者が、著作権侵害とマネーロンダリングの共謀に関与したとして押収されていたものであった。

報道によると、捜査が始まったのは2013年10月、米国土安全保障省(HSI)の捜査官が、PayPalから、映画・TV番組のストリーミング配信を行う2つのウェブサイト「Noobroom.com」「Noobroom7.com」に関する情報提供を受けたのがきっかけだったという。

HSIはこの2つのサイトをMPAAに報告。MPAAはこれらのサイトおよび関連するドメインNoobroom / Noobroom9で配信されている作品が、加盟社の著作権を侵害していることを確認した。その収益は、サブスクリプション料金と広告料から生み出されていたという。前者はStripe、後者はLanista Conceptsという企業を通じてサイトに流れ込んでいた。

2014年7月、MPAAはNoobroomに差止通知を送付した。その5日後、MPAAが密かに取得していたNoobroomのユーザアカウントに、同サイトのアカウントが新たなウェブサイト「SuperChillin.com」に移されたというメッセージが届いた。

MPAAはSuperChillinから映画がダウンロードできることを確認し、IPアドレスがタロン・ホワイトという人物と結びついていることを突き止めた。その後、同容疑者が、movietv.co、Sit2Play.comという2つの新規サイトに関係していることを確認した。いずれのサイトもほぼ同一のコピーサイトであった。Sit2Playはタロン・ホワイト氏の名前で登録されており、そのメールアドレスも彼のものであった。

HSIの捜査は2016年から捜査押収令状が執行された2018年11月まで続いた。内国歳入庁(IRS)のキース・ドラッフェル特別捜査官の宣誓では次のように述べられている。

「捜査中に入手した財務記録に基づき、ホワイトが上記のサイトからかなりの収入を得ていることがわかった」とドラッフェル特別捜査官は記している。

「2018年には月平均で50万ドル以上の収入を得ていた。2017年には220万ドル以上、2016年には100万ドル以上、2014年・2015年には約40万ドルの収入を得ていた」

ドラッフェル特別捜査官によると、PayPalやStripeから支払われた資金は、ホワイト氏が管理する銀行口座に入金されたという。Stripeが提出した情報はホワイト氏の個人情報と一致し、そのアカウントは「メールを介した株式情報のサブスクリプション販売」の名目で登録されていた。IRSによれば、そのような販売の証拠は見当たらないという。

2015年10月から2016年12月までの期間、Stripeアカウントには9.99ドルの支払いが7万8985回、計78万9060ドルが支払われていた。さらに、25.49ドルの支払いが7611回(19万4004.39ドル)、44.99ドルの支払いが5348回(24万606.52ドル)、総額122万3671.24ドルが支払われていたという。

「上述の金額は、Sit2PlayとMovietvに掲載されたサブスクリプション料金に相当する。したがって、Stripeから受け取った額はウェブサイトスブスクリプション料金であると思われる」とドラッフェル特別捜査官は述べている。

2017年10月から2018年9月の期間に、ホワイト氏とStripeの取引をさらに分析したところ、9.99ドルから44.99ドルの支払いが39万6843回あり、総額は637万3816.57ドルにのぼった。

「上記の金額はウェブサイトの購読料に相当し、その収益は合衆国法典第18編第2319条に照らして刑事上の著作権侵害を構成する」としている。

捜査の結果、2018年8月までに、ホワイト氏はStripeアカウントからウェルズ・ファーゴの同氏名義の口座、JPモルガン・チェースのViral Sensations, Inc. (VSI)名義に口座に300万ドル以上を送金していたことがわかった。

ホワイト氏はVSI社の名義で3つの当座預金口座を開設していた。そのうちの1つの口座には2018年8月31日までに590万ドル以上の支払いがあったという。これらのアカウントは、ホワイト氏および海賊版サイトのサブスクリプション料金とのつながりがあった。チェースの口座に移された資金は、暗号通貨取引所のCoinbaseを通じて100万ドルの暗号通貨が購入されていた。

2018年11月13日、オレゴン州のムスタファ・カスーバイ下級判事は、ホワイト氏の自宅の捜索と、資産の押収を認める捜索令状に署名。令状は2日後に執行され、以下の結果がもたらされた。

  • JPモルガン・チェース銀行の口座1から245万7790.72ドルを押収
  • JPモルガン・チェース銀行の口座2から126万6650.0ドルを押収
  • JPモルガン・チェース銀行の口座3から1383.68ドルを押収
  • JPモルガン・チェース銀行の口座4から20万653.71ドルを押収
  • 米国通貨(現金)3万2921.0ドルを押収
  • 米国通貨(Stripeアカウント)1940.77ドルを押収
  • 31.53810677BTC(Coinbaseアカウント)
  • 1,022.390668ETH (Coinbaseアカウント)
  • 5.74017141BCH(Coinbaseアカウント)

「少なくとも2013年から2018年11月までの期間、ホワイトと既知または未知の人物らは、合衆国法典第18編第1957条および第2319条に違反し、著作権侵害およびマネーロンダリングを共謀したと信じるに十分な理由がある」とドラッフェル特別捜査官は述べている。

2019年5月7日、連邦地裁のアンナ・J・ブラウン判事はIRSに対し、今後の通知があるまで資産を保管するよう命じた。

「さらなる裁判所命令があるまで、被告人を逮捕し、各種資産を押収することを命じる」と判事は記している。

一般的な著作権侵害事件に比べ、この訴訟は極めて異例だ。

通常の海賊版サイトとその運営者に対する民事・刑事訴訟であれば、各種著作権侵害の主張と共に、その活動の詳細な説明を記述するのが一般的だ。しかし、少なくとも現在のところ、訴訟の焦点はその資産にばかり向けられている。

Koin.comの報道によると、男性はまだ起訴されてはいない。TFはさらなる詳細を得るべく、ホワイト氏の弁護士であるレイン・マインズ氏にコンタクトしているが、本稿公開時点では、まだ回答は得られていない。

TFが入手した訴訟資料はこちら(123)。

US Govt. Seizes Millions in Cash & Crypto in Movie Piracy Case – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 14, 2019
Translation: heatwave_p2p
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Noobroomはすでにサイトとしては存在していないが、2013年当時の利用者(?)が同サイトをキャプチャした動画をYouTubeに投稿している。