Jonathan Barnbrookは、映像、タイポグラフィ、グラフィック・デザインなどさまざまなメディアで広く活動する世界的に有名なアーティストだ。彼はDavid Bowieとも親しく、最後の4枚のアルバムでカバーアートワークを制作した。残念なことに、Bowieは1月に亡くなった。彼の最新スタジオ・アルバム『Blackstar(通称★)』がリリースされたわずか2日後のことだった。商業的にも、話題的にも大成功を収めているこのアルバムは、Bowieからファンへの「最後の贈り物」として意図されたものだった。

Barnbrookは、友人であり共同制作者でもあったBowieに敬意を表して、この「贈り物」というコンセプトをさらに発展させることにした。彼はBlackstarのアートワークをクリエイティブ・コモンズ BY-NC-SAライセンスでリリースした。つまり、世界中のBowieファンが非営利で共有したり、リミックスしたりできることになる。

我々は最近、Barnbrookと彼がCCライセンスでBlackstarのアートワークを公開した決断について話す機会を得た。このプロジェクトでCCライセンスを選択するにあたり、賛辞と感謝の概念がどれほどの役割を果たしたのかをうかがうことができた。

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Blackstar by Barnbrook, CC BY-NC-SA 4.0

Blackstarのアートワークをリユース、リミックスできるようにしようと思い立たせたものは何ですか?

たくさんの人たちが(Devid Bowieの死によって)悲しみに暮れている。その悲しみを共有するためには、もっと「オフィシャル」な振る舞いが必要とされていると感じたんだ。Blackstarのアートワークがタトゥーとして彫られていたり、ほかにもさまざまに使われているのを目にした。彼らがこのアートワークを違法に使ったとか、後ろめたさを感じることなく、Davidのことを思い出してほしい。彼らがやっていることを共有し、理解しようという前向きな精神において、このアートワークを(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで)リリースすることにしたんだ。

集合的なパブリックの悲しみが軽んじられているように思う。でも、人がある世代の思想や哲学の支柱になりうることを考えるとおかしいことだ。Davidを失った悲しみはあまりにも大きい。なぜなら彼は、なりたい自分になる機会すら与えられないこの社会で、「こうありたい」という自分を表現していたからなんだ。彼はありたい自分ではいられないたくさんの人たちに希望と表現を与えていた。だから、彼が亡くなった時に人びとが大きな喪失感を味わっていることはよく理解できる。

また、人びとの生活においてどれだけ音楽が重要かということがひどく過小評価されているように思う。確かに、音楽は戦争を終わらせることはできないし、誰かの命を救うことはできない。でも、音楽は人生をとても肯定的にしてくれる。落ち込んでいるときに助けてくれる、至福の瞬間を与えてくれる、ある世代の象徴、あるいは哲学でもある。だから、そうしたことを、自分のために、音楽というかたちのないもので表現してくれたその人が、もはや自分の人生の一部としてそこにいないというとき、あなたが深い悲しみに暮れることはとても理解できる。

Davidのカバーアートを手掛けるときは、とてつもない重責を感じていたのと同時に、特別な名誉でもあった。だからこうすることは適切なことだと理解しているよ。

cyberuly@yahoo.it
A portrait of Jonathan Barnbrook … By Cyberuly CC BY 2.5

アートワークの共有やリミックスをさせるのに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを選択した具体的な理由は何だったのですか?

クリエイティブ・コモンズはよく考えられた、シンプルなシステムだ。みんな知っているし、みんなが理解できる。このライセンスはウェブサイトで十分な情報が伝わるし、簡単に理解できる。アルバムセールスの商業的な側面に影響を及ぼさない範囲で、人びとが望むように使うことができる、ということを両立できるからね。

Bowieが亡くなる以前に、今回のようにアートワークをリリースしようという考えはあったのですか?

生前、Davidとこのことについて話したことがあるんだ。彼は素晴らしいアイデアだと言っていたよ。ただ、こんな悲しみのなかで実現することになるとは夢にも思わなかったけど。このアイデアを思いついたのは、アルバム『The Next Day』がリリースされたときだった。ファンはアルバムの白い四角を好きなようにいじって遊んでいたんだ。そんなことは全く意図していなかったけど、彼らがそれを使いたい、反応したい、一部になりたいと思ってくれたことが最高に嬉しかった。Blackstarのリリースにあたって、この体験が根幹になければならないのではないかと思ったんだ。旧来のレコード会社のやり方は、レコードをリリースし、そのすべてを著作権でがんじがらめにするものだった。だからファンがそれに反応したり、自分なりに解釈したりすることは悪とされてきた。でも、そんな一方的な体験にすべきではないんだ。そういう音楽を愛してやまない人たちをリスペクトし、理解していることを見せなければならない。音楽は未だレコード会社の資産で、それに悪影響がおよぶことはない。単に、人びとがこのアルバムへの帰属意識をそれぞれに持てるということなんだ。それはBowieが望んでいたことでもある。彼が亡くなった時、こうすることの重要性を一層強く感じた。たくさんの人たちが、お金儲けの意図など微塵もなく、ただただアートワークを使わせてくれないかと尋ねてきたから。

アートワークをリリースしてから、たくさんの感謝のメッセージを受け取っている。Davidを忘れないために、このアートワークを使うことができたと喜んでくれた。そうしたメッセージを読むたびに、涙が頬を伝うんだ。

これまで、アートワークの使用、リミックスでこれはおもしろいと思ったものはありますか?

Ziggy Stardustストライプとアートワークを合わせたものがあって、すごいと思った。あのアートワークは本当にすばらしいグラフィックだから、『Brackstar』(のアートワーク)と組み合わせてくれたことは光栄だよ。

アーティストがあなたの人生に影響を及ぼす時、それはきわめて個人的で、一人一人違った経験なんだ。だからこそ、派生を許すクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使った。みんながそれぞれに(アートワーク)を解釈し、自由にそうできると感じることこそが重要なんだ。それは僕に指図されるべきものでもない。僕は単にそうするために材料を作っただけなんだから。

このアートワークを使ってどんなことをして欲しいと期待していますか?

とてもシンプルだよ。David Bowieへの愛と感謝を表現してほしい。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについてどうやって知ったのですか?

クリエイティブ・コモンズはいつも僕のレーダーに引っかかっていたよ。アートワークにとって、「商用か、非商用か」という既存のモデルではうまくいかないクリエイティビティの共有の最初の有力なモデルの1つだった。経済的な価値に加えて、共有の余地が必要とされている。人間性はお金の上になりたっているわけではない――人と人との有意義な交換の上に作られているんだ。

開放性や共有は、あなたの作品や創造のプロセスにどのような影響を及ぼしていますか?

それを抜きにしては考えられない。音楽作品以外にも、(僕のクリエイティブスタジオは)たくさんのアクティビストの活動に関わっている。それはアイデアに関わること。そうしたアイデアを拡散することは、彼らの成功のために欠かせないことなんだ。だから、僕たちは人びとに自由に使ってもらえるようなものをたくさん作ってきた。もうすぐ、僕らの新しいウェブサイトでも、アートワークにクリエイティブ・コモンズを使おうと考えているよ。

“Jonathan Barnbrook on his CC-licensed art for David Bowie’s Blackstar – Creative Commons blog – Creative Commons”

Author: Eric Steuer / Creative Commons / CC BY 4.0
Publication Date: February 26, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Barnbrook, CC BY-NC-SA 4.0