以下の文章は、TorrentFreakの「Hundreds of Thousands of ‘Pirate’ Sites Disappear Following Takedown Notices」という記事の翻訳である。

TorrentFreak

インターネット上の削除通知の量、送信者、その対象に関する新たな研究が公表された。最も脅威深いのは、数十万のドメインが、クレームの標的にされた直後に消え去っていたという点だ。

著作権侵害の蔓延を憂慮する著作権者にとって、削除通知は極めて重要なツールだ。

毎週のように、膨大な数の削除要請がホスティングプラットフォームや検索エンジンなどの第三者サービスに提出されている。

TwitterやGoogle、Bingなど、多くの大手企業が、そうした要請をオンラインで公開している。しかし、そのデータ量は膨大で、一般ユーザがデータのトレンドを見極めるというのは極めて困難だ。

ロンドンのクイーン・メアリー大学とボストン大学の研究者は、膨大な削除要請データベースを入念に調査し、現状を把握しようとしている。その研究結果が、「監視者を監視するのは誰か:ウェブ上の申立てを探索する(Who Watches the Watchmen: Exploring Complaints on the Web)」との論文にまとめられた。

この研究は、2017年にLumen Databaseが公開した全削除要請を対象としている。その大半はGoogleに送られたもので、Bing、Twitter、Periscopeと続き、全体で10億件以上のURLが分析された。

削除要請や「ウェブでの申立て」のほとんど(98.6%)は著作権に関連したものであった。つまり、名誉毀損や裁判所命令、政府の要請など、著作権以外の理由による削除要請は少数だったということだ。

論文によると、クレームは3万8523の送信者から提出され、10億5000万件のURLが報告された。数としては膨大ではあるが、報告されたリンクの大半はごく少数の送信者が提出したものであった。

「通知の分布は、極めて活発な少数の送信者に大きく偏っていることが確認された。通知の送信者の上位10%が10億件以上のURLを報告しており、下位90%はわずか55万件にとどまったのとは対象的である」と研究者は記している。

当然のことながら、上位の送信者には、海賊版対策団体や業界団体だけが並んでいる。2017年の上位送信者には、Rivendell、Aiplex、英国の音楽団体BPIが名を連ねている。

一方、対象となるドメインにも偏りが確認された。報告されたドメインの上位1%が、クレーム全体の63%を占めている。つまり、削除要請の大部分は、ごく少数のサイトによって引き起こされているのだ。

こうした数字は、さまざまな削除の特性を深く理解するのに役立つ。しかし、最も驚かされたのは、著作権侵害を報告されたドメインの利用可能性に関する発見だ。

研究者は、ドメインとURLを定期的にチェックし、ウェブサイトの活動状況を確認した。その結果、報告されたドメインの22%が、削除通知が提出後の数週間のうちに活動を停止し、NXDOMAIN(ドメイン名が存在しない)を返すようになったという。

「多くのドメインはすぐにオフラインになる。クレームを受けてからわずか4週間で22%のURLが不通になっていた。ドメイン運用の面で、非常に動的な状況にあることが確認された」と論文には記されている。

消えていくドメインの多くは、エキゾチックなTLDを利用している。一番人気は.LOLで、次いで.LINK、.BID、.SPACE、.WINが続く。こうしたドメインの大半はAlexaランキング100万位以下のサイトで、一日あたりの訪問者はごくわずかなようだ。

ドメインが消滅する理由は明確ではなく、論文ではさらなる調査の必要性が強調されている。しかし、こうしたサイトの多くが、一時的な検索エンジンのトラフィックに依存するスパムや詐欺に関連しているとしても驚きはない。

最後に、この論文では著作権者の懸念すべき振る舞いについても確認されている。たとえば、過去にもお伝えしたように、捏造URLが報告されることもあれば、同一内容のものを数百通に渡って送付されることもある。

こうした調査は、削除要請がさまざまな利害関係者に及ぼす影響を理解するのにも役立つだろう。この種の透明性は、送信者の手続きを改善するのみならず、悪用を防ぐためにも不可欠である。

「透明性は極めて重要であり、社会として、情報がどのように、どういった理由でフィルタリングされているのかを把握しなくてはならない。こうしたメカニズムが、必ずしも賢明に利用されているわけではないということが確認されているのだから」

Hundreds of Thousands of ‘Pirate’ Sites Disappear Following Takedown Notices – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 26, 2019
Translation: heatwave_p2p
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