以下の文章は、TorrentFreakの「Google Flags Hundreds of Pirate Sites for ‘Abusive Experiences’」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

Googleは、ウェブをより安全な場所にする取り組みの一環として、誤認を誘うなどの悪質な広告を掲載する不正なサイトのリストを管理している。Chromeをはじめとするウェブブラウザは、このリストに掲載されたサイトに一切の広告を表示しないようにしている。これまで、こうした不正広告サイト対策の詳細は明らかにはされてこなかったが、最近公表されたリストによると、かなりの海賊版サイトが掲載されているようだ。

オンライン広告というのは、ときに迷惑な存在となる。けばけばしいバナーや押し付けがましいポップアップに悩まされているインターネットユーザも少なくはない。

こうした広告は、海賊版サイトではお馴染みの存在だ。多くのユーザがこの問題を回避するために広告ブロッカーをインストールしている。さもなくば、誤認を誘う偽のダウンロード/再生ボタンの迷路をくぐり抜けなくてはならない。

Googleは、こうした不正な広告を排除するための取り組みを強化している。この手の広告が表示されるのは海賊版サイトに限ったことではなく、どこにでも現れているのだ。収入の大部分を広告から得ているGoogleによって、広告ブロッキングは決して望ましいものではない。だが、同社は外部の広告を標的としたさまざまな遮断策を講じている。

Googleは2年前、「Better Ads Standards」に準拠していない広告をChromeブラウザ上で自動的にブロックしていく方針を発表した。これは昨年はじめから、米国や欧州など複数の地域ですでに実施されている。

これとは別に、Googleは悪質な体験の排除も進めている。Chromeブラウザは、偽のダウンロードボタンや再生ボタンなど、さまざまな詐欺行為をユーザに警告し、一部の海賊版ストリーミングサイトに蔓延している不必要なリダイレクトをブロックしている。

しかし、これだけは十分ではなかったようだ。昨年12月、Googleは特に悪質な体験を常習的に提供し続けるサイトを絞り込み、その広告すべてを全面的にブロックすることにした。上述の偽ダウンロードボタン以外にも、不必要なソフトウェアを推奨したり、リンクを表示する広告も含まれている。

これは大きな前進であり、すべての広告が遮断されたサイトはほぼ確実に収益が激減するだろう。だがこれまで、Googleがどのサイトを標的にしているのか、どれだけの数のサイトが標的にされているのかはほとんど知られていなかった。だが最近、その状況に変化が訪れた。

Chromeベースのブラウザ「Vivaldi」のヨン・フォン・テッツナーCEOは、Vivaldiの最新リリースにもこのブロックリストが実装さたことをブログ記事で明らかにした。

「不正な広告手法を使用するサイト上の広告を遮断することで、セキュリティを向上させました」と彼は綴っている。「ウェブをより安全にし、危険な広告に不安を抱えずに済むようにしたい」

Googleの悪質サイトリストはAPIを通じて提供されていたが、一般公開はされてこなかった。しかし、テッツナー CEOのレポートでも強調されているように、Vivaldiはこのリストにアクセスし、サーバ上にそのコピーを保持している

この「悪質」サイトのリストは、Chromeに組み込まれた広告ブロッカーが使用している「Better Ads Standard」違反のサイトリストとは別である点には注意してほしい。

悪質サイトのリストにざっと目を通してみると、海賊版サイトとポルノサイトが多数を占めていることがわかる。本稿執筆時点では、リストには合計7059サイトが掲載されている。その中には、thepiratebay.rocks、filmytorrents.com、gostream.nu、songsmp3.org、watchonlinemovies.netなど数百の海賊版サイトが含まれている。

ターゲットとなった海賊版サイトのほとんどは、広告収入狙いの小規模なプロキシサイトやコピーキャットだった。興味深いことに、このリストには、海賊版リリースブログの4howcracked.blogspot.comなどBlogspotのサイトも掲載されている。言わずもがな、BlogspotはGoogleが運営するブログプラットフォームだ。

さらに、すでに機能していないドメイン(たとえばtehmoviez.download)や、すでに新しいURLにリダイレクトしているドメイン(0123movies.ioなど)が多数含まれていることもわかった。

このリストには、TorrentDownloads.meのような比較的人気のトレントサイトも「悪質」サイトとして掲載されている。同サイトの運営者に話を聞くと、この事実を認め、遮断が開始された直後に収益が減少していることに気づいたという。

「数ヶ月前、私たちのサイトが不正サイトのリストに掲載されると、収益は減少しました。なので、ドメインを新しいTLDに移行することも検討しています。また、Googleには再審査を申請して、遮断を解除してもらおうとも思っています」と運営者は語った。

数時間後、同サイトはこのリストから削除されており、どうやら申請はうまくいったようだ。だが、同サイトは現在広告を一切表示していないため、再び広告を掲載するようになってもこの状態が続くのかどうかはわからない。

匿名で取材に答えた別のサイト運営者は、以前にこのリストに掲載されていたことがあったが、Googleが「悪質」だとしてフラグを立てたコードを削除したところ、問題は解消されたと話す。

インターネット上には数十億のサイトが存在しているが、この不正サイトのリストに掲載されているのはわずか数千だ。したがって、この措置による影響は比較的軽微ということになるだろう、また、このリストに掲載されているサイトでも、たとえばアダルトサイトの007zeed.comや海賊版サイトのStream-Island.suなどには現在もいくつかの広告が表示されている。

Googleは、現在の措置が完全ではないにしても、ウェブを安全にするための取り組みだとしている。確かにご立派ではあるが、利己的な意図がないともいえない。

上述しているように、Googleとしては広告ブロッカーをインストールしてほしいわけではない。そのため、同社のブラウザがデフォルトで悪質な広告を遮断し、不正なサイトの広告を完全に排除していれば、あえてChrome標準の広告ブロッカー以外のブロッカーを必要とする人は減るかもしれない。

結局、得をするのはGoogleだ。

Google Flags Hundreds of Pirate Sites for ‘Abusive Experiences’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 29, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: ICOOON MONO