デジタルコンテンツを利用するたくさんの人々が、特定の地域に住んでいないという理由で、コンテンツへのアクセスが制限される経験をしている。この「ジオ・ブロッキング」は、非競争的なビジネス慣習であり、海賊行為を助長するとして、EUにおいて批判に晒されている。ある隠しカメラの映像が、実世界におけるジオ・ブロッキングのバカらしさを強調している。
インターネットをそれなりに使っている人であれば、ジオ・ブロッキングは馴染く、腹立たしく感じるものだろう。
わかりやすい例としては、YouTubeのビデオを視聴しようとしたときに、「A社は著作権上の理由により、お住まいの地域からのアクセスをブロックしています」と表示されるというものだ。
それが非常に苛立たしいのは、その理由がまったく理解できないことである。ほかの地域のユーザが楽しんでいるコンテンツなのに、IPアドレスによって弾かれてしまう。ユーザはインターネットが区分けされているなど、考えもしていないのに。
人びとは、特定地域での映画、テレビ番組の視聴を制限する権限を持つコンテンツ・プロバイダに怒りを感じているが、その彼らも、実は自分で自分の首を締めている。
『ウィンドウ』戦略がインターネット上の著作権侵害を引き起こしていることは疑いない。リリース日に差をつけるなどして、ある国の市民を別の区の市民よりも価値ある存在としてみなしている。最近、NetflixがVPN経由でのアクセスへの制限を強化したことからも、権利者たちがその地理的制限の強化を決意したことが伺える。
欧州5億800万人の市民にとって、こうした振る舞いは特に受け入れがたいようだ。国境を越えた人の移動や、取引が容易なのに対し、オンラインで購入・レンタルできるデジタルコンテンツは依然として区分けされている。そのような行為はますます受け入れがたいものとして捉えられるようになっており、EUの European Consumer Organization(BEUC)は、現状を改善すべく新たな取り組みを行っている。
「外国サイトの映画やスポーツイベントを視聴できない、ほかの加盟国から製品を注文することができない、あるいは外国のサービスへのアクセスが遮断されているために高額の料金を支払わなければならないというような、不幸な逆行が起こっています」とBEUCは説明する。
「これは企業がサービスやオファーを『ジオ・ブロック』しているためです。つまり、彼らはほかの欧州連合加盟国の消費者がサービスにアクセスすることを阻む人工的な障壁を作り上げているのです」
こうした説明では少しわかりにくいかもしれないが、BEUCが公開した『隠しカメラ』ビデオを見れば、この種の差別的な扱いが現実世界でどのようにうつるのかがわかるだろう。一人一人対応が異なる『ジオ・ブロッキング』は侮辱的ですらある。
「差別的な地理的制限は止めるべきだと考えています。そこで、私たちはEUに2つのことを提案しています」とBEUCはいう。
「第一に、消費者が、EU内のプロバイダが提供するスポーツ・イベント、音楽ストリーミング、映画、テレビ番組などのコンテンツにアクセスできるようにしなくてはなりません。そうすることで、海賊行為(不正なソースが提供するコンテンツへのアクセス)を抑制し、すべての消費者が欧州の文化的多様性を享受できるようになります。第二に、製品やサービスを販売する際に消費者の居住地をもとにした差別的扱いを防ぐルールをより強化しなくてはなりません」
BEUCとBEUCに加盟する40の消費者団体によるこのプッシュは、実にタイムリーである。先月、欧州委員会は電子商取引における反独占的慣習の調査結果を公表し、欧州連合全域でコンテンツ・ブロッキングが広く行われていることが明らかとなった。
デジタルコンテンツ・プロバイダの実に68%が、ほかのEU加盟国の消費者をブロックしており、テレビ、映画、スポーツ・コンテンツのサプライヤーのおよそ4分の3が、ジオ・ブロッキング契約を結んでいることを認めているという。
総じて、BEUCの訴えは、真剣に耳を傾けられることになるだろう。昨年、欧州委員会はデジタル単一市場戦略を採択した。これはとりわけ「不当なジオ・ブロッキングを終わらせること」を目的としており、ジオ・ブロッキングを「商業的理由から行われる差別的な慣習」だと評している。
パンやパイ、コーヒーがブロッキングされることはないだろうが、EUはデジタル領域におけるこうした制限を終わらせるべく戦っているのだろう。
“Geo-Blocking Madness Highlighted by Hidden Camera Stunt – TorrentFreak”
Publication Date: April 06, 2016
Translation: heatwave_p2p